日本共産党都議会議員(町田市選出)池川友一「市民とつくる都政への架け橋」

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誰がもっとも権力をもっているか──『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』を読んでみた⑽

2018-05-12 | 学んだこと、政策のこと

 次の第5章は政治です。

 政治的な決定は、スウェーデンに住んでいるわれわれすべてに影響を与えます。ただし、私たちもそれに影響を与えることができます。なぜなら、政治家に投票するのは私たちだからです。したがって、「決定しているのは私たちだ」と言えます。(124〜125ページ)

 この本の核心部分といってもいい部分です。これだけストレートに主権者教育をしていることが、スウェーデンの投票率が8割を超えていることにつながっていると感じます。

スウェーデンでは、誰がもっとも権力をもっているのでしょうか?

 スウェーデンでは、実のところ誰がもっとも権力を持っているのでしょうか? あなたはどう思いますか? 王様でしょうか? それとも大企業でしょうか? あるいは、首相でしょうか? 新聞やテレビ局などのメディアでしょうか?
 ズラタン・イブラヒモビッチは人気のアイドルで、メディアによく登場します。彼は大きな権力をもっているでしょうか?
 それとも彼女でしょうか? H&Mで持続可能性部長を務めるヘレーナ・ヘルメーソン(Helena Helmersson)さんは、二〇一四年に「スウェーデンでもっとも権力のある女性」に選ばれました。いや、やはり、私たちの王様、カール一六世グスタフ国王が物事を決めているのでしょうか?
 スウェーデンでは、誰がもっとも権力をもっているのかという問題については、いつも誰かが議論しています。みんなが例として挙げる人々は、王様は別として、あなたや他の人々に影響を与えうる大きな権力をもっています。
 けれども、誰がもっとも権力をもっているかということになると、どの人も当てはまりません。もっとも権力をもっているのはスウェーデン国会なのです。なぜそうなのかについては、このあとに学んでいきます。

 この後の大学生たちのやりとりでは「日本では経済と政治が分けられることが多い」と感想を述べていますが、スウェーデンでは一体不可分のものとして扱われています。

 その後は、

  • 民主政における君主制
  • 共和制と大統領
  • スウェーデンの市
  • 市で行われる決定
  • 市が決定する分野の例
  • いつ、国会は決定するのでしょうか?
  • 国が決定する分野の例
  • 民主的な決定
  • 民主的なクラス旅行
  • 民主制──いつ、私たちは決定をするのでしょうか?
  • 代表民主制
  • 政党とは何ですか?
  • 独裁制──一人が決めるとき
  • 民主制の原則にはまったく従っていません
  • みなさんが議論するときにはコツがあります!
  • 民主的な選挙とは、どのようなものでしょうか?
  • スウェーデンの政党は協力します
 と展開していきます。国のことと、自分たちのこと(ここではクラス旅行)が同列のものとして扱われ、常に自分が当事者として決定過程に関わることが貫かれています。また、制度についてもかなりの分量を使って書かれています。

 「政治」という章ですが、そこで論じられているのは、どこか別の世界のものではなく、自分たちのことです。

 日本の教育現場では、どこか別世界のことを「制度」として学ぶ(テストに出るから学ぶ)という感があります。

 訳者の鈴木先生が「本章には『主権』という言葉が登場しません。その代わりに、『誰が権力をもっているのでしょうか』と問いかけてきます。…他方、日本の教科書には『国民主権』という言葉が登場します。ただし、それは多くの場合、日本国憲法の三原則として説明されています。そのことが悪いわけではありませんが、日本では『三原則』となると、その三つをきちんと覚えることに重きが置かれてしまっていますその結果、『国民主権』という言葉は知っていても、その意味はよく分かっていない、なぜ大切なのかがよく分からない、ということになるわけです」と書いていますが、スウェーデンと日本の決定的な違いはここにあると感じました。

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