博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『古典注釈入門』を読んで Let It Go のことを考えた

2014年12月07日 | 雑記
鈴木健一『古典注釈入門』(岩波現代全書)をぼちぼちと読んでます。この本の第一章で古典を読むことで得られる違和感について述べています。違和感というのは古典を読んでいて内容についてどこか理解しがたいものがあったとして、ある時に突然意味がわかるというものですが、このような感覚こそ古典を読む上で必要なものであり、違和感を内に秘める古典を共感を持てるものに導くのが注釈の役割なのだとしています。

これと似通った経験を最近しましたよね?とよくよく思い返してみたら、ディズニーの『アナと雪の女王』でエルサがLet It Goを歌う場面で感じた違和感でした…… YouTubeでこの歌の動画を見た時はいい歌だと思いましたが、ところが劇場で日本語吹き替え版を見た時に、どうしてあの場面でこういう内容の歌をうたうのか理解できず、また歌の内容がその後の展開ともすんなり結びついてこないのに酷く違和感を感じたものでした。

『アナと雪の女王 MovieNEX』レット・イット・ゴー ~ありのままで~/エルサ(松たか子)<日本語歌詞付 Ver.>


その後、以下の記事などを見て、日本語版の歌詞は確信犯的に誤訳されたものであり、劇中歌としての文脈を無視して、本編から独立した歌として日本人の感覚に合うように翻案というかローカライズされたものであることを知り、自分の違和感の原因がわかり、非常に得心がいきました。

"Let it go"と「ありのまま」の違い
(こちらはその「誤訳」に対する批判)

『ありのままで』の歌詞はトンデモ訳?→日本語版に合わせたプロの仕事!
(こちらが「誤訳」に対するポジティブな評価)

思うに本書で言われている違和感や注釈の役割というのはこういう感じのものなのかなと。

なお、この「誤訳」に対して個人的には、ある程度の「ローカライズ」はやむを得ないとしても、劇中歌として映画の前後の展開と辻褄が合わないのはイカンでしょと思います。Let It Goのフレーズの日本語訳としては、「ありのままで」よりも、有志による文語訳版の「ままよ」の方が原義と合っているのかなと。

で、なぜアナ雪の感想を今までブログに書かなかったのかと言うと、これまでの経験上公開当時にあの手の作品のネガティブな感想を書くと100%荒れるという確信があったからです…… 年の瀬が近き、この本を読んでアナ雪のことを思い出したついでに今年感じたことを年内に書き残しておこうと思った次第。
コメント (5)
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