昨日は、衆議院本会議で「国家戦略特区」について安倍総理に質問しました。世界の大都市と勝負するためには踏み込み不足との視点に立ち、税制や労働法制の改革を迫るとともに、ひとりひとりが生きがいを実感できる日本をつくるために、特区だからこそ盛り込むべきと私が考える点について問題提起しました。映像はこちらで観て頂けます。今、特定秘密保護法案やトルコへの原発輸出を可能にする原子力協定など、党内の議員の受け止め方が分かれる大きなテーマが私が責任者を務める「国家政策部会」で議論されており、対案作りの議論が連日行われています。また、安全保障上問題がある地域の土地の取り引きに関しても私が座長になって法案提出を予定しており、本当に忙しい毎日です。そんな中、頂いた本会議での登壇の機会。文字通り寝る間もなく準備をした原稿ですが、自民党席からは沢山の野次も頂き、問題提起の反響が大きかったことをありがたく思っています。
衆議院本会議「国家戦略特区法案」の関連質問 (映像)
日本維新の会の阪口直人です。ただいま議題になりました「国家戦略特区法案」について日本維新の会を代表して質問させて頂きます。
本題に入る前に、安倍総理にお尋ね致します。今回の国会は「成長戦略実行国会」だと総理自身が命名されております。ところが、前回の産業競争力強化法案の審議の際は、総理はトルコに外遊されていて、答弁の場にいませんでした。自民党は野党の時、徹底的に首脳外交を阻止する戦略をとられていましたが、私たち日本維新の会は、首脳外交の価値を認め、総理が年間100日は海外出張できるような国会改革を掲げ、その実現を今後も真剣に目指していきます。しかし、総理自身が力を入れているはずの、本来は重要公範である国会審議を総理がいない中で審議するのでは、国会軽視に力を貸してしまうことになるのかと、私たちは正直はしごを外された思いでもあります。この点を総理はどのように受け止めて頂いているのか、まずはご自身の言葉で答えて頂ければと思います。
安倍総理の経済政策の3本目の矢である成長戦略において「国家戦略特区」はまさに切り札と言えるでしょう。「世界で一番ビジネスのしやすい環境」を実現するため、まず特区の中で大胆な規制の撤廃を行う発想は私たちも共有しており、大阪府、大阪市は政府に「先回り」をして具体的な数々の提案を行ってきました。しかし、実際に提出された法案の中身を見てがっかりしました。産業競争力会議での議論と比べると、岩盤規制を打ち破る気概が全く感じられない内容になってしまったこと残念でなりません。
安倍総理は10月21日の衆議院予算委員会で「国家戦略特区」に関して、特区ごとに具体的な計画を決める「統合推進本部」の意思決定には関係大臣を加えない方針を明らかにされました。統合推進本部のメンバーは国家戦略特区担当大臣と関係地方公共団体の長、民間事業者の3者で組織する方向で検討しているとし、具体的な事業の推進のために必要な協議には関係大臣の参加を認めるが、「意思決定には加えない方向で検討している」と言っています。
抵抗する大臣がいては骨抜きになるから構成を見直したのでしょうか?では、安倍総理は、そもそもなぜ、そのような抵抗勢力予備軍を閣僚に任命したのか? 抵抗するような人が閣僚なら更迭し、成長戦略実行内閣に改造して、改革をやり切るのが本当の実行力、首相としてのリーダーシップではないでしょうか?
さて、世界銀行が185の国・地域を対象に企業の活動状況を調査した年次報告書「ビジネス環境の現状」のランクでは、2013年は日本は24位。昨年の20位から下がっています。1位シンガポール、2位香港、韓国は8位、マレーシアが14位、タイが18位で、アジアの新興国にもリードを許している。起業のしやすさは114位、税制度が127位と厳しい評価です。世界で一番ビジネスがしやすい国どころか、世界で20位にも入っていないのが現実です。だから、突破力を伴った改革が必要なのです。
外国企業が日本を敬遠するのは、ビジネスコストの高さ、規制・行政手続きの複雑さ、医療機関や子どもの教育の問題などが挙げられています。世界を取り込むためには、大胆な規制緩和が必要です。24位から1番を目指すわけですから、国家戦略特区が本当に機能し、成果をあげるため、これまでとは異次元の挑戦により既得権を打破しなくてはなりません。その覚悟とリーダーシップがあるのか、世界が安倍総理に注目しています。
ところが、様々な既得権を持つ業界団体に支援を受けた議員で、自民党は今、まさに膨れ上がっています。その存在こそが最大の抵抗勢力にならないように、既得権の岩盤のような壁を突破していかなくてはならない。「自民党をぶっこわす」覚悟で取り組む必要があります!総理の率直な思い、そして覚悟を問いたい。
多くの外国人投資家は、雇用規制の緩和こそが成長戦略を機能させるカギと見ています。大阪府と大阪市は「チャレンジ特区」を提案。大阪の御堂筋エリアを対象に、能力主義・競争主義に果敢にチャレンジする企業が集まる条件を整備するため、労働法制の緩和を求めてきました。能力主義・競争主義を前面に打ち出して一定の報酬以上の労働者には労働法制は適用しない。そんな画期的な制度です。
企業と労働者の関係で見ると労働者は弱い立場です。日本全体の制度としては、労働者を守っていく法制度は絶対に必要です。これは強調しておきたい。しかし、十分な能力と一定以上の収入があり、リスクはあっても、自分の能力と可能性を最大限伸ばしたい情熱を持った人を応援する環境はつくれないのか?そんな人たちがビジネスの世界で能力を発揮すれば多くの利益をもたらす存在になれる可能性が高まります。同じ考えに立ち、能力と夢を持って日本を目指す外国人にも門戸を開く、そういう環境を推進するのが国家戦略特区のあるべき姿ではないでしょうか?
資本・人材を呼び込むためには、また、成長に向けて活発な民間活動をサポートするためには、規制緩和と共に、これまでにない規模での税制改革が必要です。国家戦略特区法案において最も大きな問題は、税制改革に踏み込めていない点。これは致命的です。
例えば大阪府と大阪市では国際総合戦略特区において、新たに進出した企業の地方税をゼロにしています。国もこうした取り組みに連動させて特区内での法人税を大幅に下げるべきです。総理のリーダーシップを発揮して、何としても特区における税制の抜本改革を進めて頂きたい。
海外から注目されている金融改革も先送りにされました。政府は「アジア№1の金融センター」をうたいながら、実際にはシンガポールや香港に大きく後れをとっています。海外の金融機関がアジア本社を東京からシンガポールや香港に移す例も相次いでいます。株式上場にかかる金融取引税をゼロにするなどの抜本的な見直しや、有価証券報告書や監査報告書も英語のみによる行政手続きを可能にするなどの環境整備を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
特区はあくまで限定した地域や分野での取り組みです。日本全体が経済的に成長していくためは、国家戦略特区での経験、学びを将来は日本全体に広げ、日本の真の経済成長につながる一歩としてほしいと思います。
一方で、私たちは格差の解消という課題とも向き合わなくてはなりません。デフレ下で経済成長自体が難しい時は、まず、生産性の高いところに投資した方が経済効率性は高くなりますが、だからこそ、地域格差、経済格差の問題を解決する意欲を、特区の理念にも反映させて頂きたい。
国家戦略特区は、日本の中にシンガポールや香港をつくる。過酷な国際競争に勝ち切る都市をつくることが目的と解釈していますが、私は、経済の効率性を追求するとともに、人間の幸せを追求するための新しい挑戦をする場でもあって欲しいと思います。例えば、社会を良くするための事業を行う社会起業家、すなわちソーシャルアントレプレナーを応援する特区にしませんか?利益を最大化するのではなく、社会への貢献を最大化しようと考える企業、いわゆる公益資本主義を実践する企業を応援する特区というコンセプトを追求する、そんな挑戦を行う場でもあって欲しい。社会貢献を目的とする営利企業に対する税制優遇の在り方は今、米国では大きな議論になっています。日本でも特区で実験的に導入することから始めては如何でしょうか。また、非営利の社会貢献活動を行うNPOに対しては特区において控除額を特別大きくすることで活動を後押しする制度をつくってはどうでしょうか?
米国のオバマ大統領は大学を卒業した後、3年間、シカゴ南部の貧困地域で弱い立場の人々の自立を支援する地域活動家として働きました。このような経験を踏まえて、社会活動家を支援する意志を育んだと言われています。国家戦略特区は一部の地域、一部のエリートや強い立場の人たちだけが恩恵を受けるものであってはなりません。全ての人に希望を与える制度になるようにグランドデザインを練り直し、より志の高いものにしていく。そんな視点も織り込み、人々に元気を与える特区を与野党を超えて作り上げる意志を改めてお伝えし、質問を終えます。ありがとうございました。