都立病院の独立行政法人化を含む「新たな病院運営改革ビジョン(素案)」が示されました。
この内容について、幹事長談話を発表しました。
「新たな病院運営改革ビジョン(素案)」について
2019年12月27日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 大山とも子
一、独法化の目的は財政支出の削減
東京都は25日、「地方独立行政法人が今後の都立病院に最もふさわしい経営形態である」とした「新たな病院運営改革ビジョン(素案)」(以下、「素案」)を発表しました。
年間約400億円の都立病院への一般会計からの繰り入れについて、東京都は都議会で「採算の確保が困難な行政的医療を提供するための不可欠な経費」「赤字補てんというものではない」と明確に答弁しているにもかかわらず、「素案」は「一般会計繰入金、すなわち都民の税金が投入されて」いると書いた上で、費用を削減しなくてはならないとしています。東京都保健医療公社の病院についても「更なるコスト削減を図ることで、都の財政負担を軽減させる」と書いています。独法化の目的が都の財政支出の削減にあることは明らかです。
二、公的医療の後退につながることは明らか
しかし、都立病院は診療報酬だけでは採算をとることが困難な医療を提供することを重要な役割としており、都の財政支出はそうした役割を果たし続けていくために不可欠なものです。公社病院についても同様に位置づけて、財政支援を行っていくことが必要です。財政支出の削減や効率化を目指して、独立行政法人化を行えば、「改革」どころか公的医療の後退につながることは明らかです。
「素案」は、独立行政法人化でいかにも医療が充実するかのように描いていますが、全国各地の独法化された病院では、経営の効率化や採算性が強調され、公的医療の重大な後退が生じています。独立行政法人化された国立病院機構では、結核病床は全体の7割におよぶ3千床、精神病床は2千床が減らされ、病院の廃止も次々打ち出されています。宮城県では、県立循環器・呼吸器病センターが廃止されました。東京都が独法化した健康長寿医療センターでも、病床数が161床も減らされ、差額ベッド料は徴収していなかったのが、全体の4分の1もの病床で徴収するようになりました。「素案」ではこうしたことは一切触れられていません。
三、独立行政法人がふさわしいとする根拠の調査にも問題がある
「素案」が独立行政法人がふさわしいとする根拠としている「都立病院の経営のあり方に係る調査及び支援業務委託報告書」は有限責任監査法人トーマツに東京都が委託して作成したものですが、独法化の検討を提言した都立病院経営委員会で繰り返し独法化推進の立場で発言したのがトーマツ出身の委員でした。トーマツは2018年度の東京都のカジノについての調査も受託しており、都の指示に従って報告書の内容をよりカジノのメリットを強調するものに書き換えたことも私たちの調査で分かっています。こうした法人への委託で、都立病院の経営形態について中立性や客観性が担保された調査が行われるはずがありません。それを踏まえて作られた「素案」の内容も、信頼性を欠くものだと言わざるを得ません。
四、都議会で早急に「素案」の審議を
都立病院の独法化は、合計で5000床を超える病院を直営でなくすという極めて重大な方針であるにもかかわらず、都議会への報告は行われていません。日本共産党都議団は、「素案」について早急に都議会に報告し、閉会中審査を行うことを強く求めます。
日本共産党都議団は、公的医療の後退につながる地方独立行政法人化を許さず、直営で拡充するために、都民の運動と連携して全力で取り組む決意を改めて表明するものです。
以上
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