「カイゴのゴカイ」…written by Black・vigo(この物語はあくまでフィクションです)
「おかあさん、どう?」
道ですれ違ったのは、近くのお茶専門店の奥さんだ。
【どう?って言われてもね。内科の病気や怪我なら、おかげさまでだんだんよくなってますぅ~くらいの返答が出来るけど、認知症は不治だし、かといって一週間やそこらで目に見えて進行するでもないし……】
「はあ、まあ、それなりに~~」
と、テキトーな返事をする。
なんてこんな所で会うかな~~……と、私は内心ため息をついていた
会えば当然、「この間はご迷惑をかけて…」と頭を下げなきゃらないのだもの。
というのも…
数日前、母が一人で買い物に出かけ(今のところ、母はまだ一人で買い物に行き自力で帰る場合もあるのだ)そのお茶屋に入ったのだ。
デイのない日。
母が出て行ったのに気づかなかった。
マズイ……なんとか帰ってきてくれることを祈っていたら、それから20分程度で母が帰宅。
手にしていたバックの中に、スーパーで買うお茶葉よりは高級なモノが一つ。
えっ………。
バックの中には財布はない……どーゆーこと?ツケ?
「おかあさん、これ、どうしたの?お金もってないでしょ」
と聞いてみたけど……
「何?」
すでに本人の記憶の中にお茶を買ったこなどないらしい。
認知症も初期から中程度の、介護度2や3でも、まだまだコミュニケーション能力はあり、「まとも」だったりするのだ。
私の母もそう。ながーーーく話していると「アレ、なんか変?」と思うけど
「○○へのお土産に一つお茶を……あら、お財布忘れたわ。家はすぐそこだから持ってきますから」
介護度2ならこれくらいのやりとりはこなす。
私は、急いで近くのお茶屋に行って確かめた。
「これ、私の母が買ったものだと思うのですけど」と。
店の奥さんは、どうも話が少しオカシイとは思ったらしい。
話に一貫性がなかったから。
私は包み隠さず、事情を話した。真実を語ることに特に抵抗はない。
全部話した上で、代金を払おうとした。
「いいのよ、返品しても」
「いえ、迷惑かけたので、払います。お茶、飲みますし」
「でもね…」
「払います」
「そぉ~~、じゃあ…○円ね」
【やっぱり受け取るのか…】
代金を受け取りながら、その奥さんは言った
「大変ね、認知症だなんて」と。
【ホントにそう思うなら返品させろヨ】
…と突っ込めたら気持ちいいだろうな…
私は結局、また頭を下げるのだ
悔しい
腹が立つ
泣けてくる
そんなことがあった相手と、出くわすのだから、ついてない。
「あなたも大変ね、若いのに」
【若いは余計だ!】
「ハハハ……」(へらへらするしかない)
「あんなふうによく出歩いて買い物するの?」
【何が言いたいんだよ?!】
「ええ、まあ……」
「大変ね~~~」
ムカツク
翌日
ほしくもなかったお茶を入れてみる。
そりゃ、お茶は飲むけど。スーパーので十分。
高いお茶?…………味の違い、ワカリマセーーーーン
お茶なんかより
お酒がほしい!
つづく
とうたってはいるけれど、
実際は想像力の乏しい興味本位の
ご近所さんたちのおしゃべりの種となる事も
結構あるんでしょうね
「おかあさん元気」?って第一声の声かけが
多いけれど「はい元気です」って
にこってして会話おわりにします。
でも、「○ちゃんたいへんでしょうけど体
きおつけてね」なんて言われると
ちょっとうれしいかも
人への声かけってむずかしいよね
徘徊したときに警察を呼んでくださった人に
「お母さんのことちゃんと面倒みたげて!」と
家の事情を全く知らないのに説教されたことが
あります。悲しかったなぁ・・・。
こっちの精神状態で、ひねくれて受け取ってしまったり…。
私は、それとぼ親しくもない、付き合いもない通りすがりに等しい人に
「大変ね」とかいれてしまうと
面倒……ウザイ……黙っててくれ……と思ってしまいます。
引っ越ししてきて、それほどたたないうちに母が発症しているので、親しくおつきあいしている近所の人もいないし。
古くからの知り合いがいるところにそのまま住んでいたしたら、どうだったのか…?
住みやすかったのか?
それとも、取り合いばかり故にいろいろ言われて大変だったのか?
どっちも、いいこと、イヤなことあるんでしようね。