哲学入門 (ちくま新書)の
感想何となく青空文庫に転がっていた三木清の『哲学入門』に手を出してみて、「これはアカン」と放棄して、次に手に取ったのが本書。こちらは語り口は取っつきやすいが内容は手強い。哲学入門というよりは、科学哲学的な視点からの哲学入門と言うべきか。今の時代に即した新しさを感じさせる入門書にはなっていると思う。読了日:02月03日 著者:
戸田山 和久
英語の帝国 ある島国の言語の1500年史 (講談社選書メチエ)の
感想英語圏の広がりの歴史をイングランドによるウェールズの征服から説き起こす。各段階の植民地での英語の受け入れ方が、常に現地人の側から自発的に子供達の栄達のために現地語ではなく英語での学校教育を求めるという形をとること、そしてネイティブによる英語教育と、英語を現地語ではなく英語で教えるという手法が重視されることを、今の日本の英語教育の状況と重ねる。前近代の日本では漢文の素養を求められることはあっても、ネイティブによる教育や、中国語の発音に習熟することは求められなかったと思うが…読了日:02月06日 著者:
平田 雅博
知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)の
感想日本大学文理学部に属する18学科の各分野のさわりを集めたもの。哲学・史学・社会福祉学・教育学・体育学・地球科学・生命科学等々、それぞれの分野が「こういう発想でこういうことに取り組む学問です」というのをちゃんと提示できていると思う。無論各講の内容自体にも面白いものが多いが、試み自体を評価したい本。読了日:02月10日 著者:
平安京はいらなかった: 古代の夢を喰らう中世 (歴史文化ライブラリー)の
感想唐の長安をもとに設計された平安京が、日本の朝廷や住民にとっていかにオーバーサイズで持て余していたか、それをどう適切な規模へとダウンサイジングしていったかを追う。平安京を日本が「小中華」をめざした時代の夢の跡ととらえているわけである。古代の都の都城プランに注目した研究は数あるが、プランと現実との乖離に注目した点が新しい。ただ、平安京を「未完の都城」と見た場合、古今東西厳密な意味でプラン通りに完成された都は果たして存在したのかという疑問もないわけではないが…読了日:02月13日 著者:
桃崎 有一郎
ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書)の
感想二月革命から十月革命に至るまでの臨時政府の動きを中心に描く。時に首相の辞表を残して行方をくらましたというケレンスキーのアレっぷりと(彼は十月革命後も生き延びて、1970年にニューヨークで89歳にて没したそうな)、第5章に描かれるロシアとポーランド・フィンランド・ウクライナとの距離感の違いを面白く読んだ。読了日:02月15日 著者:
池田 嘉郎
日本の古代国家 (岩波文庫)の
感想いわゆる「マルクス主義」の立場からの古代国家像。以下、門外漢による勝手な印象だが、東アジア史の文脈から日本の古代国家をとらえ直そうとしているのは、現在の視点からも新鮮。(おそらく「東洋的専制」の文脈からの着想なんだろうが…)そして特に第四章では、文化人類学の視点から古代国家をとらえようと試みている。著者はヨーロッパ留学時に文化人類学の勉強に没頭したということだが、中国の古史研究でも文化人類学的な視点からの研究が試みられてきており、同時進行的に同じような手法が模索されていたという点で興味深い。読了日:02月16日 著者:
石母田 正
紅霞後宮物語 (富士見L文庫)の
感想新聞広告に釣られて購入。女性が兵士・軍人になることができて、それがうっかり皇后に引き上げられてしまうという世界観や展開は、昨今中国で流行りのネット小説原作時代劇を思わせる。中国の関係者の目に止まればドラマ化もあり得るのではないかと思う。かつての『中華一番』のように、中国人(あるいは台湾なども含めた中華圏の人々)の感性に合いそうな作品を出してきたという点を高く評価したい。読了日:02月17日 著者:
雪村花菜
長安の都市計画 (講談社選書メチエ (223))の
感想『平安京はいらなかった』で問題となっていた都城プランと実態との乖離について、そしたら平安京のモデルとなった唐代の長安ではそのあたりどうだったのかということで読んでみた。『平安京~』とは違って、さすがに都市のダウンサイジングとか住民自身による破壊という話は出てこなかったが、理念的な「宇宙の都」から「生活の都」へと転換していくさまが第三章でまとめられており、面白く読んだ。読了日:02月19日 著者:
妹尾 達彦
聖徳太子: 実像と伝説の間の
感想ブログ「聖徳太子研究の最前線」の筆者による著書。大山誠一氏らによる聖徳太子虚構説への批判や、最近話題になった「厩戸王」という呼称の問題点についても触れている。読みどころは『日本書紀』などの関連史料の出典を仏典から洗い出す手法。『日本書紀』の記述の出典探しはやり尽くされたと思っていたが、本書によるとまだまだ研究の余地が残されているようだ。読了日:02月21日 著者:
石井 公成
楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)の
感想東京五輪エンブレム騒動、面白い恋人、個人で商標を大量出願する元弁理士など、最近の話題を題材にして著作権・商標権・特許権といった知的財産権について解説。企業によるトラブル回避のテクニックや、「公序良俗に反していること」が現行の法律では規制できない不当な行為を排除する伝家の宝刀となっているという指摘が面白い。読了日:02月24日 著者:
稲穂 健市
東アジアの王権と思想 増補新装版の
感想同じ著者による概説『日本政治思想史[十七~十九世紀]』の基礎となった緒論考を収録。蘭学が中国を相対化させたまでは良かったが、中国を「支那」として蔑視するきっかけとなったという指摘は何度読んでも暗澹とさせられる。また、日本人が儒学的な枠組みで西洋文明を受け入れ、西洋が新たな「中華」となったということで、「西洋化」とはある意味「中国化」であったとも指摘しているが、日本がめざしているのは結局「小中華」にすぎないのかと思った。読了日:02月26日 著者:
渡辺 浩
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