活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

成子紙工房を訪ねる

2013-11-03 12:00:39 | 活版印刷のふるさと紀行
 雨台風が通り過ぎて風も空も透き通るような秋の気配のなかを滋賀県大津市桐生に「成子紙
工房」を訪ねました。山裾の外見は当り前の日本家屋の工房にお邪魔するには手前の田んぼのところで車を捨てなければなりませんでした。稲刈りの済んだ田んぼには再び新しい稲が自生していてしかも籾をつけているではありませんか。「近江米」の産地でした。

 近江雁皮紙の工房はもうここしかないと聞きました。手漉きの和紙には以前から興味がありました。楮(こうぞ)や三椏(みつまた)を原料とする和紙とちがい、雁皮というジンチョウゲ科の雑木の皮が原料で日本のかな文字文化を支え、紫式部が源氏物語の草稿の筆を走らせたのも雁皮紙だったはずです。さらにいうならば、日本に最初に持ち込まれたグーテンベルク方式の活版印刷機で印刷されたキリシタン版も和紙に印刷されています。


 「成子紙工房」の4代目紙匠、成子哲郎さんに桐生と紙漉きの歴史をうかがいました。
江戸末期で当時は原料の雁皮が周辺の山、訪問で原料づくりの工程を見せてもらうわけには行きませんでしたが工房内をくまなく案内していただいて、紙漉き体験をさせていただきました。生来の不器用ゆえうまかろうはずはありませんが乾燥した作品?を後日、送っていただけるそうですから楽しみです。

 紙匠によると、紙漉きは漉き手の心を漉きあがる紙にそのまま映し出すものだそうです。邪心があればむらができたり、厚い薄いができたりしてしまうと聞きました。


コメント
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