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2010年度 52冊目
『絵画の見かた』
ケネス・クラーク 著
高階秀爾 訳
白水社
白水Uブックス 1066
2003年12月10日 発行
246ページ+α 998円
ケネス・クラークは有名な美術史家、評論家。
『ザ・ヌード』という書物が有名だと言うことはしっているが難しそうで手を出してなかった。
おそらく『ザ・ヌード』にはルーベンスなどが記されていることだろう。
今回読んだ『絵画の見かた』は日本語で読んでいるのに、何度も挫折しそうになった。
結構難しく、一週間以上はかかったと思う。
絵の見方は人によって違うといった記述(要約)から始まり、この本は深く丁寧に展開する。
本書印刷の白黒の絵を見ながら、或は今まで美術館でみた作品を思い浮かべながら絵の見方を丁寧に訓練するといった感覚と、自分以外の絵画の見方の面白さをしるといった点で非常に優れている。
ルネサンス美術
『キリストの埋葬』ティツィアーノ
バロック美術
『アトリエの画家』ヤン・フェルメール
『自画像』レンブラント
ロマン派
『十字軍のコンスタンティノープル入場』ドラクロワ
印象派
『アニエールの水浴』スーラ
などもさることながら、
エル・グレコ
ゴヤ
ターナー
コンスタブル
レオナルド・ダビンチ
クルーベ
ボッティチェッリ
などの記述部分は素晴らしく繊細だ。
著者の生まれはイギリス。19世紀イギリスの社交界はフランスに比べて、芸術の地位は感覚的に低い。
男前ドラクロアが絵を描いているのはもったいないといったイギリス感覚は愉快だ。
音楽にせよ絵画にせよ当時のこういった世のご夫人方の感覚は楽しいものだ。
社交界での芸術の位置づけが見え隠れする。
この本を読み終え、余韻に浸る。
新書程度の重量の軽い本書には、情報と楽しさが満杯につまっている。
読み終えたあとパラパタとページをめくると、絵の楽しさと厳しさがこちらに押し寄せる。
白黒の文字と印刷された絵画は色鮮やかに蘇るようだ。
ケネス・クラーク著の『絵画の見かた』は絵画の見方の名作のひとつである。
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