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(あらすじ無しの気ままな感想だけです。
写真は中国の広州。手の平で水墨画などを描いておられるところです。)
隠し剣 鬼の爪
満足度 ★★★★☆
感動度 ★★★☆☆
構図のとり方 ★★★★★+おまけ★★
2004 日本
監督 山田洋次
原作 藤沢周平 『隠し剣鬼ノ爪』『雪明かり』
脚本 山田洋次
朝間義隆
撮影 長沼六男
キャスト
緒形拳
笹野高史
永瀬正敏
松たか子
小林稔侍
倍賞千恵子
高島礼子
田中邦衛
吉岡秀隆
田畑智子 他
『たそがれ清兵衛』『武士の一分』は劇場で観ていたが、『隠し剣 鬼の爪 』を見逃がしていた為、金曜ロードショーで見ることができ、ラッキーだった。これで何とか三部作を見たことになる。
他の二作品もそうだが、適度の感動、娯楽性にもたけ、結構楽しむことができる。
山田洋次監督はいつもどこかに温かみをもたらせているので、安心して映画に向かうことができる。
但しどの作品も観終わった後の誠大きな満足感にはかける。一般大衆を意識した映画本来の役割ともいえる大衆映画を見事に描きあげているところが強み。そのくせ山田洋次のコマ送り毎の構図や表情、仕草やメークへのこだわりは、映画を上質な大衆映画に仕立て上げているところが心憎い。また原作も吟味し、その役に合わせた役者を的確に起用しているところがすごい。
キャストの順番は主役以外は、準主役にかかわらず気の向くまま覚えているだけをかきあげたに過ぎない。
したがって少しだけでてきて光っていた緒形拳さんや笹野高史さんは結果的に上に名をかきあげてしまった。
笹野高史さんの階段を駆け上がる姿は、ユニーク且つ見事な演技力。さすがの笹野高史さん。短い出番でも他の俳優にじゃまにならない事をふまえながら、確実に自分の見せ場を作る。
私の場合、緒形拳さんや倍賞千恵子さんなどもでておられると、日本映画を観てるといった満足感が得られる。
初めの方に倍賞千恵子さんが控えめに少し出ておられたが、映画に厚みが生まれるから不思議。
他にも牢獄にかゆを差し入れ売れをへし折られて逃げ帰る腕の仕草や表情は素晴らしいものだったが、生憎私は役者の名前を知らない。
田中邦江さんは今回の役柄はぴったりとはまっていて違和感を感じなかった。いつもは役柄や容姿(失礼)の割には言葉の発音が美しすぎて崩しきれない彼の台詞に、少し引っかかっていたが、今回はよかった。油絵でもデッサン力は必要だが、中途半端に絵をたしなんでいると、完成に近いデッサン力をつぶすことができない場合がある。したがって、きれいな万人受けのする絵は描くことができて一般受けはするが、芸術としては成り立たないこともしばしば起こるのが現状。ただ、最近になって私は売り絵の重要性にも気付いてきた。需要と供給にマッチした売り絵はやはりある意味実力があり、それは絵画以外の各方面にも当てはまる。それを考えるとやはり、故安部公房氏の彼を起用する眼力は鋭かったといえる。
高島礼子さんの黒のかぶりの衣装は美しかった。この映画の中で一番感心を持った装いは彼女の決意の黒だった。
さてさて今回一番印象に残ったのはコウライ屋の娘でもある松たか子さん。場面に合わせたメークや表情、台詞や声色の変化が美しい。素朴な可愛らしさを控え目に表現した彼女の表情の豊かさは、この映画のよさを十二分に引き出す役目を果たしていた。過去も含めて今回の『隠し剣 鬼の爪』の彼女が一番好きだったかもしれない。さすがコウシロウサンの娘、決めるべきところは決めるといった感じがした。
果し合いの直後相手の右腕を鉄砲で打ち落とし、もう一発で射止める。
「鉄砲で殺されるなんて、悔しいだろうな・・・」
の武士としての言葉が印象的。
直後はね飛ばされた右腕を棒?で死体近くに掃き転がす場面が、カブキに『イモアライカンジンチョウ』の一場面 (お掃除お掃除・・・といって頭を掃き集めて掃除する) を連想させ、笑うところでもないのに、妙に小さな笑いの波を感じてしまった私って馬鹿だなぁと思う。
最後にこの作品の構図は基本をふまえながらも斬新で、とても好きな構図の連続で落ち着いた。ぴたりと決まりの画面屋柱や気を画面の片方においての人物方向変形構図、斜め構図、遠近を意識した構図、被写体を上下切手の絵手紙のような不安定な構図を見事に使い分けが素晴らしい。かなり興味深く楽しませていただきました。
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