博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2019年12月に読んだ本

2020年01月01日 | 読書メーター
やさしい日本語――多文化共生社会へ (岩波新書)やさしい日本語――多文化共生社会へ (岩波新書)感想
日本語を母語としない外国人にとって、どのような日本語表記がわかりやすいのかという話から始まり、「やさしい日本語」は外国人だけでなく聴覚障害者などにも求められているという話、更には日本語を母語とするマジョリティにとっても言語運用能力の向上に資するという、意外な話へと展開していく。留学生を対象とした学校型日本語教育とは別に、学習時間を捻出しづらい移民などを対象とした地域型日本語教育のメソッドが必要という話に共感した。
読了日:12月02日 著者:庵 功雄

侯景の乱始末記──南朝貴族社会の命運 (志学社選書)侯景の乱始末記──南朝貴族社会の命運 (志学社選書)感想
侯景の乱の推移と、それと前後して北朝の使者となった南朝貴族徐陵の動向、そして乱後に成立した傀儡政権後梁王朝の姿の三章構成により、梁朝の衰亡、更には南朝の貴族社会そのものの荒廃を描き出す。巷間よく話題にされる侯景の「宇宙大将軍」という号は、当時から失笑物だったようである。
読了日:12月05日 著者:吉川 忠夫

阪神タイガース1985-2003 (ちくま新書)阪神タイガース1985-2003 (ちくま新書)感想
年代でわかる通り、阪神タイガースの暗黒時代史である。当時の吉田監督が「今年はチーム作りの年」と割り切っていたはずの就任1年目に日本一になってしまったのが悪かったのか、以後18年もの紙幅を強いられる。1992年には惜しくも優勝を逃すが、その92年組が1人として2003年の優勝を迎えられなかったという点がチームの限界を示しているようである。全編を通して監督人事などの球団・親会社側の対応の酷さが印象に残る。
読了日:12月06日 著者:中川 右介

傀儡政権 日中戦争、対日協力政権史 (角川新書)傀儡政権 日中戦争、対日協力政権史 (角川新書)感想
中国の対日協力政権のうち、冀東防共自治政府、汪兆銘の南京国民政府など、4つの政権を取り上げる。1940年の天津水害に対応できなかった華北政務委員会、ホテル政府と揶揄された中華民国維新政府など、その統治能力のなさを印象づける話が多いが、汪兆銘政権が日本から治外法権撤廃を勝ち取った点など肯定的な評価もなされている。有象無象と言っては失礼かもしれないが、当時の中国人にとってのこれらの政権の存在感がどの程度のものだったのかも気になる。
読了日:12月09日 著者:広中 一成

女のキリスト教史: 「もう一つのフェミニズム」の系譜 (ちくま新書 (1459))女のキリスト教史: 「もう一つのフェミニズム」の系譜 (ちくま新書 (1459))感想
キリスト教の確立に果たした女性の役割、あるいは女性にとってのキリスト教について語る。受胎告知の時点から能動的で毅然とした態度だった聖母マリア、イエスに党派性を乗り越えさせたカナンの女、歴代女性が指導者となり、フランス革命にあっても犠牲者を出すことなく閉鎖できたフォントヴロー修道院の話が印象的。キリスト教国家の指導者が難民の受け入れを説くのは、イエスの一家が難民家族だったからという話からは、「東西南北の人」孔子が開いた儒教の採るべき役割を示唆するかのようでもある。
読了日:12月13日 著者:竹下 節子

AIの時代と法 (岩波新書 新赤版 1809)AIの時代と法 (岩波新書 新赤版 1809)感想
AIの時代の到来を目の前にして、どのような面に法の不備があるかについてまとめているが、著者自身も述べているように、AIを題材にした法学入門という趣が強い。個人データの蓄積と活用を「資源ナショナリズム」に重ねて見る点、技術的な規格が法とは無関係にルールを作ってしまうという「コードが法に代わる」という発想の部分を面白く読んだ。スピード制限取り締まるプログラム作成の話は、技術者にも人間・社会に対する哲学が必要なことを教えてくれる。
読了日:12月16日 著者:小塚 荘一郎

公家源氏―王権を支えた名族 (中公新書 (2573))公家源氏―王権を支えた名族 (中公新書 (2573))感想
嵯峨源氏に始まる各系統の賜姓源氏の軌跡。初代は大臣・議政官となることができても、二代目、三代目と世代を経るごとに露骨に没落していく源氏たち。そんな中で摂関家と結びついた村上源氏の師房の系統が朝堂で生き延びていく。源氏の主だった人々、女性たち、僧となった人々を連ねた第四章は圧巻。
読了日:12月19日 著者:倉本 一宏

中世の罪と罰 (講談社学術文庫)中世の罪と罰 (講談社学術文庫)感想
日本中世史の専門家が耳切り鼻削ぎ、夜討ちといったキーワードやテーマから中世人の法意識を探っていくという趣向だが、「お前の母さん出べそ」と中国の「他妈的」、日本の死骸敵対と西欧の棺桶裁判、あるいは日本の中でも古代と中世とのつながりなど、比較の視点が面白い。逆に中国史など日本の外の側からも「罪と罰」に関してもう少し掘り下げができるのではないかという気になってくる。
読了日:12月21日 著者:網野 善彦,石井 進,笠松 宏至,勝俣 鎭夫

古関裕而-流行作曲家と激動の昭和 (中公新書)古関裕而-流行作曲家と激動の昭和 (中公新書)感想
来季の朝ドラ主人公のモデルとなった人物の評伝だが、ナチュラルに戦時体制に乗っかり、戦時歌謡でヒット曲を飛ばした、むしろその楽曲が戦争とは無関係な映画主題歌などには適していなかったと評される古関を朝ドラでどう描くつもりなのか、今から不安になってくる。なかなかヒットに恵まれなかった若い頃や戦後の歩みは朝ドラ向きではあるが…
読了日:12月23日 著者:刑部 芳則

知りたくなる韓国知りたくなる韓国感想
ヘイト本、偏見にまみれた本に埋め尽くされている韓国本の中にあって、比較的穏当な内容。取り上げている話題もよくある植民地時代までの歴史、歴史問題、日韓関係だけでなく、現代史、政治(大統領と首相との関係、強い司法の力など)、経済、家族のあり方、K-POP、教育制度、年中行事、兵役問題など、幅広い。
読了日:12月26日 著者:新城 道彦,浅羽 祐樹,金 香男,春木 育美

水墨画入門 (岩波新書)水墨画入門 (岩波新書)感想
語り口が軽く、入門書として取っつきやすい。筆と墨で描いたものは何でも水墨画なのか?中国から伝来する以前に日本に水墨画は存在しなかったか?書と画との境界は?という本質論的な議論がおもしろい。第3章で紙水墨の科学分析的な話を展開しているのは今風かもしれない。水墨画とは何かという疑問から、更に何が芸術なのかという疑問に発展させてくれる書となっている。
読了日:12月29日 著者:島尾 新


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