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通行地役権者からの通行妨害禁止請求が認めれた事例

2008年11月05日 | 最高裁と判例集
最高裁判決 平成17年3月29日
(判例時報 1895号 56頁)
(判例タイムズ 1180号 182頁)

《要旨》
 通行地役権を有する者からの恒常的に車両を駐車する者に対する通行妨害禁止請求が認容された事例


(1) 事案の概要
 Xの土地から公道に至る唯一自動車による通行が可能な位置指定道路(以下「本件通路土地」という。)には、幅員2.8m未満、積載量2.5t以下の自動車による通行を目的として通行地役権(以下「本件地役権」という。)が設定され、Xが本件地役権を取得している。
 本件通路土地に接する土地の所有者Yは、新たに購入した車両(以下「本件車両」という。)を、本件通路土地部分(以下「本件係争地」という。)に恒常的に駐車するようになった。
 Xは、本件係争地の通行を本件車両が妨害しているとして、本件係争地にXが有する本件地役権に基づき、Yに対し、本件係争地における通行妨害行為の禁止を含む、本件係争地を道路の目的外に使用する行為の禁止を求めて提訴した。
 原審高等裁判所は、Yが本件車両を駐車させている部分の残された幅員は3m余りあり、本件通路土地を通行し得る車両は、本件車両の脇を容易に通過できることからすると、本件車両によってXが本件通路土地を通行することが妨害されているとはいえないとして請求を却下したため、Xはこれを不服として上告した。

(2) 判決の要旨
 ①本件地役権の内容は、通行の目的の限度において、本件通路土地全体を自由に使用できるものであると解するのが相当である。そうすると、本件車両を恒常的に駐車させることによって本件通路土地の一部を独占的に使用することは、本件地役権を侵害するものというべきであって、Xは、地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づき、Yに対し、このような行為の禁止を求めることができると解すべきである。残余の幅員が3m余りあっても、これにより本件通路土地の通行が制約される理由はない。
 ②通行地役権は、承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権利にすぎないから、通行地役権に基づき、通行妨害行為の禁止を超えて、承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない。
 ③以上に説示したところによれば、Xの請求は、Yに対し本件係争地に車両を恒常的に駐車させてXによる幅員2.8m未満、積載量2.5t以下の車両の通行を妨害してはならない旨を求める限度で容認すべきである。


(3) まとめ
 実務において、前面道路が“持分を持たない私道”だけに接する土地の取引における媒介に際しては、慎重な調査が必要である。いままで車の通行に何等の支障もなかったとして十分な確認を怠ると、「新しい所有者(買主)に対しては、車の通行までは認めない」といわれ通行の承諾が取れずトラブルとなることがある。媒介業者には、このような持分を持たない私道の場合、通行の問題に限らず、各設備に関しても、所有者の承諾、利用制限、負担金等について、特に注意深い調査が求められる。



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