阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

トルコへの原発輸出について外務委員会質疑

2013年11月21日 14時27分32秒 | 政治

 トルコへの原発輸出については反対であることをすでに書きましたが、今年5月に続いて岸田外務大臣に質問した外務委員会(11月6日)の議事録がアップされたので、全文を掲載します。

外務委員会での質問の映像(11月6日)


○阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 本日は、この五月に続きまして、トルコへの原発の輸出について岸田外務大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 五月というタイミングは、安倍総理がトルコを訪問されて、日本に排他的交渉権を付与するという、その直後でございました。そして、先日、安倍総理は再びトルコに行かれまして、商業契約の交渉が終了し、合意に至った、そういった状況であると認識をしております。ところが、この内容について、私も、外務省また経産省の方々にお尋ねをしてまいりましたが、まだ十分に決まっていないという点が多々あると思います。

 私は、日本という国が、福島の悲劇を経て、海外に原発を輸出する、これはまさに十字架を背負っている。地球環境を破壊し、そして今なお世界に対して不安を与えてしまっている日本として、日本には当面建設できないであろう原発を、とりわけ地震多発国であるトルコに売っていく。このことは、万が一再び事故が起こったときに、日本の国際的信用は地に落ちる可能性がある。そういった中で、いかに世界に対して安全と安心を提供できるか、このような大変な苦悩の中で、恐らく岸田大臣もこの案件に当たられているのだと思います。

 玄葉大臣、今、席を外されておりますが、ヨルダンに対する原子力協定を締結する局面では、ふだん大変に颯爽としていらっしゃる玄葉大臣、まさに崩れそうになるような風情でこの案件に対する答弁をされていました。

 先ほど小川委員から、大臣の苦悩する顔が見たいという、本当に私の心にも大変響く質疑がございましたが、特にこの問題については、我々は、与党、野党、そして日本国民全体が十字架を背負っているという認識のもとで取り組んでいくべきことだと思っています。

 この点について、岸田大臣の個人としての考え、自民党リベラル派であり、さらに広島御出身の一人の人間としての思いをまずはお伺いしたいと思います。

○岸田国務大臣 先ほど、核兵器の使用につきましては、核兵器のない世界を目指すという大きな目標に向けて努力したいという思いを申し上げさせていただきました。

 そして、核の平和利用という部分につきましては、現在、工業のみならず、医療ですとか、さまざまな分野で活用されています。

 核の平和利用につきましては、我が国は、福島第一原発の事故という大変悲惨な経験をいたしました。この経験と教訓をもとに、核の平和利用における安全性に向けて、我が国の高い技術あるいは知見をしっかり提供し、国際的に貢献していく、こうした大きな責務があると考えております。国際社会、そして相手国の意向も確認しながら、ぜひ、我が国のこうした知見や技術を国際的な貢献に使っていかなければいけないと考えています。

○阪口委員 まず、この問題について、日本が提供できる価値とは何なのかということを見詰め直さなければいけないと思っています。

 やはり日本としては、環境や、また人道的配慮に立った計画を立てること、そしてサービスや保守、修理に至るまでパッケージで提供してこそ、例えばロシアや中国よりも、より大きな安心が提供できる、このように考えております。

 したがって、世界最高水準の安全と安心を提供するということであれば、私は、まず、いかに責任から逃れるかではなくて、いかに責任を負うべきか、そういった視点が必要だと思っています。

 まず確認したいことなんですが、基本的に、メーカーとして原発の施設を提供するだけであれば、ハードを提供するだけであれば、原子力賠償のルールを定めたパリ条約で定められた、事業運営会社と当該国の政府に責任が集中するという賠償責任が適用されません。しかし、原発の事業の運営にかかわっていくということであれば、これは日本政府ともども責任を負うという立場になってまいります。

 このトルコに対する、そして今後の世界に対する原子力事業に関して、基本的に日本の立場というのはどちらなんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

○岸田国務大臣 先生、済みません、どちらかという御質問でしたが、そのどちらかがちょっとはっきりしなかったので、申しわけありません、もう一度お願いいたします。

○阪口委員 済みません、私の質問が明確ではなかったんだと思いますが、基本的に、ハードとしての原発の施設を提供すること、そこにとどめて、事故が起こったときの責任を負うことを避けていく、そういった方針なのか、あるいは、事業の運営に積極的にかかわっていくことで、事故の賠償も負うことで国家としての責任をしっかり果たしていく、どちらなのか。特にトルコにおいての基本的な日本政府の考えを教えていただきたいと思います。

○岸田国務大臣 失礼しました。

 まず、御指摘のように、責任の問題ですが、原子力損害賠償に関する国際条約、三系統ございます。御指摘のパリ条約、ウィーン条約、そしてCSCですか、三系統が存在いたしますが、こうした三系統とも、原子力発電施設において万が一事故が発生した際の損害賠償の責任は、当該施設の運営者、要するに原子力事業者が負うということが原則になっております。

 そして、要は、運営者になるのか、その前でとどめるのかという御質問かと存じますが、これは、相手国の事情、さまざまな経緯等によるものだと思っております。相手国の要求ですとか、今日までのさまざまなかかわり方によりまして、どういったかかわり方になってくるのかが決まってくると考えます。

○阪口委員 ここがまさに苦悩する点であると思いますが、世界最高水準の安全性を提供することで世界の原子力安全の向上を図るということであれば、ハードとしての原発施設を提供して、そこから先は知りませんということでは済まないと思うんですね。ですから、原発を売るということは、まさにその後の事故処理、さらに賠償も含めた責任を負っていく、その中でトータルで世界最高水準の安心を提供するということでなければ、私は無責任だと思うんですね。

 ですから、確かに相手国政府の日本に対するさまざまな期待、要望はあると思いますが、しかし、一つお聞きしたいんですけれども、例えば重大事故がトルコにおいて起こりました。そして、トルコの力だけでは修理、収束できない場合、今回、フランスのアレバと組んで受注することになった三菱重工としては、どのような責任を果たし得るのか。このままほっておけば、もう本当に甚大な影響が世界に及ぶかもしれない。しかし、あくまでもメーカーであるから、そこまでの、それを収束するために命がけでかかわっていく責任はありませんよというような立場をとり得るのか。また、その際に日本政府としてどのような責任を負うのか。

 ここのところも大変大きな問題になってくると思うんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 日本企業が原子力発電所の機器を輸出する場合、あるいは海外の原子力発電事業に参入する場合でございますけれども、その場合の原子力損害の賠償責任におきましては、個々の契約の内容、あるいは当該国の法制度によってその範囲が規定されるということだというふうに考えてございます。

○阪口委員 最初に私、我々は十字架を背負っているという、ある意味情緒的な言葉を申し上げましたが、これは、大変に大きな道義的責任を負っているということでもあると思います。

 日本が提供した原子力施設、原発が重大な事故を起こして、そしてその原発が設置されたトルコが自身で修復、修理ができない場合、どのような契約になっていたとしても、日本としてそれを解決する責任があるんじゃないかと思うんですけれども、その点について、大臣のお考え、どのように思われるでしょうか。

○岸田国務大臣 我が国として、核の利用についての安全に関しまして国際社会にしっかりと貢献するという意味からは、こうした原発施設を設置するのとあわせて、人材育成ですとか、あるいは現地の国の法整備ですとか、さまざまなシステムの構築ですとか、こういった部分についてもしっかりと協力をしていく、こういった姿勢はあり得るというふうに思います。

 そして、現実にどうかということは、あくまでもやはり相手国の意向というのが尊重されなければならないと存じます。意向に基づいて、核の平和利用について最大限貢献する、そして、万が一事故が起こった、対応についてももちろん契約によるわけでありますが、我が国としてでき得る限りの協力はしていく、こういった姿勢は大事にしていかなければいけないのではないか、このように思います。

○阪口委員 これから原発を導入しようとしているトルコの方からすれば、私は、心もとない答弁であったのかなというふうに思わざるを得ないと思います。

 今から二年前に、同じこの外務委員会で、ヨルダンに対する原発の輸出を定める原子力協定について議論をしました。私も、砂漠国であるヨルダンに原発を売る、これはもう大変なリスクがあるのではないかという考えのもと、実は、現地ヨルダンのアンマン郊外のマジダルというところに行って、建設予定地を見てまいりました。また、原子力委員長のトゥーカンさん、MITで原子力の博士号を取ったという、大変に原発については詳しい方ですが、トゥーカンさんともいろいろお話をする中で、日本の原子力技術に対する大変に高い信頼というものを感じました。

 ところが、まさに数日前なんですが、その時点では圧倒的に日本が有利であろうと思われていたヨルダンの原発、これが、ロシアに対して排他的な交渉権を付与する、このような記事に接しまして、私も、日本政府としてこの事態をどのように捉えているのか、きょうはぜひ聞かなければいけないと思っているんです。

 まず、このロシアにとられたということに対しての大臣のお考え、そして、なぜ日本が負けたのかという分析、できていればお話をいただきたいと思います。

○岸田国務大臣 御指摘のように、ヨルダン政府が原子力発電所建設、運営に係る排他的交渉権をロシア企業に付与したということは、承知をしております。

 本件決定に当たり、ヨルダン政府は、ファイナンス、他国での実績、安全性の観点に言及していますが、本件は民間企業の商活動であり、ヨルダン政府と各企業の交渉の詳細については我が国としても承知しておりませんので、コメントすることは難しいのですが、政府としても、安全面を含めた原子力協定が日・ヨルダン両国で進展することを期待しており、ヨルダン側には、日本として、ヨルダン原子力建設計画に貢献できる立場を伝えさせていただきました。そして、私も七月にヨルダンを訪問させていただきましたので、こうした貢献ができるということを申し上げてきました。

 結果として日仏合弁企業のアトメア社が排他的交渉権を獲得できなかったこと、残念ではありますが、今回の決定は、排他的交渉権の付与の段階であります。最終的な受注先の決定は先にあるわけですので、当面、ヨルダン政府とロシア企業の今後の交渉の推移を見守っていきたいと考えております。

○阪口委員 岸田外務大臣がヨルダンに行かれたということではありますが、まさに、ロシアに対して排他的交渉権を付与する、この決定がなされた時期というのは、安倍総理が二度目のトルコ訪問をされていた時期とも重なるわけですね。そういう意味では、私は、トップセールスということで、原発を本当に国家戦略の中心に据えて輸出を行っていくということであれば、安倍総理はトルコに行っている場合ではなかったのかなという気もいたします。

 どちらにしても、先ほど最初に私が問題提起したことともつながっているんですが、ロシアは、本当に、トルコにおいても、建設、運転、保守、廃炉措置、そして使用済み燃料、放射性廃棄物の管理、損害賠償に至るまで責任を負う、まさにトータルで安心を提供する、そういう姿勢であります。

 日本に関しては、先ほどの大臣の答弁、相手国のさまざまな都合も考慮してということではありますが、私は、基本的に、まさにこれほどの事故を起こした日本が、本気で安全性をもって世界最高レベルの安心を提供する姿勢が問われているのではないか、このように思わざるを得ないんですね。

 この点について、何度もお聞きしているようではありますが、やはり、大臣として、どうあるべきなのかということをもう一度お伺いしたいと思います。

○岸田国務大臣 先ほども申し上げましたが、我が国としましては、核の平和利用について、福島第一原発における貴重な経験、知見、これを国際社会としっかり共有して、国際的な核の安全に貢献していかなければいけないと考えております。

 その意味でも、トルコとの関係におきましても、我が国としてしっかり貢献するすべを具体的に考えていかなければならないと考えております。今後のトルコとの関係につきまして、そういった思いでしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

○阪口委員 この原発輸出は成長戦略の柱の一つだという位置づけではありますが、しかし、実際に経済性が伴うものなのかということについても私は疑念を持っております。

 今申し上げたように、ロシアまた中国などは、まさにパッケージでサービスを提供する、こういった方針に今後なってくると思います。

 トルコに関しては、私が調べた限りでは、二百二十億ドルに上る総事業費のうち、出資以外を国際協力銀行や民間金融機関からの借り入れで賄うと聞いておりますが、トルコ国営電力会社と売電契約を結んで、要は、日本の力で設置した原発施設の設置費用を、売電契約を結んで電力を売ることで回収していくということだと思います。

 ところが、今、世界各国の原発の建設についていろいろ事例を見ていると、例えばフィンランドのオルキルオト原発、これは、二〇〇五年に建設が開始されてから、五年程度で完成する予定だったにもかかわらず、工事は遅延に次ぐ遅延で、建設コストは当初の五倍にはね上がっているということでございます。

 日本の公共事業においても、小さく産んで大きく育てるという思いを持って取り組んでいらっしゃる方も多いように聞いておりますが、これは海外であり、さまざまな反発があり、さらに、技術的に大変大きなチャレンジであるということを考えると、当初の建設費用が何倍にも膨らんで、そして本当に電力を売ることでその費用が回収できるのか否か、大変に厳しい状況になるのではないかと私は危惧をしております。

 この点について、本当に原発を売ることが日本の経済にとってプラスになるのか、大臣、どのようにお考えでしょうか。

○高橋政府参考人 お答えさせていただきます。事業の経済性について御答弁させていただきます。

 一般的に、原子力発電所の事業の経済性につきましては、さまざまなリスクを考えながら、各事業主体において、契約の内容等を精査しつつ判断をしていくということだろうと考えてございます。もちろん、そのリスクとベネフィットを考えながら、企業としてやっていけるかどうかという判断のもとに進められていくことだと承知しております。

○阪口委員 この商業契約の中で、トルコ政府の電力の買い取り保証というのは担保されているんでしょうか。また、ロシアに対しては、私が調べた限りでは、十二・三五アメリカ・セント・パー・キロワットアワー、そういった買い取り価格になっているようですが、日本の買い取り価格は設定されているんでしょうか。あるいは、設定されているとすれば、その価格は幾らなんでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 これは企業の契約の内容にかかわることでございまして、また交渉中でございますので、私どもとしてお答えできる立場にございません。

○阪口委員 これは確かに民間企業の契約ではありますが、しかし、最初に問題提起したように、事業の運営にもかかわっていくということであれば、事故が起こったときの賠償等も日本政府が負うことになるわけでございます。ですから、この商業契約がどのように結ばれていくのかということについては、私は、日本政府も大きな責任を負っていると考えております。

 私も先日来、外務省また経産省の方々にこの商業契約の内容について質問をしているんですが、なかなか、交渉中であるとか、民間であるから把握していないという答えが続いていて、大変にフラストレーションを感じるんですが、日本国のプロジェクトである、これは安倍総理がトップセールスをしているわけですから、誰が見てもそういうふうに思うわけであります。ぜひ政府としての責任のある対応を強くお願いしたいと思います。

 そして、このトルコなんですが、大変な地震国でございます。今から約二年前でありますが、トルコにおいて地震が起こって、そして、救援活動に当たっていた日本のNGOの方々、難民を助ける会のボランティアの方々ですね、救援活動中に泊まっていたホテルが崩壊をし、そして一人の青年がお亡くなりになりました。また、若い女性、この方も、五時間余り瓦れきの中に閉じ込められて、何とか現地の方々の努力で救出をされたという事故がございました。マグニチュード五・六で鉄筋コンクリートのホテルが崩壊をしたということでございます。

 一方で、原発が建設予定のシノップ、黒海沿岸の大変美しい町と聞いておりますが、ここは、いわゆる北アナトリア断層が、トルコ北部、黒海に極めて近い部分を千二百キロにわたって通っている、恐らくその少し北の部分にあると思われます。

 政府は、日本原子力発電株式会社に委託してシノップの地層調査を行っていると聞いております。ところが、この日本原子力発電株式会社は、原子力規制委員会が活断層と認定をした敦賀原発下の断層を活断層ではないと主張を続けている組織でもございまして、要は、最初に申し上げました、二度事故を起こすことになれば、まさに日本の信用は地に落ちる。その中で、本当にこのシノップという場所が原発を設置するのにふさわしい場所なのか、そして、万が一地震が起こったときに、仮にこの原発施設は頑丈につくられたとしても、さまざまな救援活動、また、この状況を改善するための活動をする際に、周辺のインフラの不備により食いとめることができない、そういった可能性があるのではないかと思います。

 マグニチュード五・六でホテルが倒壊してしまう、そういった国でもありますから、このあたりを考えると、もうとにかく、万々が一にも事故を起こせない状況なのかという点について大変に私は憂慮をしているんですが、この点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたFS調査でございますけれども、我が国の技術を導入する際に、安全性の向上のために貢献していこうということで、日本原子力発電に委託をして、関連する陸域及び海域の敷地周辺の地質調査を行っているものでございます。こうした調査を踏まえまして、最終的には、トルコ政府においてこのプロジェクトの実現可能性について判断していくんだろうというふうに承知をしてございます。

○阪口委員 今の答弁の中で、最終的にはトルコ政府が実施、実現をしていくのであろうというような、大変に官僚的な答弁であったと私は受けとめたんですが、この原発の輸出、特にトルコに対する輸出、まさに、福島のあの悲劇があって最初の原発の海外展開でございます。万が一つにも失敗は許されない、そういう認識をしっかり持った対応をする状況、そして覚悟があるのか、これが問われていると思います。そして、この覚悟がなければ、私は、日本で設置できない、建設できない原発を海外に売っていく資格はない、このように思っています。

 この点については今後もぜひ私は質問してまいりたいと思いますが、世界に対する責任をいかに果たしていくのか、これは、原発を設置する、しないという大きな判断も含めて、我々全員が問われていく問題だと思いますので、そういった認識をぜひ共有させていただきたいと思います。

 最後に、この点、大臣のお考えを伺いたいと思います。

○岸田国務大臣 御指摘のように、我が国として、原発に関する国際的な安全のために何ができるのか、これをしっかり考えた上で、具体的な案件につきまして対応を考えていかなければならない。原発の安全というのは、第一に考えなければいけない重たい課題だということ、これをしっかり頭に置きながら、今後の対応について考えていきたいと思います。

○阪口委員 終わります。