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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『異体字の世界』

2007年08月15日 | 日本史書籍
小池和夫『異体字の世界』(河出文庫、2007年7月)

JIS X 0213(JIS第3・第4水準漢字)の開発に関わった著者による漢字本です。明治以後の漢字の整理作業によって日本の「正字」が制定されるまでの流れと、それにまつわる悲喜劇をまとめています。

現在の漢字にまつわる混乱は、人名・地名用異体字の細かさと、手書きの文字と活字とは違うということが充分に認識されていないことが原因となっているとしています。それによって明治以後、手書きによる書体を活字に取り入れるといったことが普通に行われてきました。

例えば部首の「しんにょう」は、手書きの場合は上部の点は一つだけで下の部分はくねらせるの形で書かれ、活字の場合は直線的に彫るためにと点を二つにしていたのですが、現在では活字でも手書きの形に近づけて点が一つにされてしまいました。また、 の字は、『康熙字典』では と縦棒が突き抜けた形になっており、これは活字を小篆の字形に合わせたもので、この形が正しい字形だとされていますが(白川静なんかもそのように主張していますね)、手書きでは古くから縦棒が突き抜けないの形で書かれてきて、こちらもそれなりに由緒があるわけです。

色々と批判が多い昭和21年公布の『当用漢字表』の字体ですが、これは巷間に言われているように戦後のどさくさに紛れて突然出来たものではなく、またこれに含まれている略体などもその多くは古くから用いられてきたものです。これらの字体が正字となって既に60年経つのに、未だに旧字を正字と言い張る人がいるのは一体どういうことなのか?また人名・地名用異体字について、点が一つ多いとか少ないといったことで個人や土地のアイデンティティが決定されてよいものなのか?こういうおかしなこだわりによって、特にコンピュータによる円滑な情報処理が阻害されるのは問題ではないか。日本は国際規格であるユニコードの字体を取り入れずに独自規格を作り上げてきたが、これも電脳上の字体の混乱の原因となっているなど、様々な点に著者による批判が加えられます。

私も旧字や異体字に必要以上にこだわる向きには違和感を抱いていたので、よくぞ言ってくれたという感じです(^^;) (お断りしておきますと、著者はそういう前提をふまえたうえで旧字を愛好するのはアリだとしています。)

JIS第3・第4水準開発時の裏話などもちょこちょこと触れられてますが、別機関で戸籍電算化のための調査が進められていたので、その調査資料を流用しようとして断られたとか、資料不足のせいで姓氏用のある文字が誤字であることに気付かず、第4水準の文字として採用してしまったとか、トホホなエピソードが目立ちます…… 
コメント (5)
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『新流星蝴蝶剣』

2007年08月15日 | 映画
武林で名高い「快活林」の高老大(ミシェル・ヨー)、孟星魂(トニー・レオン)、葉翔(ドニー・イエン)は幼馴染み同士。リーダーの高老大は東廠のボス曹公公から、ライバルの李公公と、その配下である聚賢山荘の孫玉伯を始末するよう命じられる。高老大は孟星魂を聚賢山荘に潜入させるが……

というわけで、何となく見忘れていた映画第三弾です。古龍原作ということで前々から気になっていた作品で、やっとこさ鑑賞。90年代の香港映画にはありがちなんですが、展開が早い割に上映時間が短いので、うっかりアクション・シーンに目が釘付けになっていると、あっという間に終わってしまいます(^^;)

主人公三人組は、葉翔が高老大に思いを寄せているのですが、高老大は彼には目もくれず孟星魂にご執心。しかし孟星魂の方は妻の小蝶(ジョイ・ウォン)を愛しているという関係です。小蝶はそんな関係を察知してか、高老大に対して自分の方が孟星魂のことをわかっていると言い張ったり、なかなか高老大に告白できない葉翔をからかったりします。

小蝶が孟星魂の子を妊娠していると高老大が知ったあたりから、小蝶が嫉妬した高老大に始末されてしまい、それを知って激怒した孟星魂が高老大に詰め寄ろうとした時には、彼女は既にラスボスにやられて瀕死の状態になっているという展開になるんじゃないかなあとドキドキしながら見てましたが、結局そういう展開にならないまま話が終わってしまいました。間尺も少し短めでしたし、途中で小蝶を始末し忘れたんじゃないかという気が……

特別主演でジミー・リンが曹公公のもとで遊び暮らす王子という役柄で出演しますが、出番が少ない割にはいいところを持って行きすぎだと思います(^^;)
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