うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

米中もし戦わば

2018年02月26日 | 本と雑誌

ピーター・ナヴァロ 赤根洋子訳

文芸春秋2016年

ピーター・ナヴァロはトランプ政権の大統領補佐官だが、国家安全保障担当ではなく、もともとは経済学者であるらしい。

対中強硬派として知られている。 発売当時は、発足したばかりのトランプ政権の対中姿勢が読めるとして話題になった。

Amazonのレビューとかもちらちらとみているが、こういう話題については、関心のある人はとても関心を示すが、そうではない人は全く興味を示さないか、見なかったことにしようと思ったりする。ので、書評欄も星5つが大勢だ。日本人なら是非一読すべき、という書き方をする人が多いのも興味深い。

中国は軍事的な存在感を急速に増している。過去百年間、中国は他国の侵略を受け続けてきたという根強い意識があり、それが彼らと周辺諸国との強引な軋轢をもたらすような行為に向かわせている。かつての冷戦時代のソ連よりも信を置きがたく、核バランスによる力の均衡を維持することも難しいかもしれない。米中が経済的に結びつくことにより、米国の資金がの武器開発、購入に回り、ますます中国台頭の可能性が一段と高くなる、という論調だ。

議論は一貫して論理的で冷静なもので、一時期流行った嫌中ものとはちがう(ので、日本語のタイトルはちょっと残念)。少なくとも読んでいて辟易してしまうような一方的な文章ではない。

ナヴァロの論点は、このまま中国の台頭を許していった場合、アメリカと偶発的な軍事接触が起こる可能性があり、それは長期的に拡大していく可能性が高い。そうなれば、世界経済には甚大な影響が及ぶであろうということだ。

先日聞いた五百旗頭先生の講演では、長く続いた中国の拡大主義は、ここ数年で曲がり角を迎えた、特にフィリピンとの領有権争いに関する国際司法裁判所の判決が大きかった、という見解であった。中国は確かに難しい相手だが、言うべきことはきちっと言わなければだめだ、あんがい彼らは外の評判を気にするから、というお話だ。

いわゆる大国は、一方に流れている間はその大きさ故影響も大きいし、軌道修正も簡単ではない。しかし、まったくチェックアンドバランスが働かないわけではなく、内側からちゃんと軌道修正する力はもっている。アメリカ自身がそうだ。海外の諸国から見て、今のアメリカは非常にヘンだ、と思う人は多いと思うが、あれはあれで一度は変になってみないと、おさまりがつかないのかもしれない。中国も、形や出方は違うが、彼らなりにバランスをとろうとしてはいるのだろう。ただし、ナヴァロのいうように、一触即発の危機は起こりうるわけで、そこはやはりこわい。

ずぶの素人として時々思うのは、国家も独禁法みたいに、一定以上の影響力を持ちすぎないように分割させることをルールにできないものか。ぜんぜん無理か(基準も強制する機関もないな)。あとは時々聞くように、国連の議決権を国単位でなく人口比にするとか。よけいダメか。。

 

 

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