活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

紙VS電子メディア 柴田博仁さん

2014-06-19 17:05:38 | 活版印刷のふるさと紀行

 活版印刷の追っかけみたいな私だけに「紙か電子か」には関心が深いのです。4~5回前のブックフェアの話のとき、電子出版について書きますなどと啖呵を切りながらはたせないでいるうちに、たいへん興味深い論文を知りました。印刷図書館クラブの例会の席上、タイポロジの竹原悟代表からです。そこで、少しだけ紹介をさせてください。

 論文の主は富士ゼロックス(株)研究技術開発本部の柴田博仁さんで、2007年から取り掛かった研究の一部を日本フォーム印刷工業会連合会の技術セミナーで「電子メディアの活用を見る」と題して発表されたもののようです。

 私の手元にあるレジュメは「紙の認知研究から見た電子メディア」とあり、~紙と電子の最適な使い分けに向けて~とかなり狙いがはっきりしたタイトルになっています。まさに紙VS電子メディアです。もちろん,視点に柴田さんの会社の社業との関連が無いとは言えないでしょうが、をどうして、どうして、紙と電子メディアの比較を利用実態の調査・実験を踏まえてそれぞれの効果を数値的におさえ、綿密で周到な論述を展開されています。

 たとえば、日常的に電子機器(タブレット、電子書籍専用端末、スマートフォン)で読書をしている554名の人を対象に「あなたが読むのに適したメディア」を、読むアイテムを細かくあげて調査した結果が示されています。それによると、日ごろ電子機器に親しんでいる人でも読むメディアには紙をあげる人が多いことがグラフで読み取れるのです。また、村上春樹の短編小説『カンガルー日和』から4編を選んで、24人の人に紙の書籍、iPad,Kindle2で読みのスピードなどの興味深い比較実験もありました。

 こんなふうな「切り取り的な紹介のしかた」は本意ではありませんし、何よりも著者に失礼ですからこの辺でヤメにして、いつか神田川大曲塾の研究会にお招きしてゆっくりうかがいたいと思います。

 とにかく、現状でも読むためのメディアとして紙が好まれていますが、書くことや情報保存となると電子優勢です。柴田さんとしては紙VS電子メディアでどちらに軍配を上げるということでなくメディアの未来像としてはタスクや目的に特化した多様な状況によって使い分けらMedia Harmony社会をお考えのようでいろいろなITツールの出現を予想されています。

これは余分なことですがもう20年以上前、ヴェネツッアのコンプリント国際会議でDNPの北島義俊社長が主張された印刷と電子メディアの「メディアミックス論」を思い出しました。 



 




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