活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

印刷物のアーカイブ、とくにポスター

2011-09-26 10:54:37 | 活版印刷のふるさと紀行
 ここ3、4日ポスター漬けになっています。ちょっと調べごとが
あってのことですが、作業中、ふっとこんなことを考えました。

 前回の「印刷遺産」にも関連しますが、最近のように大学・印刷会社・
博物館などでポスターの蒐集、整理、保管が進んでいることは喜ばしい
ことです。「アーカイブ隆盛万歳」です。

 どこでも温湿度や照度などを考慮したキャビネットに慎重な保管をし
制作年月日、制作者名、印刷会社名、版式、色数などの記録カードが
つけられて万全を期しておられます。

 しかし、意外なことに、印刷部数とか配布場所や掲示データは添えられて
いません。はたして、ポスターの保存がこれでいいのでしょうか。

 私が今更いうまでもなく、印刷物の中でもとくにポスターは「掲示され
た時点の社会を映す鏡」のような性格を持っています。
 
 これから何十年も年月が経過してからそのポスターを見る人が、この
ポスターがどんな社会風俗の中でどんなところに貼られたのかがわかる
ようにしておくべきではないでしょうか。

 上のポスターはいまから100年前、1912年(大正元)秋の三越の
売り出しポスターです。二人とも胸にリボン喪章をつけています。
明治天皇崩御で9月13日にご大葬があったその時期です。
 
 ちょうど100年前ですが、私たちはもう、この時代がイメージ出来
ません。たとえば、三越周辺を歩く人はこのポスターのような呉服姿が
多かったのでしょうか。このポスターはどこに貼られたのでしょうか。

 これから収蔵されるポスターには、こういうデータが是非ほしいと
思います。
コメント
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