東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

首都圏マンション供給、4万5,000戸割れへ 不動産経済研

2008年11月13日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 不動産経済研究所の調査によると、首都圏の新築マンション供給戸数が08年は4万5,000戸を下回る可能性が高くなった。「上期に下方修正予想した4万9,000戸という数字は不可能な状況。このペースが続くと4万5,000戸も難しいのではないか」と同研究所ではコメントしている。

 同研究所の調査では、10月の供給戸数は前年同月を26.0%下回る4,240戸。1月から10月までの累計戸数は3万3,809戸となり、バブル崩壊以降最低の数字となった07年の同じ時期と比べても30.9%減(1万5,154戸減)の状況だ。11月の供給予想を3,000戸程度としており、これまでの傾向から予測できる12月の供給戸数を仮に6,500戸とすれば4万3,000戸強にとどまる。在庫処理を優先しているディベロッパーの多さが、新規供給の抑制につながっているようだ。なお、首都圏全体の平均価格は4,848万円(前年同月比3.3%上昇)、1平米当たり単価は67.2万円(同9.4%上昇)。契約率は63.0%(同0.5ポイント上昇)だった。(住宅新報 11月13日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃料滞納の場合に、賃貸人が貸室へ無断立入りできるとする特約が無効とされた事例

2008年11月12日 | 最高裁と判例集
マンションの1室の賃貸借契約において「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに建物に立ち入り、適当な処置をとることができる」旨の特約は、公序良俗に反して無効であるとして争われた事案において、賃貸人から委任を受けたマンションの管理会社が賃料を滞納した賃借人の部屋に立入る等したことが不法行為にあたるとされた事例(東京地裁 平成18年5月30日判決 一部認容・一部棄却 確定 判例時報1954号80頁)

1 事案の概要
平成15年12月、賃借人Xは、不動産会社Y2からマンションの一室(以下「本件建物」という。)を賃料月額11万円、期間を1年とする約定で借り受けた(以下「本件賃貸借契約」という。)。なお、本件賃貸借契約書には次の趣旨の特約(以下「本件特約」という。)がある。

① 賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は賃借人の承諾を得ずに本件建物に立ち
入り適当な処置をとることができる。
② 賃借人が賃料を2カ月分以上滞納した場合は、賃貸人は賃借人に対して何らの
通知・催告を要することなく直ちに本件賃貸借契約を解除することができる。
③ 賃借人は賃貸借契約が終了した場合、破損・汚損箇所の修復費用を負担する。
また、XはY2に対し、本件特約を承諾する旨の書面(以下「本件承諾書」という。)を差し入れている。

Xが2カ月分の賃料を滞納したため、平成17年7月、Y2から本件賃貸借契約に基づく未納賃料の請求及び契約解除に関する事項の委任を受けていた管理会社Y1は、Xに対し「賃料の滞納が2カ月に及んでおり、本件賃貸借契約を直ちに解除する」旨の内容証明郵便を送付した。同年8月29日にY1の従業員はXの不在中に本件建物の扉に施錠具を取り付け、8月30日には本件建物に立ち入り、窓の内側に施錠具を取り付けた。Xは、その後9月10日に本件建物を明け渡した。

Xは、賃借人の承諾を得ずに本件建物内に立ち入ったり、その玄関扉を施錠したりすることは違法な私生活の侵害であり、本件特約及び本件承諾書は公序良俗に反して無効であると主張し、Y1に対し慰謝料100万円を請求した。これに対しY1、本件特約及び本件承諾書には合理性があり立ち入りは適法であり、Xは内容証明郵便を無視し悪質な占有を継続していたと主張した。Y2はXに対し平成17年9月分の未払い賃料と汚損修復費用を請求した。

2 判決の要旨
裁判所は以下のように判示し、Xの請求を一部認容した。 Y1が本件建物に立ち入ったり、施錠具を取り付けたりしたことがXの平穏に生活最近の判例から
賃料滞納の場合に、賃貸人が貸室へ無断立入りできるとする特約が無効とされた事例(東京地判 平18・5・30 判時1954-80)する権利を侵害するものであることは明らかである。

 本件特約の文言は、賃料を滞納した賃借人に対して賃料債務の履行や本件建物からの退去を間接的に強制することを意図したものである。そうすると、本件特約はY2がXに対して賃料の支払や本件建物からの退去を強制するために、法的手続きによらずにXの平穏に生活する権利を侵害することを許容するものというべきであり、緊急等特別の事情がある場合以外は原則として許されないというべきである。したがって本件特約は、特別の事情があるとはいえない場合に適用される時は、公序良俗に反して無効である。

 XがY1からの連絡に応答せず、本件賃貸借契約の解除が有効であるとしても、Y1が法的手続きを経ることなく賃料債務の履行や本件建物からの退去を強制できる特別の事情とはいえない。
 以上によれば、Y1の従業員が本件建物に立ち入り等したことはXの権利を侵害する違法な行為であり、Y1は民法715条に基づき生じた損害を賠償する責任があるというべきである。Xの精神的苦痛に対する慰謝料の額は5万円と認めるのが相当である。

 Y2は本件建物の汚損回復費用を請求するが、Y2が示した写真からは本件建物の汚損が通常の損耗の範囲を超えていると認めることはできない。よってY2の請求は、Xが本件建物を退去した月の日割り賃料の
限度で理由がある。

3 まとめ
自力救済について最高裁判所は「法律に定める手段によったのでは、権利に対する違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない必要な限度の範囲内で、例外的に許される。」(昭40・12・7)と判示している。

例外的に許される場合は厳格に限定されており、これに反する特約は無効とされる。賃貸人が賃借人不在中に建物に立入り、鍵を取替え、賃借人の使用を妨害することは、賃借人の生活の拠点を強制的に奪うことになり、違法な行為として許されない。自力救済に関する契約条項が否定された事例として、実務上、参考となる。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国連人権委員会の強制立ち退きに関する決議

2008年11月12日 | 明渡しと地上げ問題
国連人権委員会は,

「差別防止及び少数者保護」小委員会による 1991 年 8 月 26 日の決議 1991/12 号(強制立ち退き)を想起し,

さらにまた,同小委員会による 1992 年 2 月 2 日の決議 1992/10 号が,1991 年 12 月 12 日に「経済社会文化的権利」部会委員会第6総会が採択した「適切な住宅への権利に関する一般見解」第 4 号 (1991) およびそこで再確認された人間の尊厳と非差別の原則を尊重する重要性について,強く銘記していることも想起し,

すべての女,男,および子供が,平和と尊厳のうちに生活できる安全な場への権利を持つことを再び明言し,

しかしながら,国連統計によれば全世界で十億を越える人々がホームレスあるいは適切な住居を持たぬ状況にあり,しかもその数は増加していることを憂慮し,

強制立ち退きなる行為は,人や家族や集団を無理失理に家族やコミュニティから連れさることによってホームレス状態を悪化させ,住宅と生活条件を劣悪にするものであることを認識し,

また強制立ち退きとホームレス問題は社会的な対立と不平等を尖鋭化し,常に社会の中で最も貧しくまた社会的経済的に環境的政治的に最も不遇で弱い立場にある人々に対して影響するものであることを懸念し,

強制立ち退きは,様々な主体によって実施され,裁可され,要請され,提案され,開始され,黙認されうる,ということに目をむけ,

強制立ち退きを未然に防ぐ究極の法的責任は政府にあることを強調し,

国家機関は適切な保護や補償のないまま人々を大規模に追い立てたり移転させたりする事業に関わるのを慎重に避けるべきである,と述べたところの「経済社会文化的権利」部会委員会第4総会採択の「国際技術援助施策に関する一般見解」第 2 号 (1990) を想起し,

「経済社会文化的権利に関する国際条約」第 16 条および第 17 条に対応して提出された国別報告のためのガイドラインにある強制立ち退きに関わる質問事項に留意し,

強制立ち退きの諸例が「経済社会文化的権利に関する国際条約」の要請に違反していることはまず明らかであり,それが正当化されうるのはごく例外的な場合に限られ,かつ国際法の関連する原理に則ってなされなければならない,と判定した「経済社会文化的権利」部会委員会「一般見解」第 4 号を高く評価し,

「経済社会文化的権利」部会委員会の第 5 総会 (1990) および第6総会 (1991) における強制立ち退きに関する見解を銘記し,

ラジンダール・サチャール氏によって作成された「適切な住宅への権利」についてのワーキングペーパーの中で,強制立ち退きが国際的に住宅危機の主要な原因の一つであるとして指摘されていることも銘記し,

さらに,1992 年 8 月 27 日に採択された小委員会決議 1992/14 号 (「強制立ち退き」) をも銘記したうえで,

1. 強制立ち退き行為は,人権なかんずく適切な住宅への権利に対する重大な違反であることを明言する;

2. 強制立ち退き行為をなくするためにあらゆるレベルで直ちに対策をとることを各国政府に要請する;

3. また,現在強制立ち退きの脅威にさらされているすべての人々に対して,影響をこうむる当の人々の効果的な参加や彼らとの協議,交渉に基づいて,保有条件の法的保障を授与すること,強制立ち退きに対するまったき保障を与えるためのあらゆる必要な措置を講ずること,をも政府に要請する;

4. 強制的に追い立てられた人々やコミュニティに対しては,彼らの願いや必要に見合って,原状回復,補償,および/もしくは適切で十分な代替住宅や土地を,影響をこうむった当の人々やグループとの相互に満足のゆく交渉をへた後に,直ちに与えることを,すべての政府に勧告する.

5. 本決議を,すべての政府,「国連人間居住センター」を含む関連国連機関・国連専門機関,国際地域・政府間機関,NGO,住民組織に送付し,彼らの見解とコメントを求めることを,国連事務総長に要求する;

6. さらにまた,国際法と法制,および前項に則って提出される情報の文責に基づいて,強制立ち退き行為についての分析的報告をまとめ,本委員会第 15 総会に提出することをも,国連事務総長に要求する;

7. 第 60 会総会では第 7 議題「経済社会文化的権利の実現」のもとでその分析的報告を論議し,強制立ち退き問題を引き続き検討するための最も有効な方法について定める;

ことを決定するものである.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

相続した地主が地代未払い等で明け渡し調停、実は地代は先代の時に年払いに

2008年11月11日 | 明渡しと地上げ問題
豊島区西巣鴨に借地して50年以上になる下田さんのところに、昨年末、亡くなった地主の相続人である長男から、相続人代表としての挨拶と地代の請求書が送られてきた。いつもどおりに指定された銀行に一年分の地代を送金しておいたところ、今年に入り、下田さんの土地を相続したという地主の長女の代理弁護士から契約書に記載されている当月払いの賃料が支払われていないのでただちに支払うよう内容証明が送付されてきた。不安を感じた下田さんは知り合いの司法書士に相談した。まかせなさいといわれ安心していたが、今度は9月にいきなり、相手弁護士から地代の未払いと増改築違反で明渡しの調停をおこされた。

依頼した司法書士に確認したところ何もやっておらず、仰天していろいろ探したところ借地借家人組合があることを知り相談にきた。地代の支払い方法はすでに数年前より一年払いとなっていること、増改築も先代の承諾を得たことなど調停の回答書を作成し、簡易裁判所の調停に出向いた。証拠の領収書も添えて提出したところ、あっさりと地主の弁護士は明渡し問題を撤回し、借地権を売買してくれという話に方向転換した。下田さんは「組合に相談して、本当に助かりました。売ることも買うことも出来ないので、このような強引な地主に対抗して、引き続き組合と相談して頑張ります」と話した。(写真は調停が行われた東京簡易裁判所)



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

週刊東洋経済10月25日号 「ゼロゼロ物件に見る若者住宅政策の貧困」

2008年11月09日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 終刊東洋経済の10月25日号に「ゼロゼロ物件の被害続出! 住宅貧困ビジネスの強欲」の記事で東借連、都庁職員労組住宅支部等が取材を受けました。
 
 ゼロゼロ物件の背景として、若者に対する我が国の住宅政策の貧困の裏返しとの主張には大変同感できます。「困窮する若者単身者への公的住宅の入居資格の拡大など、他国並みの公を軸とした住宅政策の復権は、悪質業者に対する被害拡大を防ぐためにも喫急の解題だ。」は大変鋭い視点だと思います。

 東洋週刊経済10月号の記事
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不動産・住宅大手、市況悪化で減収減益相次ぐ

2008年11月07日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 不動産、住宅大手の2008年中間連結決算が7日、出そろった。

 個人の買い控えが強まったことや、不動産市況の悪化を受けて、減収や減益が相次いだ。

 不動産大手5社では東急不動産を除く4社で税引き後利益が減益となった。市況回復の見通しも悪く、09年3月期の連結業績予想について全社が下方修正した。東急不動産は税引き後利益を5月時点の予想より63%小さい110億円に引き下げた。

 賃貸オフィス事業が堅調に推移する一方、マンション分譲で苦戦が続いている。建築資材の高騰などが波及して販売価格が高くなりすぎ、消費者の購入意欲が冷え込んでいるためだ。購入契約者への引き渡し戸数でみると、野村が前年同期比で42・1%減となるなど大幅な落ち込みが目立つ。

 住宅メーカー大手5社では、大和ハウス工業、積水ハウス(7月中間)、三井ホームの3社が減収減益だった。人件費などの営業費用を圧縮したミサワホームとパナホームは増益だった。

 大和ハウス工業は、米サブプライムローン問題で不動産市況が悪化したことなどから、100%子会社の不動産投資信託(リート)法人の上場を見送ったことが響き、大幅な減益となった。中間期の減収減益は6年ぶりだ。

(2008年11月7日20時19分 読売新聞)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地主が新築したビルに再入居する場合地代を継続賃料で算定した事例

2008年11月06日 | 最高裁と判例集
 地主のビル建築のために、土地を明渡した借地人が、新ビルに区分所有者としてはいる場合の地代は継続賃料として算定すべきとされた事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1178号)

 (事実関係)
 4人の借地人は古くから、それぞれ借地していたが、地主は4つの借地をまとめて再開発を計画して交渉し、昭和54年4月に渋谷簡易裁判所、「借地人らは、各自の建物を撤去して、一時立退く。地主は、『並木橋ビル』という自分が建築するビルの一部を、区分所有として各借地人に再入居させる」即決和解をした。

 土地は、ビル区分所有を目的とする借地権であることが合意されたが、地代については、入居後に協議するとされた。ところがその話し合いが延び延びにされたため、借地人たちは、昭和56年11月、地代確定調停を申立てたが、話しがつかず、本裁判となった。

 裁判で問題になったことは、
(1)本件は地代増額訴訟ではない。

 そもそも、裁判所に地代を決める権限があるのかどうか。
(2)借地人は、地代は継続地代(坪670円)であるべきと主張し、地主は、新規賃料(坪2491円)のはずと主張した。

 (判決要旨) 
 「借地人と地主との間には、区分所有建物を目的とする土地賃貸借の合意は成立しているものの、賃料額は後日協議により決定することとされたままで、その後当事者間で合意が成立しない状態にあることが認められる。このような場合、民法388条但書を類推適用して、裁判所は、当事者の請求により適正な賃料額を確定した上で、それに基づいて当事者間の権利関係を判断することができるものと解される。」

 「昭和54年4月渋谷簡裁での即決和解が成立したときまでに、旧木造建物の所有を目的とする本件土地の賃借権(旧賃借権)を、その同一性を維持したまま並木橋ビル内の建物部分の区分所有を目的とする賃借権(新賃借権)に変更することを合意した事実を認めることができる。もっとも、旧賃借権と新賃借権とは、地主主張のように、設定契約も、対象となっている土地の範囲も異なっているが、それは、即決和解が成立し、借地人らの同意の下に旧木造建物の取壊しと並木橋ビルの新築が行われた経緯に照らして当然であるから、右認定を左右するものではない。」

 (解説)
 土地と建物を所有する人が、その1つだけに抵当権をつけて競売されてしまったとき、自動的に地上権が設定される制度(法定地上権)があり、そのときの地代は、裁判所が決める、というのが、判決のいう民法388条但書である。

 地主、家主が新築するビルに賃借人が再入居するというケースで、いつも問題になるのが、新しい賃借条件である。それが継続賃料でよいとした本判決は参考になると思う。

(1986.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

通行地役権者からの通行妨害禁止請求が認めれた事例

2008年11月05日 | 最高裁と判例集
最高裁判決 平成17年3月29日
(判例時報 1895号 56頁)
(判例タイムズ 1180号 182頁)

《要旨》
 通行地役権を有する者からの恒常的に車両を駐車する者に対する通行妨害禁止請求が認容された事例


(1) 事案の概要
 Xの土地から公道に至る唯一自動車による通行が可能な位置指定道路(以下「本件通路土地」という。)には、幅員2.8m未満、積載量2.5t以下の自動車による通行を目的として通行地役権(以下「本件地役権」という。)が設定され、Xが本件地役権を取得している。
 本件通路土地に接する土地の所有者Yは、新たに購入した車両(以下「本件車両」という。)を、本件通路土地部分(以下「本件係争地」という。)に恒常的に駐車するようになった。
 Xは、本件係争地の通行を本件車両が妨害しているとして、本件係争地にXが有する本件地役権に基づき、Yに対し、本件係争地における通行妨害行為の禁止を含む、本件係争地を道路の目的外に使用する行為の禁止を求めて提訴した。
 原審高等裁判所は、Yが本件車両を駐車させている部分の残された幅員は3m余りあり、本件通路土地を通行し得る車両は、本件車両の脇を容易に通過できることからすると、本件車両によってXが本件通路土地を通行することが妨害されているとはいえないとして請求を却下したため、Xはこれを不服として上告した。

(2) 判決の要旨
 ①本件地役権の内容は、通行の目的の限度において、本件通路土地全体を自由に使用できるものであると解するのが相当である。そうすると、本件車両を恒常的に駐車させることによって本件通路土地の一部を独占的に使用することは、本件地役権を侵害するものというべきであって、Xは、地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づき、Yに対し、このような行為の禁止を求めることができると解すべきである。残余の幅員が3m余りあっても、これにより本件通路土地の通行が制約される理由はない。
 ②通行地役権は、承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権利にすぎないから、通行地役権に基づき、通行妨害行為の禁止を超えて、承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない。
 ③以上に説示したところによれば、Xの請求は、Yに対し本件係争地に車両を恒常的に駐車させてXによる幅員2.8m未満、積載量2.5t以下の車両の通行を妨害してはならない旨を求める限度で容認すべきである。


(3) まとめ
 実務において、前面道路が“持分を持たない私道”だけに接する土地の取引における媒介に際しては、慎重な調査が必要である。いままで車の通行に何等の支障もなかったとして十分な確認を怠ると、「新しい所有者(買主)に対しては、車の通行までは認めない」といわれ通行の承諾が取れずトラブルとなることがある。媒介業者には、このような持分を持たない私道の場合、通行の問題に限らず、各設備に関しても、所有者の承諾、利用制限、負担金等について、特に注意深い調査が求められる。



借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランスの住宅法「ベソン法」とは?

2008年11月04日 | 住まいの貧困に取り組むネットワーク
 〈問い〉10月1日付本欄「先進国の住宅政策は?」の記事で、フランスの「ベソン法」について書かれていますが、法律の内容や、住宅福祉政策の具体的な中身(例えば補助金がいくらとか)について教えてください。(東京・一読者)

 〈答え〉「ベソン法」とは、1990年5月に制定されたフランスの法律で「住宅への権利を実現するための法律」と邦訳されています。その第1条は、「住宅への権利を保障することは、国民にとって連帯の義務のひとつである」と宣言し、困窮者のための住宅を確保するために、(1)県行動計画を策定する、(2)住宅連帯基金(FSL)を設置する、(3)社会住宅供給組織や民間非営利団体と協労する、(4)困窮者の住居費を助成する、(5)民間賃貸住宅を活用するなどの具体的方針を打ち出しています。

 この法律制定の背景には、日本と同様、住宅に困っている人が多く、ある程度満足できる住宅に住む人と、困っている人の格差が拡大しています。国立統計経済研究所などの統計による分析では、極度の住宅困窮者は308万2500人、劣悪な居住状況におかれている者は567万人と推計しています。そのため、アベ・ピエール財団では、フランスの本土人口5930万人の15%近い人々への公的な住宅支援が緊急に必要であると指摘しています。

 最近特に問題になっているのは、親族・知人宅の居候問題です。家族から独立できない、友人宅に身を寄せざるを得ない青年失業者、実家を離れたが舞い戻った成人の子ども、離婚・別離した成人などが多く生まれています。

 日本でも「ワーキングプア」といわれる低所得の勤労者が増加し、特に若者が「ネットカフェ」を定宿にしている残酷な実態が社会問題になっていますが、同じ現象といえます。また戦後のフランスの住宅政策は、適正家賃住宅といわれる「社会賃貸住宅」の供給に重点をおいてきました。そのため、現在では、大規模団地を中心に「荒廃化」がすすんでいます。

 このようななかで、住宅建設・改善助成などから、家賃補助やローン補助への支援への移行がおこなわれ、それは、住宅予算全体の6割を占めています。

 日本でも住宅基本法が制定されましたが、「ベソン法」のような「住宅への権利」を明記したものではなく、逆に市場に住宅政策を委ねる内容となっています。公的な賃貸住宅も新規建設はほとんどおこなわれず、最近では公団(UR)住宅の10年で8万戸削減方針や雇用促進住宅全廃にみられるように公的責任の放棄という事態が進行しています。(高)

〔2008・10・29(水)しんぶん赤旗 〕

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸住宅追い出し屋被害110番:ロックアウト3件など、相談19件 /大阪

2008年11月03日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 敷金・保証金が不要や格安の賃貸住宅で、入居者が滞納した場合に家賃を立て替える家賃保証会社が、無断で部屋の鍵を取り替えたり、部屋に入るなどの事案が多発しているため、弁護士や司法書士らが行った無料電話相談「賃貸住宅追い出し屋被害110番」の結果が30日、まとまった。

 29日に行われ、19件の相談があった。年齢層は10歳代~70歳代と幅広く、8割以上が男性だった。被害の内容は、通告だけで未実行のものも含むが、鍵の取り替えや新たな鍵の取り付けなどロックアウト3件▽無断立ち入り1件▽室内の私物の無断処分2件▽厳しい取り立て2件▽違約金3件--など。

 相談を行った「賃貸住宅追い出し屋被害対策会議」(事務局・大阪市)は31日、11月4日、5日も午前10時~午後5時に110番(06・6361・0546)を続け、場合によっては被害者から保証会社や家主への損害賠償訴訟も支援する。【岩崎日出雄、前田幹夫】

毎日新聞 2008年10月31日 地方版

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有益費償還請求権を予め放棄する特約を有効とした事例

2008年11月01日 | 最高裁と判例集
 有益費償還請求権を予め放棄することは借家法6条、民法90条に違反しないとされた事例 (東京地裁昭和61年11月18日判決、金融商事判例773号)


 (事案)
 賃借人は、ビルの一室を賃借して店舗内装を一切自分で行い、パブを営業していたが、8か月分の家賃(約570万円、共益費含む)を滞納してしまった。家主は契約を解除して明渡の訴訟を提起した。

 裁判で、賃借人は、店舗内装工事に4654万円を掛けたので、その有益費の償還を受けるまでは明渡す義務はないと争った。

 家主は、賃貸契約書には、有益費償還請求権を予め放棄する特約をしているので、賃借人には、有益費償還請求権がないと反論した。

 そこで、有益費とは何か、造作と何か、有益費償還請求権も放棄できるかが論点となった。


 (判決要旨)
 賃借人は有益費償還請求権は借家法5条6条に照らし、予め放棄することは許されないと主張するので検討する。

 造作買取請求権は、賃借人が建物に付加した造作について、特にこれが独立の存在を有し、賃借人の所有に属することに着目して特に借家人保護のため強行法規とする。

 これに対し、有益費償還請求権は、借家人が建物の改良に支出した有益費を償還せしめるものであって、借家人が右支出によって建物に付加した部分は独立の存在を有するものではない。従って当該部分の所有権は借家人ではなく、建物と一体となって建物所有者に帰属するものである。

 有益費償還請求権の本質は任意法規でである不当利得返還請求権に由来しているものであり、両者は賃借人の建物に対する投下資本の回収という点では共通するものの、法律的にはその根拠ないし本質を異にする。

 造作買取請求権の場合にはその目的物が賃貸人の同意を受けて付加したものに限られるのに対し、有益費償還請求権については有益費という限度があるほか、賃貸人の意思如何を問わず認められるものである。

 従ってこれを強行法規と解すると、賃借人に過酷な結果を強いることになり、かえって建物賃貸借の円滑な設定を阻害するおそれもあるので、有益費償還請求権について明文の規定がないのに単に経済的には同一の作用を営む点だけをとらえて造作買取請求権と同様に強行法規であると見ることはできない。


 (感想)
 有益費償還請求権の法規の条項を入れた契約書が、よく取交される。本件では賃料不払のケースであるが、そうではなく期間満了あるいは合意解約で明渡す場合は矛盾が出る。
 賃借人の負担で建物の価値を増し、その質を高めて賃貸人にも利益を与えたのに、特約を入れさすれば、その費用償還が認められないというのは不公平であるし、良質な建物を供給するという社会的利益にも反する。 

(1987.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

一人で悩まず  042(526)1094 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする