ミホ ミュージアムの本年秋季特別展タイトルは、<朱漆「根来」―中世に咲いた華>。
「根来(ねごろ)」とは、歴史小説などでおなじみの根来衆の略称みたいですが、さにあらず、中世のころから日本のお寺や神社で使われてきた朱漆塗りの什器のことをいいます。
この特別展にはその朱漆のお盆とかお椀とか酒器とかが出品されていますが、400年から600年も前の年期のはいった什器を単に鑑賞するというのではありません。
たとえば、写真右のお盆は鎌倉時代から奈良東大寺の二月堂で使用されたものですが、長い間に朱塗りが擦れて下地の黒がまるで模様のように浮き出て来ています。それがまるでデザインのようでいっそう什器の美しさをきわださせています。なお、左は神社で使われた瓶子ですがいずれもMIHO MUSEUM通信32からの借用であることをおことわりします。
と、文章にしてしまうとそれだけですが、照度を落とした会場で一点、一点「根来」の器物と対面していますと、鎌倉や江戸の時代の気配というか空気感がそこはかとなく感じられてきました。しっとりと落ち着いた展示空間でした。
また、常設展会場でも日本の古美術ものはもちろん、パキスタンのガンダーラ仏立像やエジプトの隼頭神像などその場でずっと足をとどめていたい展示物がたくさんありました。雪の降りだす前に湖南アルプスの自然をめでながらのミホ ミュージアム探訪をぜひお勧めします。
根来展は2013年12月15日までです。