阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

大阪都構想の実現は未来への責任①

2015年05月08日 09時02分15秒 | 政治
 政治に携わる者として、将来、未来の世代からこれらの質問を受けた時にどのように答えられるのか、そのために自分が何をしたと言えるのか、思い悩むことがある。

・・・少子高齢化と人口減少が深刻な問題になることはわかっていたのに、なぜ政治家は何もしなかったのか?

・・・原発は事故の発生や廃棄物処理が重大な状況をもたらすことがわかっていたのに、なぜ、政治家は自分たちの世代にツケを押し付けたのか?

・・・国と地方の膨大な借金が1000兆円を超える現状に対してなぜ、政治家は何もしなかったのか?

 未来への責任を果たすという意味において、大阪都構想は、このような疑問に対する渾身の回答のひとつだと考えている。

 日本において中央集権国家としての成長はすでに終わっていることは明らかだ。長期的な衰退から脱却して、活力のある社会に変えるにはどうすればいいのか? アベノミクス? 単なるカンフル剤であり、むしろ地方を苦しめる要因ではないか。私は本質的には統治機構を変えるしか方法がないと感じている。道州制を実現して日本の各地域が特徴を活かせるような統治機関を持ち、それぞれが資金を、人材を、アイディアを、技術を世界から呼び込んで魅力を競い合う。そして行政の無駄を徹底的に排除する。私はそれが日本に新たな活力を生み出す唯一の方法であり、国と地方の膨大な借金を解決する唯一の方法だと思う。そして大阪都構想はその最初の、大きな一歩だ。

 日本にはビジョンがないと言われて久しい。一方、近隣諸国はどうか? このGW、中国が進める『シルクロード経済圏構想』の実態を視察し、ビジネスマンと意見交換をするためにキルギスから中国の新彊ウイグル自治区に入ったが、すさまじい勢いで変化が生じていることに驚愕した。

 中国の最西端、シルクロードのカシュガルは、ウルムチから2000キロ近くの距離があり、かつては3泊4日のバスの旅で入るのがほとんど唯一の方法だった。今やウルムチとの間には週に100便近い飛行機が飛び、タクラマカン砂漠に沿う町を経由する鉄道でも約20時間で結ばれている。高速バスに乗れば同じく丸一日足らずで到着する。老城と呼ばれる旧市街は再開発が進み、伝統的な手法を活かしながらも便利な構造に生まれ変わろうとしている。そして、カシュガルは、「シルクロード経済圏構想」の柱のひとつである中国とヨーロッパを結ぶ鉄道網の要衝になろうとしている。内陸部の発展のネックとなってきた輸送路の問題を乗り越え、新疆ウイグル自治区と中央アジアをトンネルでつなぎ、中国とヨーロッパを直接結ぶ壮大な計画の中心になろうとしている。さらに、カラコルム山脈を抜けてアラビア海を結ぶ鉄道建設も2020年開通を目指して工事が進んでいる。

 そこにウイグルの人々の意向がどこまで反映されているのかはわからない。内政上の様々な問題もあるだろう。しかし、中国は中央が大きな権力を持つと同時に地方を徹底的に競争させ、そこで実績を上げた地方幹部を国家の指導体制に組み入れていくシステムを持っている。この点においては地方分権が進んでいる。例えて言えば、シンガポールや香港が国内に沢山あるのが今の中国なのだ。

 良し悪しはともかく、このようなダイナミズムを持った国と競争しなくてはならない現実を考えた時に、日本だけが旧態依然とした体制でやっていけるのかどうか、非常に疑問だ。

 大阪都構想になれば直ちにバラ色の未来がやってくるとは言わない。しかし、日本という国が近隣諸国との競争に負けないため、地方が特長を活かして魅力を競い合い、投資と人材を呼び込んで活力を得て、国家財政の問題にも寄与する。そのために他の方法が見当たらない以上、この構想をつぶしてしまったら、それは未来の世代に対する裏切りではないかとさえ、私は思う。