感想:ミセス・ノイズィ

2023-11-05 10:08:57 | 映画






「引っ越しおばさん」「騒音おばさん」といえば
一定以上の年代の人は必ず知ってる人物。

そのおばさんをめぐる一連の騒動を元にフィクションとして再構成したのがこの映画。

公開当時は近場の映画館でやってなかったので
コロナにやられて動けなかったときにアマプラで有料で観た。




まずは現実のおばさん騒動まとめ。

「引っ越し! 引っ越し! さっさと引っ越し!」というリズムを刻み
ラジカセで大音量を流しながらベランダで布団を叩きまくるおばさんが
ある時期からテレビのニュースで流れ始める。

その強烈なキャラクターとテレビ映えする行動の数々により
ワイドショーで連日おばさんの映像が放送され続け国民全員のオモチャとなった。
映像を提供しているのは騒音の被害者である隣人夫婦。

隣人夫婦とのいざこざによるおばさんの嫌がらせということだったが
実際に流される映像はおばさん側ばかりのため、
どうしても一方的に悪者に見えてしまう。



結果的には隣人が騒音で眠れなくなり体調不良となったことを理由に
傷害罪が適用されて逮捕・懲役の実刑に至ってしまい
それはさすがにやりすぎだとネットではおばさん側に同情する流れが出来上がる。

そこからは被害者であったはずの隣人夫婦にあることないことの
誹謗中傷が繰り返されていく。

とはいえ、コンテンツとしてのおばさんが不在となった以上
あらたに面白い映像が提供されることもなくなり
ネット民からも飽きられて忘れ去られていった。



結局のところ、何が本当で何が嘘なのかがまったく検証されずに
無責任に囃し立てられてそのままフェードアウトしたこの事件。

いったいどのようにエンターテイメントとして再構成されたのか。






映画のあらすじ。



主人公はスランプに苦しむ作家の真紀。
夫と娘とともにアパートに引っ越してきたものの、
朝早くに布団を叩くおばさんのせいで執筆がはかどらない。

そして、勝手に部屋から外へ遊びに出た娘を夜遅くになってから
おばさんが連れて帰ってきたことで怒りに火が点く。

騒音の被害を受け続けた真紀はその怒りの矛先を執筆に向ける。
おばさんを元にした小説を出版社へ持ち込んだところ大ヒットに。

さらには二人の諍いがネットにアップされ、
小説で誇張されたおばさんの異常性が現実と重なって面白がられ
連日アパートにはマスコミと野次馬が押し掛けることとなる。

ある程度物語が進んだところで時間が巻き戻り、おばさん視点に切り替わる。
何故おばさんが布団を叩くのか、子供に対して何をしたのか、
過去にどのようなことがあったのか。
様々に同情すべき点が観客へ提示されていく。

そして加熱していくおばさんブームの中、
ある出来事をきっかけに真紀が叩かれる側になってしまう。

終盤は世間をも巻き込んだドタバタになるが
ご都合主義的におさまって静かに綺麗にまとめて終わり。




なんとも日本映画としてのテンプレートのような展開だったが。

まあなんというか。
「ネットでの憶測で作り上げられたイメージ」をそのまま映画にしたわけだな。
映画は映画で良く出来ていたのだけれど
映画より現実のほうが面白かったのがヤバい。



これだけ現実に即していると、映画を作るにあたって
おばさん本人に許可をとらないとまずいレベルのような気がするんだが
まあとってないだろうなあ。

しばらく前に「あの人は今」的な感じでネットニュースの記事になっていて
おばさん本人に取材しようとしたら警察を呼ばれたとのこと。そりゃそうだ。


コメント
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