2023/09/07
伊藤比呂美さんの『道行や』を読んで
おもしろかったので
次には『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』と
『たそがれてゆく子さん』を読みました。
この2冊は伊藤比呂美さんの
たどってきた暮らしぶりをそのまま書いた
エッセー、詩といってもいいでしょう。
『とげぬき新巣鴨地蔵縁起』は
2007年出版の本です。
実はこの本はずっと前に
図書館で手に取ったことがありました。
街の歴史本か案内書と思ったのですが
そうではなかったので、棚に戻しました。
そして先日『道行や』を読んで
この人はおもしろい。
もっと読みたいと感じて読み始めたのでした。
伊藤さんの文体とか考え方がわかってきて
これはこれで、自分とは違う新しいものの見方
別の女の人生を知ることになる。
つまり学びがあると思いました。
今でも4のつく日の巣鴨の「とげ抜き」は
お参りに来る人でごった返します。
露店が立ち並ぶので
ますます道が狭くなります。
これは普段の日
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/d0/81e38d69b04507b4d9cce44cd2e2534e.jpg)
私も初めて行ったとき
巣鴨地蔵通りの縁日のにぎやかさには
びっくりしたものです。
びっくりしたものです。
ここにお参りに来るのは
信心なのか、縁日には来る習慣なのか
私にはよくわかりませんでした。
本を読んでみて、昔の女性たちが
病や苦しみや不幸があって
自分ではどうにもならない時に
そのとげを抜いてもらいに
「とげ抜き」に来るのだということが
書いてあって
切実な思いで来る人がいることに
納得がいったのでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/83/78f3516da49c9fc957556464607975c9.jpg)
もちろん、ここに来る人すべてが
信心のためではないこともわかります。
楽しげに通りをそぞろ歩き
店を眺め、お土産を買い
ランチをして帰っていく人々もいるのです。
さて話を本に戻して。
熊本で寝たきりの母の介護、父の相手
体の大きい、気難しい外国人夫の介護
思春期の娘の子育ての問題と
犬の世話と
あらゆる問題が同時並行的に起こって
著者は熊本とカリフォルニアを
行き来します。
その大変さ。
数々の苦を救ってもらうために
昔、母や祖母に連れられて来たように
とげ抜きに来たのでした。
そして生者はいつしか去っていく。
『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』の続きは
『たそがれてゆく子さん』。
苦が抜けたあとには楽が待っていると思いきや
ぽっかり喪失感が漂う。
夫任せだった
アメリカの家を維持していく問題。
娘たちも結婚をした。
年を取ってたそがれていく自分の身。
苦しいけれど立ち向かっていく姿。
深刻になりそうだけれど
あけっぴろげに生きる姿がたくましい。