イーロン・マスク氏がツイッター社に買収提案をしたというニュースが速報で出ている。先日株式の9%を取得して筆頭株主になり、社から取締役就任を打診されてこれを辞退した、というニュースに続くものだ。
マスク氏はツイッターのヘビーユーザーであるらしく、同社の運営姿勢にかねてから不満を抱いていたという。マスク氏の同社への関与については、ツイッター社の社員や、一般ユーザーからも懸念の声が伝えられる。
イーロン・マスク=テスラモーターズという印象があったが、マスク氏はテスラの創業者ではなく、途中から出資者として事業にかかわった(極く初期に参加したことに変わりはないが)。他にも宇宙事業とか、色々な事業に参画している。
ツイッターもそうした事業展開の一つなのかもしれないが、もともと収益性の低い現在のツイッターのビジネスモデルを、どのように変えていくのかは見えていない。
ツイッターは奇妙なサービスで、今や報道機関に代わって各国の為政者や著名人が情報発信をする際のもっとも有力なツールになっている。米国の前の大統領がツイッターを盛んに用いて情報発信を行い、最後には規定違反ということでアカウント凍結になったことは記憶に新しい。
この前の大統領が自ら主導して、ツイッターに似たサービスを創設し、信奉者たちが多数利用していると聞く。しかし、流石にツイッターに匹敵するような公器性はない。
ツイッターは純粋な私企業であり、報道機関でもない。運営は(何らかの法的な規制はあるのかもしれないが)基本的に会社の自由に行えるし、利用者も利用を強制されているわけではない。
なので、マスク氏が経営参加することで、運営方針は変わるのかもしれないし、それによって利用者がさらに増えるのかもしれないし、減るのかもしれない。
ただ、どちらにしてもマスク氏が語る「(ツイッターが)言論の自由のためのプラットフォームになり、民主主義を機能させるという社会的要請に応える」ことが、氏の出資と経営参加によってできるのかなあ、という疑問は、というか懸念は残る。
日々報じられるマスク氏の言動、行動は、控えめに言ってなかなか人騒がせなものだ。政治的な面はわからないが、資本市場の参加者としての行動という面でみると、あまりお行儀のよい人ではない。経営者、人事管理者としても芳しい話を聞かない。
平たく言えば変人で、日本、とくに今みたいに異常に閉塞した社会になってしまった日本社会では、こうなるずっと前にぼこぼこにされているはずの人だ。
スティーブ・ジョブズも(評伝読んだけど)読んでいて憂鬱になるほど変な人で、決して一緒に仕事なんかしたくないタイプの人だ(ったらしい)。
変でなければ世界を動かせないものであるようだ。改めて思うに、こうした人たちを受け入れられるアメリカという国は、ほんとうに懐の広い国だとは思う。
パワハラ防止がどうの、と喧しく言われる今の世の中で、こうした人たちが活躍しているというのを見ると、この世の中は実に多様性に満ちている、という奇妙な感想が出てくる。
そんなことは決して許されない、ありえない、と思うことがあっても、自分たちの意に反して存在するものは、あるものなのだ。