はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

出口治明さんの提案

2021年11月13日 | 
2021/11/13

『早く絶版になってほしい #駄言辞典』というおもしろい本を読んでいます。
これはジェンダーの本なんです。

 

この本のなかに、ライフネット生命創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏のインタビューが載っています。

出口氏はご存知の方も多いと思いますが、1948年生まれの73歳。
京都大学法学部卒業後、日本生命に入社して、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年、58歳の時に同社を退職 。
同年、生命保険準備会社であるライフネット企画株式会社を設立。
2018年に立命館アジア太平洋大学第四代学長に就任しました。

これが大変に興味深かったので、ここに書いておきたいと思います。

出口さんはいわゆるエリートサラリーマンで勝ち組男性。
どこが困っている?変わらなくてもいいじゃない、と思いそうな立場ですが、考え方がとても柔軟なんです。高度成長期のサラリーマン人生を経験しているからこそ、なおのこと説得力がありますよね。

教えられることが多かったです。

インタビュー記事を要約したものを、記しておきます。

・・・・・

なぜジェンダー問題の解決が重要になっているのか(p.219 )

平成の30年間を3つの数字からチェックすると、その理由が浮かび上がってくる。

1.日本の世界におけるGDP(国内総生産)シェアは、9%から4%へ半分以下に落ちた。
2.スイスのビジネススクールMDが発表する国際競争力では、日本はトップから30位に落ちた。
3.平成元年の世界のトップ企業20社のうち14社は日本企業だったが、平成30年には0社になった。

この理由は、米IT大手4社のGAFAや中国IT大手3社BATに象徴される新しい産業を日本が生み出せなかったからだ。

その一番のキーワードが「女性」だ。  

30年前の日本は製造業が中心だったが、今の日本をけん引しているのはサービス産業。サービス産業のユーザーは、全世界でどんな統計の取り方をしても6~7割が女性なのに、供給サイドである企業幹部には男性しかいない。

もっと簡単に言えば、日本経済をけん引していると自負している50∼60代のオジサンに女性の欲しいものがわかるかどうかという問題。つまり需要と供給のミスマッチという問題が深刻なのだ。

・・・ここからは歴史のお話

日本の歴史を振り返ると、実は女性が強い国。

日本という国号ができたのは文書で明らかになっているのは701(689)年。天皇という称号もこの時にできた。この国を象徴する日本という名前、天皇という称号を作ったのは女性の持統天皇。

日本の天皇家は男系だと一部の人は言っているが、天皇家の祖先とされるのは天照(あまてらす)で、こちらも女性。

江戸時代まで女性は権力があったが、明治維新から男尊女卑が始まった。

誰もが納得する英雄が日本にはいなかったので、天皇制をコアにし、日本国民は全員天皇の赤子であるとし、日本の神道には全くその理論がなかったので、朱子学のロジックを借りてきて、天皇制を作った。朱子学は男尊女卑で有名。(P.224)

『天皇と儒教思想 伝統はいかにつくられたのか?』(光文社新書)に詳しい。

 
明治時代に国民国家をつくるために朱子学のロジックを借りてつくられたものが、日本における男尊女卑の根本原因です。

「日本の天皇陛下は米を植え、皇后は蚕を飼われる」というが、江戸時代以前の天皇陛下、皇后陛下を見ると、誰一人、米を植えたり蚕を飼ったりしていません。

元来、日本は夫婦別姓の国。源頼朝の妻は北条政子です。
OECDに加盟する37か国のうちで、法律婚の条件で夫婦同姓を強制しているのは日本だけです。

戦後日本は国を復興するため、製造業の工場モデルに過剰適応した。製造業は24時間操業が理想。男性の長時間労働が生まれた。

1万年前、ホモサピエンスの群は男も女も森に入っていかなければご飯が食べられなかったので、赤ちゃんは一か所に集めて保育された。
ホモサピエンスは集団保育で社会性を養ってきた生き物、子どもを保育園に預けるのは当たり前なのだ。

男は鹿やマンモス狩りに出かけ、女はハチミツや木の実を探しに出かける。
鹿やマンモスはそれほど頻繁にとれるわけではないので、移住時代のホモサピエンスの食料の6割は女性が集めてきたものだったのだ。

知識は力なので、やはりジェンダー問題を考えるときには、こういう構造問題を考えなくてはなりません。 (P.226)

・・・ここからは科学的な話。

脳研究者である池谷裕二さんは『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)という本の中で、男性は赤ちゃんの面倒を見ることによってオキシトシンが出て、家族愛を抱くと説明しています。

 

だから僕は、男性も育児休暇を取って最低でも1~2ヶ月は赤ちゃんの面倒を見るべきだと考えています。
男性に育児休暇を取らせるというのは、男女平等だとか、そういう話ではなくて、男性が家族愛をはぐぐむために不可欠だというサイエンスがベースになっているのです。

(私の感想:このことは先日もNHKスペシャル「ジェンダーサイエンス」でやってましたね)

ジェンダーやインクルージョンを理解するためには、このように歴史的、科学的なエビデンスをベースに考えなくてはなりません。

駄言がなぜ生まれるか。僕に言わせれば、その理由は「不勉強」に尽きます。

ライフネット生命では、男性社員もだいたい3か月は育児休暇を取得していました。

個人差は性差を超える」が大前提。男性の強み、女性の強みもない。間違った考え方です。

米国の優れたIT企業では、人事部のデータには、性別も年齢も国籍も一切書かれていません。人事を検討する際には、今何をやっているのか、過去にどんなことをやってきたのか、将来、何をしたいのか―この3つで判断しているのです。

高度成長期の日本の会社員がやってきた、「メシ、風呂、寝る」を繰り返す毎日を一刻も早く脱却して勉強しなければ、日本の社会や経済はダメになってしまいます。

僕がいつも提案していることを実践してください。

・1日の労働時間を2時間×3の塊にして 
休み時間もしっかり取る
・「人・本・旅」を大事に生活すること

・・・・・ 要約はここまで


上のように、2時間を3つの塊にすると、2時間ごとにいったんリセットできて、心身ともにリフレッシュするでしょうから、よいアイディアですね。

日本の国力が令和に入ってどんどん落ちていっているとは、最近よく耳にします。数年前までは実感がなかったけれど、データで示されると、ああ、やはりそうなんだと納得します。

世界でトップクラスにあった日本の所得水準は、今では上位20位のランキング外に落ちているそうです。 実質労働賃金も2017年では、日本の100に対して、アメリカは133、イギリス114、ドイツ178となっている。先進国のいずれとも格差は拡大しています。
 
「人・本・旅」を大事に生活することは私も同感です。人も本も旅も好きですし、人生の楽しみはこの3つから得られると思っています。







コメント
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