建物賃貸借が更新された場合に当初の保証契約の効力が更新後も存続するとされた事例 (東京地裁昭和62年1月29日判決、判例時報1259号68頁)
(事案)
家主Xは借家人Aに対しその所有するマンションを英語教室として使用する目的で、期間2年、賃貸借契約終了後はAの費用で原状に回復し居住用マンションとして明渡すこと等の約定で賃貸し、YがAの一切の債務について連帯保証人になった。
XとAは、その後賃料を改定し、その他の条件は従前のままとして、Yを加えることなく合意更新した。XとAはその後合意解約しAはXにマンションを明渡したが、Aには13カ月の賃料滞納があり、原状回復もしなかった。そこでXがAの保証人Yに滞納賃料と原状回復費用を請求した。
Yは当初のXとの保証契約は賃貸借の合意更新後には及ばない、家主X には借家人Aの賃料不払いを保証人に通知すべき信義則上義務があり通常考えられる程度の延滞額を超える請求は無効である、といてXの請求を争った。
(判例要旨)
建物賃貸借は期間満了後も存続するのが原則であること、保証人も継続的に保証するものであることを認識していた筈であること、保証人の債務もほぼ一定しており更新後の債務について保証の効力を認めても保証人に酷ではないこと、などからしてXY間連の連帯保証契約の効力は合意更新後にも存続する。また、賃貸人には賃借人の賃料不払を保証人に通知すべき信義則上の義務はなく、仮にXがYにAの賃料不払いを通知したとしてもAが弁済しない限りYは全額を支払わなければならない。
(短評)
民法619条2項には「前賃借につき当事者が担保を供したるときはその担保は期間の満了により消滅す。但し敷金はこの限りにあらず」とある。これをそのまま適用すれば、当初契約の際保証人(保証人のことを人的担保という)になった人は、その契約に定められた期間内の債務についてのみ責任があり、更新後は関係ないと言えそうである。
しかし、実際上は借家関係は更新により存続することが常識化されており、保証人も当然このことなどを理由に、借家権の続く限り保証責任も存続する、その考え方が判例上も支配的になっている。
この判例は、保証人の責任は法定更新のみならず合意更新の場合も同じであるとしたものである。
借家人には直接関係ない事例であるが(といっても保証人が支払えば借家人は保証人からの請求を免れ得ない)<保証人になるのは怖いですよ>ということを再認識するには好例と思い紹介する次第。
(1988.06.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
東京多摩借地借家人組合
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(事案)
家主Xは借家人Aに対しその所有するマンションを英語教室として使用する目的で、期間2年、賃貸借契約終了後はAの費用で原状に回復し居住用マンションとして明渡すこと等の約定で賃貸し、YがAの一切の債務について連帯保証人になった。
XとAは、その後賃料を改定し、その他の条件は従前のままとして、Yを加えることなく合意更新した。XとAはその後合意解約しAはXにマンションを明渡したが、Aには13カ月の賃料滞納があり、原状回復もしなかった。そこでXがAの保証人Yに滞納賃料と原状回復費用を請求した。
Yは当初のXとの保証契約は賃貸借の合意更新後には及ばない、家主X には借家人Aの賃料不払いを保証人に通知すべき信義則上義務があり通常考えられる程度の延滞額を超える請求は無効である、といてXの請求を争った。
(判例要旨)
建物賃貸借は期間満了後も存続するのが原則であること、保証人も継続的に保証するものであることを認識していた筈であること、保証人の債務もほぼ一定しており更新後の債務について保証の効力を認めても保証人に酷ではないこと、などからしてXY間連の連帯保証契約の効力は合意更新後にも存続する。また、賃貸人には賃借人の賃料不払を保証人に通知すべき信義則上の義務はなく、仮にXがYにAの賃料不払いを通知したとしてもAが弁済しない限りYは全額を支払わなければならない。
(短評)
民法619条2項には「前賃借につき当事者が担保を供したるときはその担保は期間の満了により消滅す。但し敷金はこの限りにあらず」とある。これをそのまま適用すれば、当初契約の際保証人(保証人のことを人的担保という)になった人は、その契約に定められた期間内の債務についてのみ責任があり、更新後は関係ないと言えそうである。
しかし、実際上は借家関係は更新により存続することが常識化されており、保証人も当然このことなどを理由に、借家権の続く限り保証責任も存続する、その考え方が判例上も支配的になっている。
この判例は、保証人の責任は法定更新のみならず合意更新の場合も同じであるとしたものである。
借家人には直接関係ない事例であるが(といっても保証人が支払えば借家人は保証人からの請求を免れ得ない)<保証人になるのは怖いですよ>ということを再認識するには好例と思い紹介する次第。
(1988.06.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
東京多摩借地借家人組合
一人で悩まず
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