乱鳥の書きなぐり

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『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 2 『望月』【詞章】

2018-07-21 | 読書全般(古典など以外の一般書)


   『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 2 『望月』【詞章】


  

 『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 1
 『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 2 『望月』【詞章】

【詞章】

シテ「これは信濃の国の住人。安田の荘司友治のみ内にありし。小沢の刑部友房と申す者にて候。さても頼み奉りて候友治は。従弟の望月と口論し。あえなく討たれ給いて候。其おりふしは在京つかまつり候ところに。この事かくと承り候間。夜を日についで本国へ罷り下り候ところに。某を路次にて狙うよし申し候ほどに。本国へもかなわず。かなたこなたと仕り。今はふしぎに近江の国守山の宿に。甲屋の主と罷りなりて候。旅人のおん通り候わば。留めてばやと存じ候。
(次第)
ツレ子方「波の浮き鳥住むほども。波の浮き鳥住むほども。下安からぬ心かな。(地取り)
ツレ「これは信濃の国の住人。安田の庄司友治と申しし人の妻や子にてさむろう。さても夫の友治は。望月の秋長に。あえなく討たれおわします。多かりし従類も。みな散り散りになり。頼む木陰も撫子の。花若ひとり隠しおかんと。敵のゆかりの恐ろしさに。思い子をいざない立ち出ずる。
ツレ子方「いずくとも.定めぬ旅を信濃路や。月を友寝の.夢ばかり。
子方「月を友寝の夢ばかり。
ツレ子方「名残を慕う古里の。浅間の煙.立ちまよう.草の枕の.夜寒なる。旅寝の床の憂き涙.守山の宿に着きにけり.守山の宿に着きにけり。
ツレ「ようよう急ぎ候ほどにこれははや。近江の国守山の宿に着きて候。この所に宿を借らばやと思い候。いかにこの内へ案内申し候。
シテ「誰にてわたり候ぞ。
ツレ「これは旅の者にて候。一夜の宿をおん貸し候え。
シテ「心得申して候。さていずくよりいず方へおん通り候ぞ。
ツレ「これは信濃の国より都へのぼり候。
シテ「あら痛わしや。女性上臈のおん身として。幼き人を伴い。はるばるのおん心づくし推量申して候。今夜はおん心安くおん泊りあろうずるにて候。こなたへおん入り候え。言語道断。ただ今の旅人をいかなる人ぞと思いて候えば。いにしえのおん主安田の荘司友治の妻や子にて候はいかに。やがて名のって力をつけ申さばやと存じ候。いかに申し候。今は何をかつつみ申すべき。これこそいにしえ信濃の国にて召し使われし。小沢の刑部友房にて候。かいなき命ながらえて。三世の主君に会い奉れば。嬉し泣きの涙の.覚えずこぼれ候。
ツレ「さてはいにしえの小沢の刑部友房か。あら懐しやとばかりにて。涙にむせぶばかりなり。今は何をかつつむべき。これは安田の荘司友治の.妻や子供の果しなり。
子方「父に会いたるここちして。花若小沢にとりつけば。
シテ「われも主君にとりつきて。別れし主君の面影の。残るも今は懐かしやと。主従手に手を.取りくみて。
地謡「今さら人の別れさえ。思い出でられて.袂のかわく.隙もなし。今までは行くえも知らぬ.旅人の。行くえも知らぬ旅人の。三世の契りの主従と。頼む情もこれなれや.げに奇縁あるわれらかな.げに奇縁ある.われらかな。
ワキ「帰る嬉しき古里を。帰る嬉しき古里を。誰憂き旅と.思うらん。(地取り)
ワキ「これは信濃の国の住人。望月の秋長にて候。さても安田の庄司友治と口論し。念のう友治を討って候。この事上に聞こしめされ。聊尓の者とやおぼしめしけん。某が本領ことごとく召し離されて候を。この度在京つまかつり。よき縁をもって申しひらき候えば。本領ことごとく返し申されて候。安堵の御教書を頂き。ただ今本国へ罷り下り候。急ぎ候ふほどにこれははや。近江の国守山の宿に着きて候。いかに誰かある。しかるべき所に立ち越え宿を借り候え。また某が名字ばし申し候な。
狂言「心得申して候。さてもさても目出たき事かな。頼うだる御方の御訴訟も叶い。御下りは思召ままの御事にて候。さて御宿をとり申そうが、今夜は初宿ぢゃ程に。ずいぶん好い宿がとりたいものぢゃが。どこ許がよかろうぞ。やあやあ甲屋が大きな宿ぢゃと言うか。さらば甲屋に致そう。これは大きな宿かな。いかにこの内に案内申し候。
シテ「誰にてわたり候ぞ。
狂言「頼うだる御方を御伴申して候。御宿を申され候らえ。
シテ「安きことお宿参らしょうずるにて候。またあれにござ候おん方のご名字をば誰と申し候ぞ。
狂言「おおあれこそ、信濃の国の住人。望月の秋長ではおりないぞ。
シテ「いや苦しからぬ事こなたへおん入り候え。
狂言「心得申し候。
狂言「いかに申候。お宿をとり申して候。こうこう御通り候え。
ワキ「近頃お宿祝着申して候。
シテ「こなたへおん入り候え。言語道断、ふしぎなる事の候。花若殿のおん親の敵。望月がこれへ着いて候。やがてこの由申し候べし。いかに申し候。旅人にお宿参らせて候間。こなたへおん出で候え。いかに申し候。なんぼうふしぎなる事の候。ただ今この屋の内へ望月が着いて候。
子方「いかにもして討ってたまわり候え。
シテ「ああ音高や候。かように申す内に案じ出だしたる事の候。おん身はこの辺りの盲御前におんなり候いて。花若殿におん手を引かれ座敷におん出で候え。自然謡を所望申し候わば。何にてもおん謡い候え。われらは酒を持ちて参り候べし。
ツレ「嬉しやな望みし事の叶うぞと。盲の姿に.出で立てば。
地謡「かの蝉丸の.いにしえ。かの蝉丸のいにしえ。たどりたどるも遠近の。道のほとりに迷いしも。今の身のほどの。思いはいかで.まさるべき。かかる憂き身の業なれば.盲目の身の習い歌。聞こしめ召せや旅人よ。聞こしめ召せや.旅人よ。
シテ「これはこの屋の主にて候が。酒を持ちて参りて候。
ワキ「近頃祝着申して候。さて今の謡の声は誰にてわたり候ぞ。
シテ「さん候是はこの辺りの盲御前にて候が。おん旅人のござ候えば罷り出でて謡い申し候。
ワキ「さらば一節所望候え。
シテ「畏って候。何にても面白からん事を一節おん謡い候え。
ツレ「一万箱王が親の敵を討ったるところを謡い候べし。
狂言「いやいやそれは差合がある。余の事を御謡い候らえ。
ワキ「いや苦しからぬこと。ただ謡わせ候え。
狂言「畏って候。さあらばそのた次第、何にても一節御謡い候らえ。
地謡「それ迦陵頻はかいごの内にして.声諸鳥にすぐれ。鷙という鳥は小さけれども。虎を害する.力あり。
ツレ「ここに河津の三郎が子に。一万箱王とて兄弟の者のありけるが。
地謡「五つや三つの頃かとよ。父を従弟に討たせつつ。すでに日行き時来たって。七つ五つになりしかば。
ツレ「いとけなき身の心にも。
地謡「父の敵を討たばやと。思いの色に出ずるこそ.げに哀にぞ.覚ゆる。
〔クセ〕ある時おとといは。持仏堂に参りて。兄の一万香をたき。花を仏に供ずれば。弟の箱王は。本尊をつくづくとまもりて。いかに兄御前きこしめせ。本尊の名をばわが敵。工藤と申し奉り。剣をひっさげ縄を持ち。われらを睨みて。立たせたもうが憎ければ。走りかかりておん首を.うち落さんと申せば。兄の一万これを聞き。
ツレ「いまいまし。いかなる事ぞ仏をば。
地謡「不動と申し敵をば工藤というを知らざるや。さては仏にてましますかと。抜いたる刀を鞘にさし。許させたまえ南無仏.敵を討たせたまえや。
子方「いざ討とう。
狂言「討とうとは。
シテ「暫く。何をおん騒ぎ候ぞ。
狂言「いざ討とうとおっしゃるによっての事でござる。
シテ「いざ打とうとは羯鼓を打とうとのおん事候よ。
狂言「羯鼓ならば羯鼓とおっしゃらいぞ。聊爾なる事をおっしゃるに依っての事にて候。
ワキ「また亭主は何をつかまつり候ぞ。
子方「亭主には獅子をご所望候え。
ワキ「日本一の事を申す者かな。さらば羯鼓ののち獅子を舞うておん見せ候え。
シテ「某は獅子舞うたる事はなく候えども。御意にて候ほどに拵えて参ろうずるにて候。その間に幼き者に鞨鼓をおん打たせ候え。
<中入>
(子方物着)
(狂言独白)
狂言「いかに幼き人へ申し候。亭主の身ごしらえの内。羯鼓を打って御見せ候らえや。
子方「吉野初瀬の花もみじ。
地謡「更級越路の。月雪。
<羯鼓>
子方「獅子団乱旋は時を知る。
地謡「雨むら雲や。奏すらん。
<獅子ノ舞>
地謡「あまりに秘曲の面白さに。あまりに秘曲の面白さに。なおなおめぐる盃の。酔もすすめばいとどなお。眠りも来たる。ばかりなり。
シテ「さるほどにさるほどに。
地謡「おりふしよしとぬぎ置く獅子頭。または八撥を打てや打てやと。目をひき袖をふれ。立ち舞う気色に戯れ寄りて。敵を手ごめにしたりけり。
ワキ「こは何者ぞいかなる者ぞ。
子方「おん身の討ちし安田の荘司友治が。その子に花若われぞかし。
ワキ「さてまた亭主と見えしは誰なれば。かほどに我をばたばかりけるぞ。
シテ「小沢の刑部友房よ。
ワキ「あらものものしとひったてゆけば。
シテ「ひきゆする。
ワキ「振れども切れども。
シテ「放さばこそ。
地謡「この年月の怨みのすえ。今こそかえせ望月よとて.思う敵を討ったりけり。思う本望とげぬれば。やがて故郷に立ち帰り。かの本領を友治の。子孫に伝え今の世に。その名隠れぬおん事も。弓矢のいわれなるらん。弓矢のいわれ.なるらん。

 

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『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 1

2018-07-21 | 舞台・音楽 雑感メモ


   『元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿』は、なぜ『望月』なのかを探るために。 1 



 

 

御浜御殿綱豊卿

御浜御殿は甲府徳川家の下屋敷で、あるじは後に六代将軍家宣となる徳川綱豊。綱豊の寵愛を受ける中臈お喜世に、今日のお浜遊びを隙見したいと懇願しているのは、義理の兄の赤穂浪士富森助右衛門でした。実は今日の客の中に吉良上野介がいるのです。とりあえず祐筆江島のはからいで許されますが、さらに何と綱豊自らが助右衛門に対面します。綱豊は浪士たちに仇討ちをさせたい心情を学問の師新井白石に打ち明けていましたが、浅野家再興の話が持ち上がり、再興と仇討ちは両立できないと困惑していたところでした。綱豊と助右衛門のあいだに、仇討ちを巡って激しい論議が展開します。そしてその夜更け。上野介が余興の能の装束を着けて舞台へ上がると思い、槍で襲い掛かった助右衛門。しかしそれは綱豊卿その人でした。綱豊は「身のほど知らずの大たわけ、それは天下義人の復讐とは云われぬ、道理が分からぬか」と助右衛門を打ち据えるのでした。

 

 

望月(もちづき)
  【分類】四・五番目物 (現在物)
  【作者】不詳
  【登場人物】 面 装束

シテ(前)直面 段熨斗目、素袍上下
シテ(後)直面 赤頭、段熨斗目、厚板唐織壺織、白大口、腰帯、白鉢巻
ツレ 安田荘司の妻 曲見 鬘、箔、唐織着流
子方 花若(安田荘司の子)厚板、白大口、腰帯
ワキ 望月秋長    厚板、掛素袍、白大口、腰帯

間狂言 望月秋長の従者 縞熨斗目、狂言裃


 安田荘司友治(やすだのしょうじ・ともはる)とは、(荘司(荘園の管理者)につく安田友春)  
 従兄弟の望月秋長と荘園における争いで口論となり、望月秋長に殺害された人物。

 

 



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地下道に咲くひまわりを見た方々の、基本的な行動パターンを、しばし観察する。  なんばウォークにて

2018-07-21 | お出かけ


          

 なんばウォークを歩いていると、気がついただけで二箇所にひまわりが咲いていた。

 あまりにも鮮やかな黄色。

 このひまわりを見た方々の、基本的な行動パターンはこうだ。

 
   「綺麗。」
   と言う歓声。

   『本物か?』
   と疑い、近寄って覗き込む。

   「生花だ。」
   と言って、喜ぶ。

   スマホを取り出し、撮影し、その場をさる。


 夫を脇に、しばらくひまわりに導かれる人ぶとの姿を見ていた、観察の成果である。


                        おわりん


           

 ご訪問くださいまして、誠にありがとうございます。

          
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松本白鴎丈・松本幸四郎さんの松竹座における襲名披露の緞帳    (2景)

2018-07-21 | 舞台・音楽 雑感メモ


 

 家族とともに、松竹座 夜の部に行く。

 今回の緞帳は下のデザイン。

 惜しいことに、緞帳右下のヤマザキパン製菓の文字がほんの少し、多分数センチほど上すぎる。

 デザイナーも構図的なことはわかっていたと思うが、今の位置の方がヤマザキパンという文字が観客の目につきやすいがためにあえて上に指示を仰いだのであろう。

 また、今の位置だと、前列の観客が立った時でもヤマザキパンの文字を見ることができる。

 末広がりの位置にヤマザキパンの文字があり、白鴎丈や染五郎さんの襲名の文字よりも目立つのが、口惜しい。

 せめてリボンをもう少し左に長く伸ばしリボンのうわあげそり具合に合わせて襲名の文字が記されていれば、もっとお二人のお名前が目立ったのに…。

 一回の後部から緞帳全体を眺めると、襲名の文字とデザインとの繋がりが薄いのが問題だ。

 どなただデザインをされたのでしょうといらぬ勘ぐりをしてします。

 私的には、構図がしっくりとなじまない。


 同じデザインでトヨタ自動車などの会社の文字が産業に渡って記されたものがある。

 同じデザインであるのに参列の文字が末広がりの比較的上から記される地違和感が感じられないのが不思議だ。

 
 同じデザインであるのに、送り主が違うのはどういう理由なのか?

 色々な理由が考えられるが、想像の域なのでここでは割愛したい。


 幸四郎さんの緞帳で、草間彌生さんデザインのものがある。

 草間彌生さんといえば、あのかぼちゃ(笑い)のアーティストである。

 草間彌生さんの絵がデザインされた緞帳は、おそらく歌舞伎座で披露されたと思うが、定かではない。

 草間彌生さんにデザインが特別好きというわけではないが、彼女の描いた緞帳は観客の開演までの待ち時間が楽しい気分になるだろうと感じる。


 色々な役者さんや色々な舞台の、緞帳の展覧会があれば、見てみたい。

 その節は東京だけではなく、ぜひ関西でも披露していただきたい。

 

 

 今回見た演目は次の通り

  夜の部
元禄忠臣蔵
御浜御殿綱豊卿 4:15-5:50

幕間 20分

二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎
襲名披露 口上 6:10-6:30

幕間 30分

女殺油地獄 7:00-8:45

 次回は昼の部。

 白鴎丈の『河内山』に期待をかけている。


 昼の部
廓三番叟 11:00-11:20

幕間 10分

菅原伝授手習鑑
車引 11:30-12:00

幕間 30分

天衣紛上野初花
河内山 12:30-1:35

幕間 25分

歌舞伎十八番の内 勧進帳 2:00-3:10

 

 

 


歌舞伎
松本幸四郎改め 二代目 松本白 鸚
市川染五郎改め 十代目 松本幸四郎 襲名披露

七月大歌舞伎 関西・歌舞伎を愛する会 第二十七回
会場 大阪松竹座
日程 2018年7月3日(火)~27日(金)




 ご訪問、誠にありがとうございます。
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