12月に開催された熊本市議会には、「熊本市公文書管理条例の制定」が提案されました。
本市においても、公文書管理条例が定められることは、本市における「情報公開」と「公文書管理」そして市の「説明責任」を法的に定めるものとして、行政事務を前向きに前進させるものです。
しかしながら、条例と一体となった規則案を示さず、議会に議論を求めるなど、公の議論を大切にしない提案です。
そして、一番大きい問題は、公文書管理法では、国の公文書管理委員会は「原則公開」と定めてあります。にもかかわらず、熊本市の公文書等管理委員会は「原則非公開」です。熊本市は、『公文書等の管理に関する法律』の趣旨に沿って適切に運用していくと、質疑でも答弁しましたが、情報公開と説明責任が、公文書管理法の存在意義であり、国が原則公開とするものを、「非公開」とする市の運用は、法の趣旨に沿った運用とは言えません。
公文書管理法の趣旨を踏まえた運用を行うとともに、必要な改正も実施するよう、求めました。
制定後の運用でも、条例を運用していく人員や専門家の配置も全く行われません。これでは、条例の趣旨を生かす運用はできません。世界的には、当たり前になっている文書管理専門職の配置と拡充も求めました。
よりよい条例になること、また目的にそった運用となるよう、引き続き取り組んでいきます。
質疑の内容は、以下の通りです。
【熊本市文書管理条例制定にかかる質疑】
議第255号「熊本市公文書管理条例の制定について」質疑致します。
通告に沿って伺います。
1点目の、条例制定に至る経緯とその意義です。
今回、本市においても公文書管理条例が制定のはこびとなって提案されたことは、市民の財産である公文書の適切な管理が法的にも明確にされる点で、歓迎しています。そこで、条例制定に至る経緯とその意義について伺います。
2番目に、条例の内容とその運用です。
① 第4条には「実施機関の責務」定められていますが、この条項は、実施機関が条例の目的に沿いどのように運用するのかを規定した重要な項目です。「公文書等の管理に関する法律」では、「行政文書の管理」の冒頭部分の第4条で、「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため」と述べられており、本市の条例でも、目的にそった適切な運用のため、「第一条の目的の達成に資するため」と表記した方がよいのではないでしょうか。
② 第5条に「公文書の作成」の項がありますが、作成する文書の具体的な内容規定がありません。公文書管理法では、作成しなければならない文書の内容まで法律に規定しています。本市条例では、その点をどのように定めるのでしょうか。
③ 第6条3項に基づき、「保存期間」が別表に定められています。別表に規定されたそれぞれの期限の設定根拠、その考え方についてご説明ください。
④ 第6条の4項には、「保存期間の延長」についての定めがありますが、その内容は規則ではどのように定めていくのでしょうか。内容について具体的にご説明ください。
⑤ 第6条6項では、保存期限が満了した時の措置として、歴史公文書等に該当するものの移管措置、それ以外のものの廃棄の措置と、2通りの措置が規定されています。しかし、歴史的公文書等に該当しない場合であっても、業務執行上の都合、例えば、長期に使用する公共施設等の設計図書等など、最長30年で廃棄をしてはまずい文書についての規定が必要ではないでしょうか。
⑥ この条例の運用段階になれば、条例に係る業務執行のための新たな人員が必要になってくると思います。この条例運用にかかる人員体制はどのように確保していかれるのでしょうか。
⑦ 附則にありますように、条例は可決されれば、2021年4月1日より施行されることになります。今年度保存期限の上限30年を迎えている文書の扱いについては、年度末に急ぎ処分せず、条例施行後に、適切な手順を踏まえて、文書の取扱いを決めていくべきではないかと考えます。条例施行による、移行期間的な段階の事務取扱について、どのようにお考えでしょうか。
3点目の、公文書等管理委員会については、条例第4章に規定があります。
① 委員数は7人、その選任の考え方と、「学識経験者その他」について具体的にどのような分野からの選任を予定されているのか、ご説明願います。
② 公文書管理法により設置されている公文書管理委員会は、原則公開です。なぜ本市条例の公文書管理委員会は、原則非公開なのでしょうか。理由をご説明ください。法に準じて原則公開とすべきではないでしょうか。
1点目は市長に、2点目と3点目は総務局長にお尋ねいたします。
以上、登壇回数の都合で質問が多くなりましたが、答弁をお願いいたします。
(答弁)
縷々答弁いただきましたが、総務局長は「実施機関の責務」の質問に対し、「この条例は『公文書等の管理に関する法律』の趣旨に沿って適切に運用していく」と答弁されました。それを踏まえてお尋ねします。
先ほど言いましたように、公文書管理法では、国の公文書管理委員会は原則公開と定めてあります。熊本市公文書等管理委員会を原則非公開とすることは、法の趣旨に沿った運用と言えるのでしょうか。どんな理由を述べられても、全く相反する規定ではありませんか。管理委員会の非公開のどこが法に沿っているのか、ご説明をお願いいたします。
総務局長にお尋ねいたします。
(答弁)
この度、本市の公文書管理条例が制定されることは意義あることだと考えます。しかしながら、今のような答弁では、この条例のもつ本質を理解されていないのではないかと、指摘しなければなりません。
遡れば、2001年に施行された情報公開法の条文には、文書管理の基本的事項に関する規定が設けられ、行政機関の保有する行政文書を原則公開することで説明責任を果たすことが義務付けられました。しかし、あくまで情報公開制度の運営上の観点から文書管理に関する規定を設けたに過ぎず、国の行政事務全体をカバーする包括的な文書管理のルールではありませんでした。それが、2009年に国の行政事務全体をカバーする包括的な文書管理の基本法として公文書管理法が制定されたことによって、情報公開法と文書管理は車の両輪であるという考え方に法的根拠が与えられ、情報公開と公文書管理は一体のものであり、文書管理と説明責任の関係も明確にされました。
世界的にも、文書管理の目的が組織の説明責任を果たすためのものであるということは、記録管理の国際標準で基調コンセプトとなっており、グローバル・スタンダードです。公文書管理法制定にかかる国の「有識者会議」最終報告書にも「民主主義の根幹は、国民が正確な情報に自由にアクセスし、それに基づき正確な判断を行い、主権を行使することにある。国の活動や歴史的事実の正確な記録である『公文書』は、この根幹を支える基本的なインフラであり、過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である」と、基本認識として述べられており、公文書管理法の存在意義は、情報公開と説明責任にあります。
国の法律が原則公開と決めている管理委員会を、本市が非公開とすることは、公文書管理法の存在意義にもかかわるものであり、公文書管理の基本を欠いたものであると指摘をしなければなりません。公文書等管理委員会の非公開規定は、即刻改正し、法の規定にならって原則公開とすべきです。
また、運用段階の業務執行体制では、研修はしつつも特段の人員配置はしないとのことでした。しかし、文書管理の分野では、現用段階のレコードマネジャー、非現用段階のアーキビストという文書管理専門職があり、海外ではこのような文書管理専門職の職能が確立しています。公文書管理においては、この専門職の配置と拡充が、施行後の運用面でうまくいくかの鍵を握ると言われており、「良いルールがつくられても、それを実行する体制がなければ絵に描いた餅」という専門家の指摘もあります。現行人員体制で的確に対応するという答弁は、まさに「絵に描いた餅」を表明するようなものです。専門職配置と人員体制の拡充は、欠かせない課題として、今後取り組んでいただくよう要望しておきます。
答弁には、規則に定めるというのもありましたが、条例案を上程し、議会の議論に付す場合、規則案も一緒に示し、議論を深めることがよりよき条例として制定することにつながるのではないでしょうか。
さまざまに指摘致しましたが、本市において、公文書管理条例が制定されることは大変意義のあることであり、指摘した点も含め、公文書管理法の趣旨を踏まえた運用を行うとともに、必要な改正も実施していただくことをお願いして質疑を終わります。
本市においても、公文書管理条例が定められることは、本市における「情報公開」と「公文書管理」そして市の「説明責任」を法的に定めるものとして、行政事務を前向きに前進させるものです。
しかしながら、条例と一体となった規則案を示さず、議会に議論を求めるなど、公の議論を大切にしない提案です。
そして、一番大きい問題は、公文書管理法では、国の公文書管理委員会は「原則公開」と定めてあります。にもかかわらず、熊本市の公文書等管理委員会は「原則非公開」です。熊本市は、『公文書等の管理に関する法律』の趣旨に沿って適切に運用していくと、質疑でも答弁しましたが、情報公開と説明責任が、公文書管理法の存在意義であり、国が原則公開とするものを、「非公開」とする市の運用は、法の趣旨に沿った運用とは言えません。
公文書管理法の趣旨を踏まえた運用を行うとともに、必要な改正も実施するよう、求めました。
制定後の運用でも、条例を運用していく人員や専門家の配置も全く行われません。これでは、条例の趣旨を生かす運用はできません。世界的には、当たり前になっている文書管理専門職の配置と拡充も求めました。
よりよい条例になること、また目的にそった運用となるよう、引き続き取り組んでいきます。
質疑の内容は、以下の通りです。
【熊本市文書管理条例制定にかかる質疑】
議第255号「熊本市公文書管理条例の制定について」質疑致します。
通告に沿って伺います。
1点目の、条例制定に至る経緯とその意義です。
今回、本市においても公文書管理条例が制定のはこびとなって提案されたことは、市民の財産である公文書の適切な管理が法的にも明確にされる点で、歓迎しています。そこで、条例制定に至る経緯とその意義について伺います。
2番目に、条例の内容とその運用です。
① 第4条には「実施機関の責務」定められていますが、この条項は、実施機関が条例の目的に沿いどのように運用するのかを規定した重要な項目です。「公文書等の管理に関する法律」では、「行政文書の管理」の冒頭部分の第4条で、「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため」と述べられており、本市の条例でも、目的にそった適切な運用のため、「第一条の目的の達成に資するため」と表記した方がよいのではないでしょうか。
② 第5条に「公文書の作成」の項がありますが、作成する文書の具体的な内容規定がありません。公文書管理法では、作成しなければならない文書の内容まで法律に規定しています。本市条例では、その点をどのように定めるのでしょうか。
③ 第6条3項に基づき、「保存期間」が別表に定められています。別表に規定されたそれぞれの期限の設定根拠、その考え方についてご説明ください。
④ 第6条の4項には、「保存期間の延長」についての定めがありますが、その内容は規則ではどのように定めていくのでしょうか。内容について具体的にご説明ください。
⑤ 第6条6項では、保存期限が満了した時の措置として、歴史公文書等に該当するものの移管措置、それ以外のものの廃棄の措置と、2通りの措置が規定されています。しかし、歴史的公文書等に該当しない場合であっても、業務執行上の都合、例えば、長期に使用する公共施設等の設計図書等など、最長30年で廃棄をしてはまずい文書についての規定が必要ではないでしょうか。
⑥ この条例の運用段階になれば、条例に係る業務執行のための新たな人員が必要になってくると思います。この条例運用にかかる人員体制はどのように確保していかれるのでしょうか。
⑦ 附則にありますように、条例は可決されれば、2021年4月1日より施行されることになります。今年度保存期限の上限30年を迎えている文書の扱いについては、年度末に急ぎ処分せず、条例施行後に、適切な手順を踏まえて、文書の取扱いを決めていくべきではないかと考えます。条例施行による、移行期間的な段階の事務取扱について、どのようにお考えでしょうか。
3点目の、公文書等管理委員会については、条例第4章に規定があります。
① 委員数は7人、その選任の考え方と、「学識経験者その他」について具体的にどのような分野からの選任を予定されているのか、ご説明願います。
② 公文書管理法により設置されている公文書管理委員会は、原則公開です。なぜ本市条例の公文書管理委員会は、原則非公開なのでしょうか。理由をご説明ください。法に準じて原則公開とすべきではないでしょうか。
1点目は市長に、2点目と3点目は総務局長にお尋ねいたします。
以上、登壇回数の都合で質問が多くなりましたが、答弁をお願いいたします。
(答弁)
縷々答弁いただきましたが、総務局長は「実施機関の責務」の質問に対し、「この条例は『公文書等の管理に関する法律』の趣旨に沿って適切に運用していく」と答弁されました。それを踏まえてお尋ねします。
先ほど言いましたように、公文書管理法では、国の公文書管理委員会は原則公開と定めてあります。熊本市公文書等管理委員会を原則非公開とすることは、法の趣旨に沿った運用と言えるのでしょうか。どんな理由を述べられても、全く相反する規定ではありませんか。管理委員会の非公開のどこが法に沿っているのか、ご説明をお願いいたします。
総務局長にお尋ねいたします。
(答弁)
この度、本市の公文書管理条例が制定されることは意義あることだと考えます。しかしながら、今のような答弁では、この条例のもつ本質を理解されていないのではないかと、指摘しなければなりません。
遡れば、2001年に施行された情報公開法の条文には、文書管理の基本的事項に関する規定が設けられ、行政機関の保有する行政文書を原則公開することで説明責任を果たすことが義務付けられました。しかし、あくまで情報公開制度の運営上の観点から文書管理に関する規定を設けたに過ぎず、国の行政事務全体をカバーする包括的な文書管理のルールではありませんでした。それが、2009年に国の行政事務全体をカバーする包括的な文書管理の基本法として公文書管理法が制定されたことによって、情報公開法と文書管理は車の両輪であるという考え方に法的根拠が与えられ、情報公開と公文書管理は一体のものであり、文書管理と説明責任の関係も明確にされました。
世界的にも、文書管理の目的が組織の説明責任を果たすためのものであるということは、記録管理の国際標準で基調コンセプトとなっており、グローバル・スタンダードです。公文書管理法制定にかかる国の「有識者会議」最終報告書にも「民主主義の根幹は、国民が正確な情報に自由にアクセスし、それに基づき正確な判断を行い、主権を行使することにある。国の活動や歴史的事実の正確な記録である『公文書』は、この根幹を支える基本的なインフラであり、過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である」と、基本認識として述べられており、公文書管理法の存在意義は、情報公開と説明責任にあります。
国の法律が原則公開と決めている管理委員会を、本市が非公開とすることは、公文書管理法の存在意義にもかかわるものであり、公文書管理の基本を欠いたものであると指摘をしなければなりません。公文書等管理委員会の非公開規定は、即刻改正し、法の規定にならって原則公開とすべきです。
また、運用段階の業務執行体制では、研修はしつつも特段の人員配置はしないとのことでした。しかし、文書管理の分野では、現用段階のレコードマネジャー、非現用段階のアーキビストという文書管理専門職があり、海外ではこのような文書管理専門職の職能が確立しています。公文書管理においては、この専門職の配置と拡充が、施行後の運用面でうまくいくかの鍵を握ると言われており、「良いルールがつくられても、それを実行する体制がなければ絵に描いた餅」という専門家の指摘もあります。現行人員体制で的確に対応するという答弁は、まさに「絵に描いた餅」を表明するようなものです。専門職配置と人員体制の拡充は、欠かせない課題として、今後取り組んでいただくよう要望しておきます。
答弁には、規則に定めるというのもありましたが、条例案を上程し、議会の議論に付す場合、規則案も一緒に示し、議論を深めることがよりよき条例として制定することにつながるのではないでしょうか。
さまざまに指摘致しましたが、本市において、公文書管理条例が制定されることは大変意義のあることであり、指摘した点も含め、公文書管理法の趣旨を踏まえた運用を行うとともに、必要な改正も実施していただくことをお願いして質疑を終わります。