2024/03/11
東日本大震災から13年。
毎年この日は特別な思いを持って
あの日のことを思い出します。
もう何度も書いたので
あの日をどう過ごしたのか書かないけれど
今年は元旦に能登半島地震があり
それからずっと自然災害のことは
否応なく意識しながら暮らしてきました。
最近読んだ本です。
天童荒太著『ムーンナイトダイバー』
天童荒太さんの作品は好きで
『永遠の仔』、『悼む人』には
このような題材で作品を書く人がいる
ということに驚き、感銘を受けたものです。
心の傷を受けている人々を書くというのは
『ムーンナイトダイバー』も同じです。
津波に流されて海に沈んだ遺品を
フクシマの立入禁止の海域で
秘密裡に回収を行うダイバー。
人目を避けて月明りを頼りに夜の海に
潜るのだった。
美しい女・透子に惹かれるダイバー舟作。
性愛・恋愛部分は読者を楽しませるための
お楽しみ部分かと思いましたが
生きるということは愛することなのだと
悟りました。
海の中が死者たちの世界ならば
海の中が死者たちの世界ならば
地上は生者の世界であり
愛の行為は生きている人間の証なのだと
伝えているようでした。
暗い夜の海は黄泉の国なのです。
海に沈んだ遺品を拾いに潜る話で
震災、津波の被災者の喪失体験に寄り添い
再生を促すための物語ではないかと思います。
主人公:ダイバー・舟作の言葉
「ここでは、きっと人が笑っていただろう、愛し合っていただろう、幸せな時間を過ごしていただろう、と想像しながら、潜ってみたい・・・・
そして、たった一つ、永遠に自分の思い出となるものを拾って来たい。人々の大切な暮らしが刻印された化石のように思って、しっかり生きるためのお守りにしたいから」 (P235)
「海底から光の帯がゆらめきながら差し込んでくる海面を、海面の外に存在する光景を、鈍重で不自由で無力な生き物が、その美しさに憧れて、引き上げてもらいたいと渇望して、でなければせめて見守ってほしいとこめて見つめるように、精妙な色合いに輝き広がる果てを仰ぎ見て、疚しさと、申し訳なさと、いたらない自分を責める気持ちをぬぐえず抱きながら、なお胸の底からこみあげてくる思いをそっと口にする『ありがとうございます』」
(本書より引用)