活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

楽しかったコドモノクニ展覧会 1

2012-07-08 13:06:57 | 活版印刷のふるさと紀行

 きのうの大曲塾の研究会は多摩美術大学美術館「絵が歌いだすワンダーランドコドモノクへようこそ」の展覧会見学と座談会の聴講でした。絵が歌いだすとは、つけもつけたり、すばらしいキャッチで、塾員一同、実に半日楽しい時間を持たせてもらいました。

 『コドモノクニ』は1922年(大正11)1月から日本の敗色が濃くなる1944年(昭和19)3月まで約3年間に287冊が発行された月刊の子ども向き絵雑誌です。“子どもたちに本物を、芸術性高いものを”というコンセプトのもとに当時の若い画家、詩人、音楽家、文学者が真剣に作品を創り、寄せています。ここに主だった人の名前をあげますと、画家では武井武雄、岡本帰一、清水良雄、初山滋、深沢省三、川上四郎、竹下夢二、村山知義ら、詩人では野口雨情、北原白秋、西条八十作曲家の中山晋平とそうそうたる顔ぶれでした。

 会場にはコドモノクニの雑誌現物多数をはじめ、寄稿画家の原画(コドモノクニだけではない)や発行元の代表である東京社の創業者鷹見久太郎や協力者の窪田空穂、あるいは野口雨情などの書簡など思わず立ち尽くしてしまう展示物でいっぱいでした。とにかく、大正から昭和にかけて日本にこんなに芸術の香り高い子ども向きの雑誌があったかと驚かされるはずです。百聞は一見に如かず、ぜひあなたも会場に足を運ばれることをおすすめします。会期は9月2日までです。

 座談会は最初に元学芸員の仙仁 司さんのコドモノクニのエディトリアルの背景、鷹見久太郎の孫、鷹見本雄さんの久太郎論、野口雨情の子息野口存彌さんの久太郎と雨情の交わりについてのレクチャーがあり、その後質疑を交えて、コドモノクニ制作の裏話が飛び出す楽しいもので、その雰囲気はあとのパーティまで続いていました。

 ただ、唯一不満だったのは、このすぐれた絵雑誌がオフセット5色刷りで印刷会社は秀英舎(大日本印刷)であることはわかりましたが、会場でそれ以上精査できなかったことでした。いまのところ手元の資料ではわかりませんので後日、調べることにします。なお、写真はコドモノクニ創刊号で武井武雄の表紙画です。




 




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