昨日、ミャンマーの大統領がティンチョー氏に決まりました。昨年11月8日の総選挙で圧勝したアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)におけるスーチー氏の側近。高校の同級生でもある長年の盟友です。軍事政権のもとで作られた憲法では外国籍の子供を持つスーチー氏は大統領になることはできず、実質はスーチー政権になりそうです。権力の二重構造がもたらす弊害も起こり得ると思いますが、この国の民主化の過程を見る限り、総選挙の勝利はノーベル平和賞受賞者でもあるアウンサンスーチー氏の圧倒的な人気とカリスマがもたらしたものであり、彼女の意思が色濃く反映された政権運営になりそうです。
さて、3月9日に、アジア財団と米国笹川平和財団が主催する国際開発をテーマとしたワシントンでのシンポジウムで『ミャンマーの民主化支援における日米協力』をテーマに講演をしました。
このブログでも紹介しましたが、私は1992年以降4回にわたって関わったカンボジア総選挙において何とか不正をなくせないものかと有権者登録プロセスの電子化を提案。両国の関係者への提案・説得、また国会での質疑を続けました。その結果、現在は実施する方向で準備が進んでいます。カンボジアでは、与党人民党にとっては不正ができる余地は政権を守るための最後の砦とも言われており、また、日本政府も当初は抜本的な改革に踏み込む意思はありませんでした。欧米諸国と違って生ぬるい改革で済ませてくれそうな日本のお墨付きを得たいだけのカンボジア政府、そして民主化支援の実績が欲しい日本政府による茶番(Kabuki Theater)と思われてはカンボジア国民の信頼を失います。しかし、双方が大きな勇気を持って改革に踏み出しました。
民主化支援を切り口にして日本の可能性を切り拓く 2016年1月31日
ミャンマーでは2012年1月にアウンサンスーチー氏に面談した際、自由で公正な選挙への支援、またその結果を尊重する国際的な協力を強く要請されました。2015年11月の総選挙ではスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したため選挙後に大きな問題にはなりませんでしたが、有権者登録のプロセスでは様々な不正が報告され、自由で公正な選挙が機能する制度構築が求められています。
今こそがチャンス。アウンサンスーチー氏が率いる政権のもと、日米が協力して国民IDの電子化をサポートし、国民情報を正確に把握。選挙における不正をなくすとともに将来の社会サービス向上に寄与できるよう協力しましょう!とお話をしました。カンボジアと違いトップが求めている改革ですから、実現へのハードルはより低いはずです。
また、軍事政権の負の遺産であり、環境破壊、人権無視の象徴であるカチン州のミッソンダムの現状と、ダム建設によって大きな影響を受けている現地の女性たちの生活を紹介し、持続可能な事業に変えるべく支援を行うべきと政策提案をしました。テインセイン政権下で凍結されたミッソンダム建設予定地には、昨年11月の総選挙後、現地住民の案内で視察をしています。
このダムは中国国営企業『中国電力投資公司』が36億ドルを投資してミャンマー企業と開発している巨大事業で、発電された電気の9割が中国へ送られることになっています。ミャンマー政府軍とカチン独立軍(KIA)による内戦のきっかけになった事業でもあり、強制移住、徴兵による家族の離散、環境の破壊、保障の不履行などによって現地住民、特に女性たちの生活は破壊的な影響を受けています。
ミャンマー・カチン州の和平の展望とミッソンダム建設凍結地への潜入 2015年11月22日
中止すれば莫大な違約金が発生し、工事を再開すれば、現地住民、そして国際社会は新政権を糾弾することでしょう。行くも地獄、戻るも地獄という状況です。従って、選挙制度改革支援だけではなく、このような事業を持続可能なものに変えるための支援をパッケージで行うこと、また、少数民族の方々、特に女性の自立のための教育事業もセットにすべきと提案をしました。
会場はThe Army and Navy Clubという米軍の歴史館のような場所でしたが、軍事協力ではなく平和的手段による日米協力を訴えました。日本語でもあまり早くは話せない私。パワーポイントで32枚のプレゼン資料を英語で簡潔にお話しできるか心配でしたが、熱心に参加して下さった聴衆の皆さん、本当にありがとうございました。また、準備に奔走して下さった主催者の皆様には心から感謝したいと思います。
この内容は、米国国務省、民主化を推進するシンクタンクでもあるフリーダムハウス、また、連邦議員を務めた経験のある大学教授などにも提案し、実現に向けて協力していくことになっています。
カチン族の国内避難民キャンプで。彼らの未来をつくるためにも公正な社会の実現が必要です。
講演中の私
パワーポイントを使ってのプレゼンテーションは久しぶりでした。
講演後のパネルディスカッション
パネリストは私以外は全員女性でした。
アウンサンスーチー氏に選挙制度改革を提案する私(2012年1月9日。アウンサンスーチ―氏の自宅で)
日本円では4000億円を超える超巨大事業、ミッソンダム。
カチン州の女性団体(NGO)を訪問し、女性たちへの影響をヒアリングしました
国務省に務める友人にも私の事業への協力を依頼しました。