日本共産党都議会議員(町田市選出)池川友一「市民とつくる都政への架け橋」

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経済と持続可能な発展──『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』を読んでみた⑼

2018-05-10 | 学んだこと、政策のこと

 次の第4章は経済です。

なぜ、お金は大切なの?

 (略)
 一つの同じ社会のなかで、私たちは大変異なる暮らしをしています。通りに座って物乞いをしている人もいれば、とても豊かで、働く必要のない人もいます。
 私たちの大多数は、その間にいます。けれども私たちは、安心で確実な未来を夢見ています。多くの場合、それはお金を確実に手に入れることと同じ意味です。とはいうものの、私たちが幸せであると感じるためには、お金よりも多くのモノが必要なことは知っていますよね。(92〜93ページ)

 「なぜ、お金は大切なの」という、かなりストレートな問いから貧困と格差の問題を提起しています。

 その後、「自分自身の経済について、責任をもつということを学ぶことはよいこと」であると書いてありますが、これも日本とは視点が違うなと感じます。

 仕事をすれば収入があり税金を払うこと、その税金によって社会サービスが成り立っていることなどが丁寧に解説されています。

 さらに、支出をチェックし、予算をつくること、お金が十分でなかった場合には収入を増やすか支出を減らすこと、働いていても失業する場合があることなどが取り上げられています。

■経済とは、選択すること

 「経済とは、選択することです」という切り口で、何を取得し何を諦めるのかということを実践的に学んでいきます。

 「生活水準は、モノやお金以外のことにも関係があります。あなたが社会で利用できている学校や医療ケアがどのくらいよいものなのか、また機能している民主制ものとで暮らしているのか、といったことからも測ることができるのよ」(108ページ)というストレートな投げかけもあります。

■持続可能な発展を学ぶ

 経済という切り口から、消費者教育を行っていることも大きな特徴です。

私たちが買ったモノは環境に影響を与えます

 自分の買ったモノが社会環境にどのような影響を与えるのかについて考えることは、すっかり一般的なこととなりました。もし、スウェーデンで、若者も大人もモノを買えるだけ買い、貯金を最小限にしたらどうなるでしょうか。それはよいことでしょうか。それとも悪いことでしょうか?
 実は、その答えは両方なのです。社会の経済としては、買ったモノを製造している会社の仕事が増えます。そうすれば、より多くの人が仕事を得ることができます。多くの人が仕事をすれば、税金を納めてくれるし、必要となる手当の額も減ります。そうすれば、市には多くの税金が入ります。そうすれば市はより多くの先生を雇うといったことに、より多くのお金を使うことができます。
 多くを消費することの欠点は、環境が破壊されることです。より多くのモノをつくるためには、たとえば石油などの天然資源をたくさん必要とします。
 発展を持続可能にしつつ、社会の経済的な利益とのバランスを考えた、環境に優しい消費をしなくてはなりません。それは、難しいことでもあります!(113〜114ページ)

 この後に「持続可能な発展とは、将来の世代が満足に生活する可能性を損ねることなく、今の私たちが満足に生活できるような発展のこと」(ブルントランド委員会による国際連合報告書「私たちの共有の未来」)という言葉が続いています。

 環境問題を切り出して論じるわけでなく、経済活動の中に位置付けて自分たちはどうすべきかということを投げかけているのです。SDGsが今日的な課題となっていますが、スウェーデンではかなり以前からこうした教育が行われていることを示しています。

 訳者の鈴木教授が次のように述べていることに、全面的に共感しました。

 環境についても同様です。日本でも環境問題への関心は高いですし、環境を守る必要性については、小学校でしっかりと意識させる教育を行っていると思います。ただし、大学生たちが指摘しているように、それは「環境」という章で学ぶものであって、「経済」の章で学ぶものとはなっていません。ましてや、「私たちの買い物は環境に影響を与えます」などとは書いていないでしょう。
 とはいえ、やみくもに「環境を守れ」とか「経済活動をセーブしろ」と言っているわけではありません。この教科書が環境に関して子どもたちに伝えたいことは、「環境に責任を持った『持続可能な』決定を下すのは、常に簡単なことではありません」ということです。どのような決定を下せばよいのか、その答えは示されていないのです。なぜなら、それは子どもにかぎらず、またスウェーデンにかぎらず、答えの出ていない問題だからです。しかし、それを考えさせること自体には大きな意味があるのです。
 ところで、このような「答えのない問題」は、小学校から高校までの日本の教育ではあまり大事にされていません。なぜなら、入試の問題に出ないため、勉強しても無駄とみなされるからです。(120〜121ページ)

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