「グチ」の功罪

2021/01/15

 

『その後の不自由』(上岡陽江×大嶋栄子著　医学書院）の続き、３回目です。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく) 上岡 陽江 医学書院

 

グチは私も昔よく言いました。今も若干言っていますが、ブログを書くようになって心が整理できるので、ずっと減りましたね。

グチを誰かに言った後は、言わなくてもいいことをまた言ってしまった、相手をいやな気分にさせた、という後悔のようなものがわき起こってきて、決して気分がすっきりすることはなかったのです。

『その後の不自由～』の２章「自傷からグチへ」を要約、引用させていただきます。

家庭内に閉じられたグチは危険。

「何度もグチを聞かされるたびに、いつもエネルギーを奪われてきた」

言われ続けた子どものダメージは大きい。親のグチ(実はSOS)をずっと聞いて(支えて)いると、その緊張感の中で「眠い」「喉が渇いた」「おなかすいた」「疲れた」「おしっこしたい」と言った生理的な欲求が言えない子どもになることがある。言えないだけでなく感じなくなっていく。体の感覚がわからなくなっていく。生理的欲求というのも実は、その表現の仕方を教えられて初めて表出できることなのです。（p.90~94）

 

グチにも効用があるらしい。

それはグチを言う人を支える機能だ。グチを言うときは自分を正当化している。彼らが生き延びるためには役立ったのではないか。同じ話を何度もすることで、生き抜くストーリーを作っていたのではないか。こんなことされた、でも頑張っているというストーリー。

親がグチを何回も言うことで、子どもが味方になってくれていた。親は生き延びている、孤立感を解消できる。（p.96~98）

子どもは親からグチを言われたときは、問題を解決しなければいけないんではないかと思ってしまう。それが苦しい。

しかし、本当にそうか？

“コミュニケーションとしての言語”がある。仲良くなるためにとか、気持ちを伝えるための言語。「解決しなかったからと言って、自分が悪いわけじゃない。自分以外の別の支え手がいたかもしれない」という可能性に気づいてほしい。（P.99）

 

開かれたグチを正当化しよう

「グチとは日常的な小さな不満である」と定義しなおす。大きすぎる、大変すぎるのはグチじゃない。→　グチは解決しなくていい。

ボーダーラインの人たちは日常で困っていることがたくさんあるのに、それを説明するのがとても下手なんです。彼女たちが「死ぬ」としか言えない背景には、実はこんな日常的な問題（洗濯できない、電車に乗るのが大変など）をうまく表現できないことがあるんじゃないかと思っている。

子どもの頃から話す経験をしていない。そもそも感じにくくなっている。身体や生活のことを話すのを恥ずかしいという感覚を持っている。

グチも不満も何も言えなくて、”いい人でしかいられない“人たちに「少し日常的に困っていることを話そう」と言ってあげてください。（P.103）

 

開かれたグチにするポイント

・思い切り自分を正当化していい

・自分を中心に話していい

・他人のせいにしていい

ボーダーラインの人は全部自分が悪いと思っているから、「そんなことできない」と言う。でも、苦しみながら、とにかくグチをつくってみる。

はずしてはいけないのは、グチを言う相手を間違えちゃいけない。家族のなかで言うんじゃなくて、外にきちんと話せる相手を作ってからやってねと。例えば、精神保健センターや相談員やカウンセラー、あるいは自助グループということでしょうか。

誰に言うかが大切。悪口を言っていると勘違いしないで、グチとして聴いてくれる相手であることが大切。

同じ話を心が落ち着くまで話せ、と言っている。自助グループでは10年も同じ話をしている人がいる。私自身（上岡さん）も大変な問題があった時には、意識して何回も話している。

痛みが静かな悲しみに変わるには、数えきれないくらい同じ話を誰かに聞いてもらわないといけない。

・・・・・

ここに書かれている人々のグチは、大変な思いをして生きてきた人たちのグチなので、私の日常茶飯のグチよりずっと重く深いものかもしれません。

グチを聴いたからといって解決しなくてよいというのは、ハッとしました。そして肩の荷が下りた気がしました。これは「傾聴」ということでしょうか。私はその姿勢を忘れていたなあ。

 

 

 

今月のリトミックは今日で終わり

2021/01/14

 

昨日、今日と寒さが和らぎ、どことなく春を感じるくらいでした。自転車での行き帰りが楽でした。

成人式やセンター試験の頃は、例年雨や雪になることが多いのですが、太平洋側に晴天が続くのも日本海側に大雪が集中しているからでしょうか。

豪雪地帯の皆さんは本当に大変なことと思います。お見舞い申し上げます。

緊急事態宣言が出て、私の行なっているリトミックは１か所中止になりましたが、昨日と今日行なった2か所は通常通り行われました。

区の公共施設は東京都の対応方針に準拠ということで、積極的な集客、イベントは行わないものの、それ以外は通常どおりとのことです。ただ、参加者を減らすということで、いつもの７～８割の参加者でした。

私自身は心配もあったのですが、「楽しみにしている親御さんがいる」とか「ピアノの音に癒される」と言ってくださる職員さんがいて、そう言っていただけるならやろうと思ったのでした。

今まで区の子育てひろばからは１人の感染者も出ていないということも後押しになりました。

今日で、今月のリトミックは終わりです。何だか、あっという間に終わってしまった気がしますが、ほっとした気持ちのほうが大きいです。

２月７日までに感染者は減らせるでしょうか。

街を行くと人の数は半分くらいに減った感じはしますが、昨年時に比べると、全然多いです。

去年より更にいろいろなレストランの前には持ち帰り弁当が並んで、弁当を売る店が増えたなあと思います。それを覗きながら歩くのも、ちょっと楽しいです。

 

『その後の不自由 嵐のあとを生きる人たち』続き

2021/01/13

 

昨日書いた『その後の不自由～』では、依存症の女性が多く登場してきます。

ダルク代表の上岡陽江さんによれば、「虐待を受けた人の４,５割は何らかの依存症を発症するといわれ、そのデータもあるんです。特に女性の薬物依存者は、何らかの形で暴力の被害者である割合が非常に高い。ダルク女性ハウスに入ってくる女性の85％は、虐待やＤＶなどを受けています。」との語っている。

本書には、「依存症の人たちはこれまで身体の手当てをされた経験が一度もないという人が多いんです。」(p.40)「ダルクに来る人は、誕生会やひな祭りや、一緒に食事を作って食べるということをやってもらったことがない人たちです。」(p.66)とある。

普通の家庭では当たり前に得られるはずの家庭生活がなかったのだ。

話は少しそれるが、以前、医療少年院に収監されている少年たちの本を読んだことがある。

岡田尊司著『悲しみの子どもたち　罪と病を背負って』(集英社新書　2005年）である。著者の岡田尊司氏は精神科医として、医療少年院で罪を犯した少年たちと向き合っている。

「犯罪をおかした子どもたち自身も壊れているが、ほとんど例外なくそれ以上に壊れているのはその家庭や親である。冷酷な犯罪を犯した少年たちは、幼い頃から虐待などの過酷な体験を受け続けていた『悲しみの子ども』でもあるのです。家庭の中で愛や安心、安全を知らないで育っていかなければならなかったのです。」

犯罪や薬物依存などは、過酷な家庭環境の中で、かろうじて命だけは保ってきた人たちの生き延びる手立てだったのかもしれない。

『その後の不自由』も『悲しみの子どもたち』も読むのが辛い本ではある。しかし、その人々に寄り添い、援助し、一緒に歩いていこうとする人たちもいる。

身体の手当てをし、一緒にご飯を作って食べ、なにげない会話をし、夜は寝てもらうという当たり前な日常を経験することが、回復の道であるようだ。

 

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく) 上岡 陽江 医学書院

 

『その後の不自由 嵐のあとを生きる人たち』

2021/01/12

 

『その後の不自由　嵐のあとを生きる人たち』（医学書院）は、ダルク女性ハウス代表の上岡陽江さんとNPO法人リカバリー代表の大嶋栄子さんの共著です。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく) 上岡 陽江 医学書院

 

2010年の出版ですから、もう10年前の本ですが、この本に書かれたことは未だに変わっていないと思うのです。

以前に、ここでも紹介したことのあるカリーナさんのブログで紹介されていた本です。

ダルク女性ハウスは、薬物・アルコール依存症を持つ女性をサポートする施設。代表の上岡さん自身も処方薬・アルコール依存症でした。

リカバリーは札幌で、さまざまな被害を生き延びた女性をサポートするシェルターです。理事長の大嶋さんは精神科ソーシャルワーカー、大学講師です。

成長期に過酷な体験をして生き延びてきた女性たち、その人たちの過酷な体験を「嵐」と呼び、シェルターや施設で自分を見つめることができるようになった当事者の「それから」の話。

考えさせられることが多くありました。

上手な感想を書くこともできないので、本書から抜き書き・引用させていただくのが一番伝わるかと思います。

〈引用〉

１・私たちはなぜ寂しいのか

〈境界線を壊されて育つということ〉

家庭に問題がないわけじゃないのに、そこそこ乗り越えていっている友人たちの家庭はどうなっているのかと思っていた。

観察してみると、そういう人たちは家族内だけで問題を解決するわけでなく、外側に応援団を持っているように見えた。

(図は本書より借用）

大きな問題になればなるほど家族だけで解決できなくなる。誰かが外にSOSを出したり、おそらく家族以外のところともつながりながら、乗り越えていくものだろう。

「私」→「父・母・きょうだい」→「祖父・祖母・いとこ」という順番や、それぞれの境界線も大切。依存症を持つメンバーの話を聞いていると、この境界線と順番がごちゃごちゃ。

いい嫁をやりたい人ほど自分の子どもには我慢させて、夫の実家や親戚に尽くす。一見親戚と仲良くやっているようでも、家族の中で自分の子は二の次になってくる。子どもはずっと我慢し、絶えず人のことを優先するという形で育つ。(P.15～18)

回復というのは、他人を優先していたことが、「自分を真ん中にして考えること」へとかわっていくこと。特にボーダーラインとよばれる境界性パーソナリティ障害の人ほど他人を中心にしています。彼らは自分中心の極みのように思われているが、真ん中に「自分」じゃなくて「他人」がいる人たちなんです。（p.18）

特に薬物やアルコール依存の女性は、原家族の中に問題があった例が多い。自分の家で起きていることは友だちにも言えない。お父さん・お母さんに恥をかかせるかもしれない。バレることが一番マズいと考える。

誰にも言わず自分で守る、というふうになる。大人になっても応援団は持たず孤立して社会に出ていく。

私（上岡さん）は3歳ころから不幸な母を背負ってきた。でも3歳から頼りになっちゃあいけない。思春期でもけんかをしたことがない。

 私は母を背負い、双子のような関係で、何も言われなくても母の日々の手伝いから感情的なものまですべてを支えるということで生きてきました。（p.22）

 

〈境界線を壊された子供は何を感じるようになるか〉

お父さんがアルコールで問題があるとか、お母さんがいつも怒っているとか、いろいろ問題があった時、子どもは幼ければ幼いほど「自分のせいだ」と考えてしまいます。

お父さんとお母さんの問題を自分のものとして背負っているので、いつもお父さんとお母さんの痛みも感じている。そうすると、やがてそれが自分の痛みなのか、お父さんとお母さんの痛みなのかがわからなくなるんです。

人の痛みに対してもすごく敏感なので、ある意味で薬物依存の人たちは優しいです。大変な人をみると、なんとかしてあげなきゃいけないという気持ちになってしまうんです。

家族の中で問題が大きかった人ほど、このように大人になってからも、しょっちゅう自分からトラブルのなかに入っていってしまいます。

「家よりも外のほうが安全」という感じがあるのです。つまり日常が危険で非日常が安全なんです。さらに攻撃と密着を愛情と勘違いして教えられてしまった人たちですから、ヤクザや暴走族のほうを安全と感じてしまう。（p.24 ～29）

 

ここまでが1章で、2章の「自傷からグチへ」も大変深いものですが、次回にします。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく) 上岡 陽江 医学書院

 

イワシの梅煮

2021/01/11

 

スーパーに行ったら、新鮮なイワシがあったので、先日もらった無水自動調理鍋で「イワシの梅煮」を作りました。

鍋が大きいのでイワシが小さく見えますが、大ぶりのイワシです。

頭とおなかを取り、塩を振ってしばらく置いてから、紙で水気をよくふき取ります。

調味料、梅干しの果肉と生姜の千切りをいれて、スィッチオン。

25分間で完成。

煮汁に浸っていないのに、よく味がしみてます。

自分でイワシを煮るときは落し蓋が必要で、味のしみ方にもムラがありました。

やはり、これは無水調理器のいいところかしら。

新鮮で脂ののったイワシです。体によいEPA、DHAがたっぷり。

おいしくいただきました。