印刷のデジタル化で質問をいただきました。たとえば、前回の雑誌の場合ですと、1990年代までは印刷会社に作家の原稿は原稿用紙に肉筆で書かれた形で出版社経由で入ってくるのが普通でした。印刷現場ではそれを読んで1字ずつ活字を拾う、あるいはオペレーターがタイピングするのでした。
だから、印刷会社には出帳校正室があって校了間際になると出版社の編集者や校閲担当者が詰めきりになってゲラ(校正刷)に赤字を入れ、即、その箇所を印刷現場で訂正するのです。その往復作業を何度か繰り返してようやくOK、印刷開始となるのです。
それではデジタル化した今はどうかといいますと、作家はパソコンで原稿を書き、そののデータが出版社経由で印刷会社のコンピュータに送られ、それが印刷会社で指定どうりに紙面化されそれが出版社経由で作家のパソコンに送られます。作家はパソコンの画面上で校正します。つまり、原稿用紙もゲラ刷も登場しないままに雑誌作りが進むようになったのです。
さて、前回は『文藝春秋』でしたが、『新潮』が永久保存版創刊110周年記念特大号が昨年夏に出たことにも触れないといけません。創刊の1904年、明治37年といえば日露戦争の渦中ですから確かに『新潮』こそ日本の雑誌の中で最高齢といえます。その明治37年5月から平成29年5月までの主要作品の掲載年表が「新潮100年史」の形で掲載されていましたが、作家の活躍を通して見る日本の文学史みたいで興味深いものでした。
特に昭和10年から23年まで主要掲載作品に太宰 治が挙げられていました。そうか、私が『斜陽』に鮮烈な印象を受けたのが昭和22年の7月号だったか。してみると旧制中学の4年生、自分の読書史?にも重なりました。
そういえば新潮社の出張校正室はありませんでした。印刷元の大日本印刷とあまりにも近く立ったからでしょう。