上野みえこの庭

日本共産党熊本市議の上野みえこのブログです。

執行部が決めた「議会と執行部間の会話録音」を市議会に押し付けることは撤回すべき・・・議長へ申し入れ

2020-12-03 17:10:03 | 熊本市議会
12月3日、熊本市議会議長に対し、日本共産党市議団として「議員・執行部間の会話録音の撤回を求める申し入れ」を提出しました。
去る11月26日、今議会に提案された議案の説明に日本共産党市議団控室に来た職員が、「今日のやり取りは録音させていただきます」と、ボイスレコーダーを机上に出しました。突然の録音の申出にびっくり。
その後、総務課から受けた説明は、①議員と執行部の会話はすべて録音する、⓶そのことは、庁議で決めた、⓷録音の際は録音する旨を議員に伝える、⓸議案等の説明や執行部からの報告については録音の対象外、⓹11月より録音対応を実施している、⓺実施する理由は議員の不当要求を防止するため、というものでした。
執行部の決めたことを議会に押し付けることは、二元代表制に基づき対等であるべき議会と執行部の独立した関係を歪めるものです。地方自治の基本にも反する市長のやり方は許されません。
執行部で決めた「議会と執行部間の会話録音」を一方的に市議会に求めるということは、撤回すべきです。
以下の4点を、議長に申し入れました。
⑴ 庁議で決定し、議会に求められた「議員・執行部間の会話を録音する」という決定は撤回するよう、議会として市長へ求めること
⑵ 理由とされている「議員の不当要求を防止する」ということについては、指摘をしたような事実がこの間発生しているのか、事実関係を明らかにし、議会への説明を行うよう市長に求めること
⑶ 議員の不当要求等への対応にあたっては、議会と執行部が情報を共有し、双方協議の上での対応をとっていく仕組みをつくること、そのためにも「熊本市不当要求行為等防止対策会議」には議会の代表も加えること
⑷ 執行部が「議会と執行部間の会話録音」を決定し市議会に対応を求めているような事例、また、不当要求に対する取り組みがあるか、全国の事例を議会として調査すること



【申し入れ全文】
議員・執行部間の会話録音の撤回を求める申し入れ
                       日本共産党熊本市議団
                        上野 美恵子
                        那須 円
 去る11月26日、今議会に提案された議案の説明に日本共産党市議団控室に来た職員が、「今日のやり取りは録音させていただきます」と、ボイスレコーダーを机上に出しました。「これはどういうことですか」と尋ねると、「庁議で決まったので、お願いしています」とのことでした。その時は録音なしで、説明を受けましたが、直後に総務局の総務課長が「お話があります」と、部屋に来ました。「何でしょうか」と問うと、「議員と執行部間の会話の件についてお話があります」とのことでした。聞いた内容は、①議員と執行部の会話はすべて録音する、⓶そのことは、庁議で決めた、⓷録音の際は録音する旨を議員に伝える、⓸議案等の説明や執行部からの報告については録音の対象外、⓹11月より録音対応を実施している、⓺実施する理由は議員の不当要求を防止するため、というものでした。
 11月から実施されていたにもかかわらず約1カ月間何の説明・報告がなく知らずにいたこと、執行部サイドで決めたことを議会に押し付けられている点について、執行のやり方、内容の両面から驚きを禁じ得ませんでした。
 以下に述べる点において、重大な問題があると考えますので、対応をお願いいたします。
1、 地方自治の本旨は、「住民自治」と「団体自治」の双方を実現することであり、双方が相まって地方自治が健全に発展します。「住民自治」を実現する仕組みの一つに、憲法第93条に基づく、地方自治体が、住民による直接選挙に選出された長(執行機関)と、同じく直接公選による議員によって構成される議会(議決機関)によって成り立っているという仕組みがあり、長には執行権を、議会には議決権を与えることによって、相互にその権限を均衡させ、それぞれの独断専行を抑制し、適正で効率的な行財政の運営を確保させるための仕組みがつくられています。このように、地方自治体における長と議会が対等平等の関係であり、憲法第93条には「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議決機関として議会を設置する」という規定によって、自治体における議会の設置根拠は憲法に保障されています。
「議員・執行部間の会話を録音する」という決定は庁議で行われたそうですが、市長側の決定が議会にかかわるものでありながら、議会に対し事前に何の相談もなく、執行部のみで決められ、決定を議会に押し付けていることは、「市長と議会は独立・対等である」ということを定めた憲法と地方自治法に反し、地方自治の本旨を実現するための「二元代表制」の根幹を揺るがす由々しき問題です。
2、 住民にとって、選挙によって住民が選んだ市長と、同じく選挙によって住民が選んだ議員と、住民の意思を反映するチャンネルを2つもつことになる「二元代表制」は、きわめて民主的な制度だと言われています。市長も、議会も主権を有する住民から直接選挙され、いずれも住民を代表する正当性を持っていますが、議会には、①自治体の政策を決定すること、⓶執行機関の行財政運営や事務処理等のすべてを適法・適正にかつ公平・効率的・民主的になされているかを批判し監視する、という2つの使命があります。そして、自治体の長は、議会の議決を経た上での事務執行することとなっており、長の独断専行を許さないというのが、自治体の建前であり仕組みです。これは、議会の地位の重要性を示すものです。市長を、議会が抑制・監視することは、民主的な政治を実現するうえで、きわめて重要です。
しかし今回の決定は、二元代表制の一方である市長が、議会を従わせるという形になっており、「議会が市長を批判・抑制・監視する立場にある」という点にも真っ向から反するもので、市長の暴走ともいうべき、地方自治にとって極めて危険なものであると指摘しなければなりません。
3、 理由となっている「議員の不当要求を防止する」という点では、過去に北口前議員等、議員の不当要求問題が発生し、議会でも種々議論が交わされ、執行部としてもそれを機に「不当要求行為等への対応マニュアル」等も作られ、対応がとられています。しかし、議会と執行部が対等の関係にあることに鑑みるならば、議員の不当要求行為の防止について一方的に執行部側のみで対応するという現行の対応状況には矛盾があります。そもそも「不当要求」ということについての判断は、執行部側のみで行うべきものではなく、仮にそういう問題が発生した場合でも、議会と執行部が一緒になって対応・解決していくべきものであります。今回、一つ一つの会話の録音までしなければならないような事案が発生しているのか、根拠となる事実を明らかにすべきです。この点をはっきりさせないままに、議会へ録音を求めることはできないと考えます。録音が決定された理由や経緯が極めて不透明である点も大きな問題です。
4、 デジタル化がすすむ社会では、個人情報保護の仕組みを抜本的に強化することや、企業が蓄積したデータを個人が消去させる権利や個人データの取扱いに対し異議を唱える権利などを重視し、国家等による国民監視から、プライバシーと人権が厳格に守られなければなりません。それが世界の流れになっています。職務上のこととはいえ、さまざまな会話を録音によって、ことごとく音声データ化することは、職員・議員を強力な監視のもとに置くもので、データの管理や活用をどのように行うのか不透明かつ執行部のみでデータ管理を行う現状では、対等な関係での情報管理や情報共有が行われず、多くの問題を引き起こすことも考えられ、データ化社会の中で尊重されるべき個人情報にかかわる様々な権利が侵害されかねません。
5、 加えて、録音するとなれば、発する言葉にも慎重になり、議員と職員が冗談も言えない関係にさえなってしまうのではないでしょうか。それでは、真の信頼関係は築かれません。議員と執行部が信頼に裏打ちされた真に対等な関係を築いてこそ、市政の発展という共通目標に向かっていくことができるのではないでしょうか。会話の録音は、このことにも逆行するものであり、市政の発展にはつながりません。

以上のような理由から、以下の点について申し入れます。
⑴ 庁議で決定し、議会に求められた「議員・執行部間の会話を録音する」という決定は撤回するよう、議会として市長へ求めること
⑵ 理由とされている「議員の不当要求を防止する」ということについては、指摘をしたような事実がこの間発生しているのか、事実関係を明らかにし、議会への説明を行うよう市長に求めること
⑶ 議員の不当要求等への対応にあたっては、議会と執行部が情報を共有し、双方協議の上での対応をとっていく仕組みをつくること、そのためにも「熊本市不当要求行為等防止対策会議」には議会の代表も加えること
⑷ 執行部が「議会と執行部間の会話録音」を決定し市議会に対応を求めているような事例、また、不当要求に対する取り組みがあるか、全国の事例を議会として調査すること

                              以上
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