2019/07/06
豊島区男女平等推進センター・エポック10主催の講演会に行ってきました。
『沈黙は破れるのか ~封じられた女たちのムーヴメント~』
講師は江原由美子さん(横浜国立大学大学院教授)。
実は、この講演会は2月5日に開催されるはずのものでしたが、区の職員の不祥事のため5か月間延期されたのでした。
2時間の講演でしたので内容も多かったのですが、記憶に残った部分だけでも書き留めておきます。
・日本のMeToo運動はなぜアメリカのように盛り上がらないのか。
アメリカで始まった#MeToo運動は全米で大きな広がりを見せ、加害者とした告発された男性たちは職務を追われたり辞任している。
タイムズ誌の2017年度パーソンオブザイヤーにMeToo運動を起こした「サイレンス・ブレーカーズ(沈黙を破る女性たち)」が選ばれ、ピューリッツア賞の公益報道部門で、ニューヨークタイムズとニューヨーカーの記者が選ばれている。・・・と、社会的にこの運動は評価を受けている。
一方日本では、加害者が罪に問われることが少なく(伊藤詩織さん、財務省セクハラ事件、名古屋地裁無罪判決等)、メディアに黙殺されたり、被害を訴えた女性のほうが非難されたりした。
これは日本の女性の持つ社会的資源の少なさによる。社会的資源とは、お金、地位、影響力など。男女の経済的格差は大きく、女性運動組織の小ささがアメリカと違う。
アメリカでは有名女優たちが一斉に名前と顔を出し声を上げたが、日本でも被害はあると思うのに、有名人で声を上げる人はいない。
性暴力被害というと、暗い夜道を一人で歩いていて被害に会う、というイメージがあるかもしれないが、実は知っている人からの暴力が75%を占める。これは被害を受けた後も関係が続く可能性が大きい。親族、会社の上司、取引先、学校など訴えにくい状況がある。
性暴力の加害者は性欲に負けて、ということではなく、被害者をよく見て選んでいる。性格的におとなしく抵抗しそうもない人、声を上げられない人たち、立場的にパート、派遣社員、生徒、子どもなど弱者である。性暴力の背後には支配、被支配の関係がある。
日本の法律では、被害者がその場で抵抗しなかった場合、検察がレイプを立証することが不可能になることがある。
2017年、100年以上前に制定された性犯罪に関する改正刑法を可決し厳罰化を決めた。しかし、この改正刑法は、暴行や脅迫があった、もしくは被害者が抗拒不能(抵抗が困難な状態)だったことを検察が立証しなければならないという要件を残している。
ここ数か月、性犯罪に対する無罪判決が立て続けに出ている。
同法の改正を人々は、英国、ドイツ、カナダなどの先進国と同じように、「同意のない性交全てを犯罪とするべき」と訴えている。
被害者は女性だけでなく男性の被害者もいるのですが、女性よりさらに声を上げにくい。「男らしさ神話」によって男のくせになどと、恥辱感が大きい。
お金を盗られたら警察に言えばいいけれど、性暴力はどこに訴え出ればよいのだろう。
性暴力は恥辱感、人格をズタズタにされる感じが盗難事件などの比ではない。
性暴力無罪判決に抗議する「フラワーデモ」というものがあります。花を手に持って、被害者に寄り添い、性暴力に抗議するものです。