昨日の続き。
後半3篇の感想。
『万灯』
世界を股にかける有能ビジネスマン。
バングラデシュのガス田開発を命じられるが
障害になるのが村の開拓を頑なに拒む権威者の存在。
彼を疎む他の権威者たちから殺害をそそのかされ、
自分の信念と日本の国益のために倫理を超えた決断をする。
同様に事件に巻き込まれるライバル会社の森下がいいキャラ。
主人公以上に有能にもかかわらずヘタレなので
冷酷に事を進める主人公よりも人間的に感情移入できる。
完全犯罪に見えたが実は小さな綻びから…という
倒叙型社会派ミステリのお約束な展開ではあるものの
積み上げられた伏線からの大どんでん返しが最高。
これは是非2時間ドラマで観たい。
『関守』
その日を食いつなぐために都市伝説を追うライター。
「四年続けて死亡事故が起きたカーブ」の取材のため
山奥の鄙びたドライブインを訪れる。
ドライブインを経営する老婆への聞き込みで展開していき
なかばボケているようでいて物腰やわらかな老婆の昔話に
読み進めるほど引き込まれてしまう。
都市伝説として記事を書くためにはただの事故ではなく
「幽霊のしわざ」等の超自然的なものにあやかる共通点が必要。
意外な形で明かされる「超自然」の正体を知ると
作者のアイデア力の鋭さに感嘆させられる。
夏の暑い時期、人通りすら少ない山奥という舞台設定は
さながら夢でも見ているような空虚さ。
一貫した気怠い文体のおかげで最後まで気怠い気分のまま読み終われる。
寝る前にさくっと読むのがおすすめの一篇。
『満願』
自分の事務所を構えるベテラン弁護士。
学生時代に世話になった下宿の女将が
殺人による懲役8年という刑期を終えて出所してくる。
物語は主人公の学生時代の回想と
事件当時の状況説明が交互に描写され、
駄目亭主を支えるたおやかながら芯の強い女性と
殺人という犯罪のミスマッチに意識を釘付けにされる。
事件は主人公の預かり知らないところで発生しており
裁判の経過や証拠品から真相を推理していく。
何故殺人を犯さなければならなかったのか、
何故あえて控訴せず、静かに刑を受け入れたのか。
すべてが理外に見える事件の真相を知ると
ぞっとさせる人間の闇を感じることができる。
6篇の共通点として、どれも退廃に向かう人々を描写していて
世間の理不尽さを見事に抽出している。
カチッとパズルのピースがはまる本格推理とは違って
コーヒーに入れたミルクが自然に溶け合っていくような
ファジーな伏線が大量に盛り込まれているのが楽しすぎて
同じ短編を続けて何度も読み返したくなる。
文章も非常に手馴れたレベルで読みやすかった。
『氷菓』のアニメとしての出来の良さもあって
作家としての印象がすこぶる良かったのだけれど
この一冊でさらに好きになった。
今後も継続して追いかける予定。
後半3篇の感想。
『万灯』
世界を股にかける有能ビジネスマン。
バングラデシュのガス田開発を命じられるが
障害になるのが村の開拓を頑なに拒む権威者の存在。
彼を疎む他の権威者たちから殺害をそそのかされ、
自分の信念と日本の国益のために倫理を超えた決断をする。
同様に事件に巻き込まれるライバル会社の森下がいいキャラ。
主人公以上に有能にもかかわらずヘタレなので
冷酷に事を進める主人公よりも人間的に感情移入できる。
完全犯罪に見えたが実は小さな綻びから…という
倒叙型社会派ミステリのお約束な展開ではあるものの
積み上げられた伏線からの大どんでん返しが最高。
これは是非2時間ドラマで観たい。
『関守』
その日を食いつなぐために都市伝説を追うライター。
「四年続けて死亡事故が起きたカーブ」の取材のため
山奥の鄙びたドライブインを訪れる。
ドライブインを経営する老婆への聞き込みで展開していき
なかばボケているようでいて物腰やわらかな老婆の昔話に
読み進めるほど引き込まれてしまう。
都市伝説として記事を書くためにはただの事故ではなく
「幽霊のしわざ」等の超自然的なものにあやかる共通点が必要。
意外な形で明かされる「超自然」の正体を知ると
作者のアイデア力の鋭さに感嘆させられる。
夏の暑い時期、人通りすら少ない山奥という舞台設定は
さながら夢でも見ているような空虚さ。
一貫した気怠い文体のおかげで最後まで気怠い気分のまま読み終われる。
寝る前にさくっと読むのがおすすめの一篇。
『満願』
自分の事務所を構えるベテラン弁護士。
学生時代に世話になった下宿の女将が
殺人による懲役8年という刑期を終えて出所してくる。
物語は主人公の学生時代の回想と
事件当時の状況説明が交互に描写され、
駄目亭主を支えるたおやかながら芯の強い女性と
殺人という犯罪のミスマッチに意識を釘付けにされる。
事件は主人公の預かり知らないところで発生しており
裁判の経過や証拠品から真相を推理していく。
何故殺人を犯さなければならなかったのか、
何故あえて控訴せず、静かに刑を受け入れたのか。
すべてが理外に見える事件の真相を知ると
ぞっとさせる人間の闇を感じることができる。
6篇の共通点として、どれも退廃に向かう人々を描写していて
世間の理不尽さを見事に抽出している。
カチッとパズルのピースがはまる本格推理とは違って
コーヒーに入れたミルクが自然に溶け合っていくような
ファジーな伏線が大量に盛り込まれているのが楽しすぎて
同じ短編を続けて何度も読み返したくなる。
文章も非常に手馴れたレベルで読みやすかった。
『氷菓』のアニメとしての出来の良さもあって
作家としての印象がすこぶる良かったのだけれど
この一冊でさらに好きになった。
今後も継続して追いかける予定。