中国史SF短篇集-移動迷宮 (単行本)の感想
今までのアンソロジーでもタイムスリップ物など歴史に関係する作品を面白く読んできたので、待ってましたという短編集。やはりタイムスリップに関係する作品が多いが、「時の祝福」は魯迅小説のパロディとしても面白い。中国古代にコーヒーが存在したらという「南方に嘉蘇あり」もパロディとして秀逸。作者の衒学趣味が良い方向に作用している。最終篇となる「永夏の夢」は不思議な味わいの作品。
読了日:07月02日 著者:
魔道祖師 3 (ダリアシリーズユニ)の感想
今回は温寧、温情、阿苑と温氏巻。温寧、温情はドラマでは序盤から登場するが、原作ではここで初登場。しかしキャラクターの印象は強い。阿苑についても出会いと、思追が阿苑なのではないかという示唆が同時に描かれることで、より効果的になっているように感じる。
読了日:07月05日 著者:墨香銅臭
藤原仲麻呂-古代王権を動かした異能の政治家 (中公新書 2648)の感想
藤原仲麻呂と言えば政権を握った全盛期以後の印象しかないが、算術による実務能力が評価された点、兄豊成への対抗意識、人生の要所要所で影響した疫病の流行、橘奈良麻呂の変の鎮圧など、前半生についても詳述。仲麻呂の乱は、淳仁天皇に対する孝謙上皇のクーデタの側面が強いということで、「孝謙上皇の乱」と位置づけている。最後に仲麻呂の残した歴史的な影響をまとめているのも良い。
読了日:07月07日 著者:仁藤 敦史
中国共産党、その百年 (筑摩選書)の感想
党成立以前に存在した同名の政党から新型コロナまでの中国共産党の歴史。党国体制のもとで党の歴史はかなりの程度国家の歴史と重なると言いつつも、今時の若者の党に対する見方など、党の歴史ならではのトピックが詰め込まれている。大冊だけあって、本筋をちゃんと押さえつつ散漫にならない程度に余談的な話も面白く読めるようになっている。基本的な知識と豆知識的なことと両方身につけられる良書。
読了日:07月11日 著者:石川 禎浩
図説 明治政府の感想
内閣制度以前の太政官制の時期の各機関についても詳述されているのがよい。正院や右院、あるいは岩倉使節団派遣時の留守政府の約定書など、個別のトピックで所々近年の理解がまとめられている。
読了日:07月14日 著者:久保田哲
近代アジアの啓蒙思想家 (講談社選書メチエ)の感想
「一身にして二生を経」たアジア各地の啓蒙思想家たちと、少しずつ似ていて少しずつ違う各国の近代化。最後に語られる、著者が「ユニーク」と表現する日本の立ち位置が印象的である。アジアの一員でありながら西欧植民地国側の一員でもあったという矛盾は、現在の思想や国際関係にも大きな影響を及ぼしているのかもしれない。
読了日:07月16日 著者:岩崎 育夫
志士から英霊へ: 尊王攘夷と中華思想 (犀の教室Liberal Arts Lab)の感想
著者のエッセー、論文等を収録したものだが、近年大河ドラマで注目された西郷隆盛と吉田松陰を取っかかりに尊王攘夷思想、水戸学、太平記、そして中国での朱子学・陽明学に関する諸問題へと及んでいく。特に1章は著者久々の大河本としての性質も兼ねているが、尊王攘夷、水戸学と無縁どころか大いに関わりのある今年の大河を肴に続編を書いて欲しいところである。
読了日:07月18日 著者:小島 毅
徳川忠長: 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇 (歴史文化ライブラリー 527)の感想
家光と忠長の関係は巷間に言われてるほど悪いものではなく、むしろ良好だったと見られるが、忠長の乱行は幼少期に両親に偏愛されたこととその後の状況とのギャップ、そして異母弟正之の出現が影響しているのではないかとのこと。家光は最後まで弟の改悛を望んでいたが、秀忠死後の政治状況の不安定さもあり、悲劇的な結末となったとする。忠長像というより家光像をやや塗り替えたという印象を受けた。
読了日:07月20日 著者:小池 進
中先代の乱-北条時行、鎌倉幕府再興の夢 (中公新書 2653)の感想
一時的にでも鎌倉を押さえたというのはかなり強いインパクトを与えたのだなという印象。中先代の乱以外の、幕府滅亡後の北条氏残党による蜂起についてもまとめられており、高時の弟泰家の動向も押さえてある。乱の位置づけは単なる鎌倉幕府再興運動というよりも、建武政権に対する武士の不満を具現化したものと位置づけており、その他の残党の反乱も同様の性質を持っていたとする。旧時代の主役たちも新時代の過渡期にあってはまだまだ担うべき役割があったようだ。
読了日:07月21日 著者:鈴木 由美
妻と娘の唐宋時代 (東方選書)の感想
唐宋時代の女性の地位は?時代の移り変わりによる変化は?夫婦や家族の関係は?家族の構成や人口比?こうした問題を小説、判決文、戸籍類など多彩な史料から探り出していく。ジェンダー論としても史料論としても読むことが出来る。本来そういう用途のために書かれたものではない史料から女性のあり方について読み解いていく試みは研究の参考になるだろう。
読了日:07月23日 著者:大澤 正昭
米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界 (中公新書 2650)の感想
この手のテーマでは中国側に主軸を置き、中国に批判的に解説するというパターンが多いが、こちらは逆にアメリカ側に主軸を置き、アメリカに批判的な視点もある。ただ、中国側が改革の意思を示せば評価したというのは、欧米の中国観が甘かったというよりも、改革という行為を過大に評価する当時の「改革病」の現れではないかと思う。対中支援によって中国が期待通りの方向に進んでいくはずという見方についても、アメリカの傲慢さの現れという批判も可能だろう(例えば子育てなんかでも、子どもは親の都合や期待通りに育ってくれるわけではない)。
読了日:07月26日 著者:佐橋 亮
悪童たち 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
上下巻まとめての感想。上巻から主役の朱朝陽少年に感情移入できそうな感じで話が進められていくが、ラストで示唆されることからすると、彼は友人たちをどう思っていたのか?丁浩、夏月普の残る2人の子どもたちについても二面性が示唆されている。社会派ミステリという触れ込みで、孤児たちや片親家庭の境遇などそういう要素も確かにあるのだが、心理面の問題の方が印象に残る。
読了日:07月29日 著者:紫金陳
今までのアンソロジーでもタイムスリップ物など歴史に関係する作品を面白く読んできたので、待ってましたという短編集。やはりタイムスリップに関係する作品が多いが、「時の祝福」は魯迅小説のパロディとしても面白い。中国古代にコーヒーが存在したらという「南方に嘉蘇あり」もパロディとして秀逸。作者の衒学趣味が良い方向に作用している。最終篇となる「永夏の夢」は不思議な味わいの作品。
読了日:07月02日 著者:
魔道祖師 3 (ダリアシリーズユニ)の感想
今回は温寧、温情、阿苑と温氏巻。温寧、温情はドラマでは序盤から登場するが、原作ではここで初登場。しかしキャラクターの印象は強い。阿苑についても出会いと、思追が阿苑なのではないかという示唆が同時に描かれることで、より効果的になっているように感じる。
読了日:07月05日 著者:墨香銅臭
藤原仲麻呂-古代王権を動かした異能の政治家 (中公新書 2648)の感想
藤原仲麻呂と言えば政権を握った全盛期以後の印象しかないが、算術による実務能力が評価された点、兄豊成への対抗意識、人生の要所要所で影響した疫病の流行、橘奈良麻呂の変の鎮圧など、前半生についても詳述。仲麻呂の乱は、淳仁天皇に対する孝謙上皇のクーデタの側面が強いということで、「孝謙上皇の乱」と位置づけている。最後に仲麻呂の残した歴史的な影響をまとめているのも良い。
読了日:07月07日 著者:仁藤 敦史
中国共産党、その百年 (筑摩選書)の感想
党成立以前に存在した同名の政党から新型コロナまでの中国共産党の歴史。党国体制のもとで党の歴史はかなりの程度国家の歴史と重なると言いつつも、今時の若者の党に対する見方など、党の歴史ならではのトピックが詰め込まれている。大冊だけあって、本筋をちゃんと押さえつつ散漫にならない程度に余談的な話も面白く読めるようになっている。基本的な知識と豆知識的なことと両方身につけられる良書。
読了日:07月11日 著者:石川 禎浩
図説 明治政府の感想
内閣制度以前の太政官制の時期の各機関についても詳述されているのがよい。正院や右院、あるいは岩倉使節団派遣時の留守政府の約定書など、個別のトピックで所々近年の理解がまとめられている。
読了日:07月14日 著者:久保田哲
近代アジアの啓蒙思想家 (講談社選書メチエ)の感想
「一身にして二生を経」たアジア各地の啓蒙思想家たちと、少しずつ似ていて少しずつ違う各国の近代化。最後に語られる、著者が「ユニーク」と表現する日本の立ち位置が印象的である。アジアの一員でありながら西欧植民地国側の一員でもあったという矛盾は、現在の思想や国際関係にも大きな影響を及ぼしているのかもしれない。
読了日:07月16日 著者:岩崎 育夫
志士から英霊へ: 尊王攘夷と中華思想 (犀の教室Liberal Arts Lab)の感想
著者のエッセー、論文等を収録したものだが、近年大河ドラマで注目された西郷隆盛と吉田松陰を取っかかりに尊王攘夷思想、水戸学、太平記、そして中国での朱子学・陽明学に関する諸問題へと及んでいく。特に1章は著者久々の大河本としての性質も兼ねているが、尊王攘夷、水戸学と無縁どころか大いに関わりのある今年の大河を肴に続編を書いて欲しいところである。
読了日:07月18日 著者:小島 毅
徳川忠長: 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇 (歴史文化ライブラリー 527)の感想
家光と忠長の関係は巷間に言われてるほど悪いものではなく、むしろ良好だったと見られるが、忠長の乱行は幼少期に両親に偏愛されたこととその後の状況とのギャップ、そして異母弟正之の出現が影響しているのではないかとのこと。家光は最後まで弟の改悛を望んでいたが、秀忠死後の政治状況の不安定さもあり、悲劇的な結末となったとする。忠長像というより家光像をやや塗り替えたという印象を受けた。
読了日:07月20日 著者:小池 進
中先代の乱-北条時行、鎌倉幕府再興の夢 (中公新書 2653)の感想
一時的にでも鎌倉を押さえたというのはかなり強いインパクトを与えたのだなという印象。中先代の乱以外の、幕府滅亡後の北条氏残党による蜂起についてもまとめられており、高時の弟泰家の動向も押さえてある。乱の位置づけは単なる鎌倉幕府再興運動というよりも、建武政権に対する武士の不満を具現化したものと位置づけており、その他の残党の反乱も同様の性質を持っていたとする。旧時代の主役たちも新時代の過渡期にあってはまだまだ担うべき役割があったようだ。
読了日:07月21日 著者:鈴木 由美
妻と娘の唐宋時代 (東方選書)の感想
唐宋時代の女性の地位は?時代の移り変わりによる変化は?夫婦や家族の関係は?家族の構成や人口比?こうした問題を小説、判決文、戸籍類など多彩な史料から探り出していく。ジェンダー論としても史料論としても読むことが出来る。本来そういう用途のために書かれたものではない史料から女性のあり方について読み解いていく試みは研究の参考になるだろう。
読了日:07月23日 著者:大澤 正昭
米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界 (中公新書 2650)の感想
この手のテーマでは中国側に主軸を置き、中国に批判的に解説するというパターンが多いが、こちらは逆にアメリカ側に主軸を置き、アメリカに批判的な視点もある。ただ、中国側が改革の意思を示せば評価したというのは、欧米の中国観が甘かったというよりも、改革という行為を過大に評価する当時の「改革病」の現れではないかと思う。対中支援によって中国が期待通りの方向に進んでいくはずという見方についても、アメリカの傲慢さの現れという批判も可能だろう(例えば子育てなんかでも、子どもは親の都合や期待通りに育ってくれるわけではない)。
読了日:07月26日 著者:佐橋 亮
悪童たち 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
上下巻まとめての感想。上巻から主役の朱朝陽少年に感情移入できそうな感じで話が進められていくが、ラストで示唆されることからすると、彼は友人たちをどう思っていたのか?丁浩、夏月普の残る2人の子どもたちについても二面性が示唆されている。社会派ミステリという触れ込みで、孤児たちや片親家庭の境遇などそういう要素も確かにあるのだが、心理面の問題の方が印象に残る。
読了日:07月29日 著者:紫金陳
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