次の第5章は政治です。
政治的な決定は、スウェーデンに住んでいるわれわれすべてに影響を与えます。ただし、私たちもそれに影響を与えることができます。なぜなら、政治家に投票するのは私たちだからです。したがって、「決定しているのは私たちだ」と言えます。(124〜125ページ)
この本の核心部分といってもいい部分です。これだけストレートに主権者教育をしていることが、スウェーデンの投票率が8割を超えていることにつながっていると感じます。
スウェーデンでは、誰がもっとも権力をもっているのでしょうか?
スウェーデンでは、実のところ誰がもっとも権力を持っているのでしょうか? あなたはどう思いますか? 王様でしょうか? それとも大企業でしょうか? あるいは、首相でしょうか? 新聞やテレビ局などのメディアでしょうか?
ズラタン・イブラヒモビッチは人気のアイドルで、メディアによく登場します。彼は大きな権力をもっているでしょうか?
それとも彼女でしょうか? H&Mで持続可能性部長を務めるヘレーナ・ヘルメーソン(Helena Helmersson)さんは、二〇一四年に「スウェーデンでもっとも権力のある女性」に選ばれました。いや、やはり、私たちの王様、カール一六世グスタフ国王が物事を決めているのでしょうか?
スウェーデンでは、誰がもっとも権力をもっているのかという問題については、いつも誰かが議論しています。みんなが例として挙げる人々は、王様は別として、あなたや他の人々に影響を与えうる大きな権力をもっています。
けれども、誰がもっとも権力をもっているかということになると、どの人も当てはまりません。もっとも権力をもっているのはスウェーデン国会なのです。なぜそうなのかについては、このあとに学んでいきます。
この後の大学生たちのやりとりでは「日本では経済と政治が分けられることが多い」と感想を述べていますが、スウェーデンでは一体不可分のものとして扱われています。
その後は、
- 民主政における君主制
- 共和制と大統領
- スウェーデンの市
- 市で行われる決定
- 市が決定する分野の例
- いつ、国会は決定するのでしょうか?
- 国が決定する分野の例
- 民主的な決定
- 民主的なクラス旅行
- 民主制──いつ、私たちは決定をするのでしょうか?
- 代表民主制
- 政党とは何ですか?
- 独裁制──一人が決めるとき
- 民主制の原則にはまったく従っていません
- みなさんが議論するときにはコツがあります!
- 民主的な選挙とは、どのようなものでしょうか?
- スウェーデンの政党は協力します
「政治」という章ですが、そこで論じられているのは、どこか別の世界のものではなく、自分たちのことです。
日本の教育現場では、どこか別世界のことを「制度」として学ぶ(テストに出るから学ぶ)という感があります。
訳者の鈴木先生が「本章には『主権』という言葉が登場しません。その代わりに、『誰が権力をもっているのでしょうか』と問いかけてきます。…他方、日本の教科書には『国民主権』という言葉が登場します。ただし、それは多くの場合、日本国憲法の三原則として説明されています。そのことが悪いわけではありませんが、日本では『三原則』となると、その三つをきちんと覚えることに重きが置かれてしまっています。その結果、『国民主権』という言葉は知っていても、その意味はよく分かっていない、なぜ大切なのかがよく分からない、ということになるわけです」と書いていますが、スウェーデンと日本の決定的な違いはここにあると感じました。
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