四季おりおり

自然散策そして音楽のことなど・・・ 
2010年秋より里山・谷戸歩きで見た風景や蝶・花の紹介が増えてきました。

山梨県産ダイミョウセセリの紋様

2014-08-22 17:21:00 | 
前回、相模原・町田地区のダイミョウセセリについて紹介しました。関西型のように後翅に太い白帯を有するものは見られず、典型的な関東型を示しましたが、白帯の痕跡は大なり小なり見られました。

そこで、今回は関東地方の西隣の山梨県で撮影したダイミョウセセリの写真を、後翅白帯の痕跡の少ないものから順に並べました。
数字は前回記事からの通し番号です。


8. 2014年5月22日 山梨県身延町


9. 2014年5月23日 山梨県北杜市

8,9は、相模原・町田地区で見られた典型的な関東型の部類ですね。


10. 2014年5月22日 山梨県身延町

10は、関東型の領域から少し足を踏み出し、薄っすらと白帯が現れていました。受け身の園芸のuke-enさんの写真に見るような中間型に一歩近付いたといえるでしょうか。

関西型と関東型の境界線は、若狭湾から琵琶湖の東を通り、伊勢湾に向かう地帯といわれ、実際にはもう少し広い中間型の領域が存在し(※1)、一説には兵庫県西部より西が関西型、兵庫県東部から長野県西部までが中間型、長野県東部より東が関東型との指摘もあります(※2)。

大きく見れば山梨県は関東型の領域内ですが、中間型に近付いたものも現れる微妙な土地柄のようです。
福岡県などの関西型地区での紋様、京都府などの中間型地区での紋様にはどれくらいの変動が見られるのでしょうか?

付録
日本のダイミョウセセリは、関西型~中間型~関東型というように西から東になだらかに移行するので、関西・関東型が別亜種というのではなく、日本国内産の亜種はDaimio tethysです。

朝鮮半島、済州島、中国北・東北部、ロシア南東部は日本と同じtethys亜種、中国中・南部と台湾の亜種は moori(Mabille.1876)、中国西部、チベットの亜種はroona (Evans.1946)、中国雲南省からインドシナ半島北部の亜種はbirmana(Evens.1926)になっています(※3)。種子島・屋久島以南の島嶼にはダイミョウセセリが分布していません。

ではどのようにして関西型・関東型が生じたのでしょうか。日本には最初に関東型が入り込み、その後の時代に西から関西型が入り込んだためではないかとの説があります。長い年月で交配が進み現在の分布になったというわけです。縄文人の後に大陸から弥生人がやってきた日本人の成り立ちとどこか似通っているのかもしれません。

各亜種の紋様がどのようなものか知りたかったのですが、NETでは写真が見付かりませんでした。ご存じの方がいらっしゃったらお教え下さい。

追記
追記1(8月23日)
台湾亜種の写真が見付かりました。

追記2(8月23日)
かつては関東型・関西型の2亜種に分類されていたようです(参照:高橋昭、田中蕃、若林守男、"カラー自然ガイド 日本の蝶Ⅰ"、保育社(1973))。両型の混在または中間型の出現する地域も若狭湾の北から伊勢湾にかけての帯状の狭い範囲で示されています。