青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

黄金、千秋、茜空

2009年11月27日 22時30分21秒 | 日常

(吊り掛けの音高く@粕川橋梁)

生まれは昭和3年、御歳数えて81歳。
移りゆく上毛の歴史を、開業当時から見守り続けて来た存在がいます。
上毛電鉄の生き証人、古豪デハ101号。
実働する車両としては、日本最古の電車。
まだまだ、現役。

この日上毛電鉄を訪れたのは、この車輛が動くと言う話を聞いたからでもあります。
定期運用からはとうに外れて、たまの線路の保守管理に駆り出される程度。
すっかり御隠居さんの身ではありますが、ファンのオーダーがあれば出動してくれます。
大胡~西桐生~中央前橋~大胡の全線一往復で9万円だそうです。
(デハ101 貸切運転のご案内@上電HP)
実際は割にあってないのでは?と思われるが…

何年か前に、この車両の維持に関しては社内でもその処遇が取り沙汰されたそうだ。
そりゃあここまで高齢の車両になると、ただ補修をすると言っても部品ひとつが調達出来ない。
そのためだけの部品をオーダーするには、地方鉄道にとっては重い負担である。
それでも上毛電鉄はこの車両の存続と維持の道を選んだ。
駅だけでなく、この車両も群馬県の近代化遺産として登録済。
「文化財として守る」と言う立場を鮮明にしているのだ。
素晴らしい事ですね。

この日は昼過ぎから夕方までの全線一往復の運用に付いていた事もあって、
帰りはちょうど秋の夕陽が斜光となって射し込む時間である。
デハ101が夕陽に映える、印象的なカットを撮ってみたいなあと思いつつロケハン。
上泉駅の近くで、ちょうど西の空からの光が感じ良く届く場所があった。
とりあえずデハ700でワンカット、サイドの光は申し分なし。
あとは獲物を待つばかり。

ここまでサイドに陽が回ると言う事は、そろそろ太陽も沈む時間。
日没まで僅かの時間を、三脚立てながらヤキモキしつつ待つ。
前橋方面から、軽いホイッスルの音が聞こえた!
吊り掛けモーターのカーン!という甲高い金属音が響くと、古豪が姿を現した。

(秋の日に黄金輝く@上泉~赤坂間)

金の延べ棒のように光り輝いて、デハ101が走って行きます。
側面の外板の質感艶めかしく、日没まであと僅かの夕陽が足回りまで染め上げる。
染め上げられた車体の放つオーラは、若いもんには出せない色気。

茜差す赤城の山に吊り掛けの音が響く。
それは「今宵限り」とは言わせぬ、古豪の咆哮のようです。
広い空と、遠くの山々。
群馬県は、上毛電気鉄道の旅でした。

コメント
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