信州生坂村「山紫水明 食と文化癒しの郷!」

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全国治水砂防協会北陸信越地区支部長・参与視察研修

2022年10月14日 | 私の活動報告

 12日(水)午前8時30分に宿泊先のホテルを出発し、最初に白馬村北條の「倉下地すべり」を視察に行き、姫川砂防事務所江守所長はじめ職員各位から説明をしていただきました。

 倉下地すべりは、長野県北安曇郡白馬村に位置し、この斜面は通称「どんぐり村」と呼ばれ、ペンション及び別荘として利用・開発されています。

 地すべり活動による変状は、平成2年頃から確認されましたが、平成7年に建設省松本砂防工事事務所が松川護岸の変状原因を調査したところ、地すべりによるものであることが判明し、その後、平成10年3月21日の58mm/日の降雨とそれに伴う融雪水によって地すべり活動が大きくなり、「災害関連緊急地すべり対策事業」として、地下水排除工を主体とした地すべり対策工が採択されました。

 倉下地すべりの概要は、幅800m、奥行き800mで、地すべりの頭部に幅40m、長さ150m、落差20mに達する陥没帯を形成する大規模な地すべりでした。

 末端が姫川の支流の松川に接し、側部及び頭部を急崖に囲まれる。末端急崖上部は平均15°の緩斜面からなる地すべり地形を呈して、本地域の地すべりは、分布および活動年代からA~Eの5ブロックに分けられていました。

 現在、最も活発に活動しているのはAブロックであり、その規模は幅300m・奥行き700m・最大地すべり層厚60mと推定され、地質調査によって、地すべり地内の溶結凝灰岩層の分布は、Aブロックとほぼ一致し、溶結凝灰岩層が主な地すべり土塊になっていることが明らかになっています。

 倉下地すべりの対策工の「地下水排除工」は、排水トンネルによる方法が最も効果的であると考え、トンネル内にはボーリング室を設け、集水ボーリングにより、貯留される被圧地下水を排除して、トンネルの掘削方法としては、従来のライナープレートより覆工による緩みが少ない、NATM工法による掘削を選定し、これにより排水トンネル上部のペンション・別荘への影響を最小限に抑えることができている。

 地下水排除工の施工に伴って、実際のAブロックの地すべり変動は、伸縮計で見れば、地下水排除工施工前の変動には、融雪・梅雨による活動期、その他の時期の休止期を繰り返す傾向が認められたが、施工が開始されて以降、変位速度の鈍化が認められ、変位速度の変化は、地下水位の低下が認められ始めた時期とほぼ一致し、地下水排除工により、地すべり活動は終息化へ向かっていると考えられるとのことでした。

 次は白馬村の平川流路工と源太郎砂防堰堤に行き、国土交通省 北陸地方整備局 松本砂防事務所 宮島副所長と職員各位に説明していただきました。

 平川は姫川の上流域にあり、北アルプスの唐松岳、五龍岳を水源として、急流河川で土砂の流出も激しく、たびたび多量の土砂流出による被害をもたらし、特に昭和34年の伊勢湾台風では甚大な被害に見舞われたため、昭和37年から国による直轄砂防事業が開始され、平成2年までの20数年の歳月を掛け整備されてきました。

 平川扇状地は昭和29年より別荘地の分譲が始まり、現在では多くの別荘や、ペンション、スポーツ施設などが整備されていて、その土砂の影響により下流部には大扇状地が形成されていることから、土砂流出の対策としては砂防堰堤の河床の安定、流路の固定、洪水防止などの工事を実施されてきました。

 源太郎砂防堰堤は、昭和7年に農業振興事業として堰堤(H=5m、石張り玉石コンクリート)を築造、その後、昭和9年の被災により前堰堤を副堰堤として上流堆砂面上に新堰(H=6m)築堤、昭和26年に2m嵩上げ、昭和38年に調節機能向上を期し、上流堆砂面に本堰堤(H=8m)、副堰堤下流に第2副堰堤を築造するなど、幾たびも改善を重ね現在に至っていました。

 そして現在も源太郎砂防ダムは、上流ダム群の基礎保全と下流の流路工の安定確保等の地域防災の要としての機能を果たしているとのことでした。

 私の友人のお父さんで、白馬村長を4期16年間務められた横沢裕さんが言われた「はじめに砂防ありき」とは、「白馬村の歴史をみたとき、絶えず発展の前に砂防事業が行われてきたことを忘れてはいけない」という思いが記されているとのことです。

 この記念碑は平川源太郎砂防堰堤脇の石碑で、平川流路工第一期計画完了を記念して平成3年に建立されたものであり、防災・減災、国土強靱化の対策事業の中で、砂防堰堤のように誰もが見ることのできないような山の中で、どっしりと大地を守ってくれている姿を、多くの皆さん知っていただきたいと思いました。

 最後は、長野市篠ノ井小松原の地すべり対策工事現場に行き、土尻川砂防事務所 倉田所長はじめ関係各位に説明していただきました。

 令和3年7月6日早朝に長野市篠ノ井小松原地区において大規模な地すべりが発生し、地すべりの大きさは幅約150m、長さ約240m、深さ平均15m(最大26m)で移動土塊量は概ね42万m3と大規模な地すべりとなりました。

 その対策工事として、排土工の施工状況は、地すべりの滑動を抑えるため、地すべり頭部の土を取り除いていて、9月末までに23,000㎥の排土が完了しました。

 また、地すべりの要因となる地下水を速やかに排除するため、集⽔井3基、集⽔ボーリング62本を施工し、今年5月末で完成しました。

 9月初旬から始まった鋼管杭工施工状況は、地すべりの滑動を抑えるため、地すべり土塊に鋼管杭を打設して、直径1.0m 、長さ25.0 ~34.5m の鋼管杭54本を地すべり土塊に打設するとのことで、鋼管杭は運搬可能な長さ(3~5分割)で工場製作し、現場で溶接継ぎをしていました。

 この鋼管杭の打設方法のジャイロプレス工法は、圧入工法の優位性を確保した圧入機に回転機能を付加した新圧入機「ジャイロパイラー」を用いて、施工が完了した杭を反力としながら、杭の頭部を自走して先端ビット付鋼管杭を順次回転圧入する工法です。

 杭先端特殊ビットにより地盤を回転掘削する施工法により、排土量を抑制し、環境に優しい施工を実現していて、大規模な地すべりのため工事完成までに数年かかる見込ですが、地域の安全・安心のため、早期の完成を目指していました。

 視察研修の対応をしていただいた関係の皆さんには、3箇所の視察させていただき色々と勉強になり御礼申し上げますとともに、長野県建設部砂防課の皆さんはじめ関係各位には、2日間大変お世話になりましたことに感謝申し上げます。



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