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地主が新築したビルに再入居する場合地代を継続賃料で算定した事例

2008年11月06日 | 最高裁と判例集
 地主のビル建築のために、土地を明渡した借地人が、新ビルに区分所有者としてはいる場合の地代は継続賃料として算定すべきとされた事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1178号)

 (事実関係)
 4人の借地人は古くから、それぞれ借地していたが、地主は4つの借地をまとめて再開発を計画して交渉し、昭和54年4月に渋谷簡易裁判所、「借地人らは、各自の建物を撤去して、一時立退く。地主は、『並木橋ビル』という自分が建築するビルの一部を、区分所有として各借地人に再入居させる」即決和解をした。

 土地は、ビル区分所有を目的とする借地権であることが合意されたが、地代については、入居後に協議するとされた。ところがその話し合いが延び延びにされたため、借地人たちは、昭和56年11月、地代確定調停を申立てたが、話しがつかず、本裁判となった。

 裁判で問題になったことは、
(1)本件は地代増額訴訟ではない。

 そもそも、裁判所に地代を決める権限があるのかどうか。
(2)借地人は、地代は継続地代(坪670円)であるべきと主張し、地主は、新規賃料(坪2491円)のはずと主張した。

 (判決要旨) 
 「借地人と地主との間には、区分所有建物を目的とする土地賃貸借の合意は成立しているものの、賃料額は後日協議により決定することとされたままで、その後当事者間で合意が成立しない状態にあることが認められる。このような場合、民法388条但書を類推適用して、裁判所は、当事者の請求により適正な賃料額を確定した上で、それに基づいて当事者間の権利関係を判断することができるものと解される。」

 「昭和54年4月渋谷簡裁での即決和解が成立したときまでに、旧木造建物の所有を目的とする本件土地の賃借権(旧賃借権)を、その同一性を維持したまま並木橋ビル内の建物部分の区分所有を目的とする賃借権(新賃借権)に変更することを合意した事実を認めることができる。もっとも、旧賃借権と新賃借権とは、地主主張のように、設定契約も、対象となっている土地の範囲も異なっているが、それは、即決和解が成立し、借地人らの同意の下に旧木造建物の取壊しと並木橋ビルの新築が行われた経緯に照らして当然であるから、右認定を左右するものではない。」

 (解説)
 土地と建物を所有する人が、その1つだけに抵当権をつけて競売されてしまったとき、自動的に地上権が設定される制度(法定地上権)があり、そのときの地代は、裁判所が決める、というのが、判決のいう民法388条但書である。

 地主、家主が新築するビルに賃借人が再入居するというケースで、いつも問題になるのが、新しい賃借条件である。それが継続賃料でよいとした本判決は参考になると思う。

(1986.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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