臨時国会が開会し、民主党内ではTPP参加の是非を巡る議論も白熱してきました。当初は自由主義貿易を推進し日本の得意分野で勝負に出るのか、農業の保護を優先するのかが論点と感じていましたが、TPPが日本の未来に及ぼす影響は多岐にわたることが明らかになってきました。
私はアジアの成長を取り込むため、日本製品、またインフラの海外展開などにおいて中国や韓国に負けないための自由貿易推進の必要性を強く感じています。一方、金融や保険、郵政、さらに食の安全などにおける大きな変化の可能性をシュミレーションした時、TPPにおける米国の狙いは「日本の制度を米国化」することにあると、強く危惧しています。米国は日本の「非関税障壁」を撤廃させ、日本のサービス市場の開放を迫ることで経済の改善を目指していると考えられます。
米国による「年次改革要望書」の中で、記憶に新しいのは「郵政民営化」でしょう。米国からすれば120兆円に上る貿易保険市場をこじ開けるための戦略だった郵政民営化が、日本に根づいていた郵政事業を大きく破壊し、特に過疎地域に住む人々に大きな不利益を与える結果になったこと、日々の政治活動でも実感しています。
写真:今日は郵便局長や家族の方々の懇親会で、約100名の方々を前にTPPに関する現時点での考えをお話しました。
私がもっとも危惧するのは「投資家と国家の紛争解決」条項です。これは日本の政策によって何らかの被害を被った米国企業が日本政府を訴えることができるとするものです。訴訟の場は国際投資紛争解決センターなどの第三者機関であり、審理は一切非公開、判定は強制力を持ち、不服の場合でも上訴不可、判定基準は被告となった相手国の政策妥当性・必要性ではなく、「外資が公正な競争を阻害されたか否か」の一点だそうです。(あおぞら銀行金融法人部門レポート)
また、遺伝子組み換え作物の表示が十分ではなくなったり、医薬品分野における安全基準が現状とは変わってしまう可能性も危惧されています。
アジアの域内貿易は60%にまで進んでおり、TPPは成長するアジア市場に乗り遅れないための米国の戦略でもあります。常に成長を目指す米国とは違い、日本にとっては国土の環境、国民の安全・健康を守れる成熟した国家を目指すことも重要な視点だと思います。米国が国益を追求するのは当然ですが、私たちも国益を守ることを第一に考えなくては!
このようにTPPは多くのデメリットが想定され、それがメリットよりも大きいのかどうか、まだ十分なシュミレーションがされていません。従って、「APECまで」と自ら期限を区切り、拙速に交渉参加を決定するのは日本にとって重大な不利益をもたらす可能性があると思います。
TPPにおいては日本は何を獲得し、何を守るのか目標をはっきりと定め、その目標に到達するための味方になる国とも連携して、したたかに交渉してこそ国民の生活を守れると思います。
このような理由から、現時点では私はTPPへの参加には極めて慎重な立場であり、貿易のルール作りはWTOをベースに二国間の経済連携を進化させていくことを基軸に考えるべきだと思っています。
写真:玉置公良衆議院議員、岸本周平衆議院議員、浦口高典県会議員とともに民主党和歌山県連が作成するマニフェストについて議論をしているところです。