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【乙女(おとめ)】の巻】 その(4)
若い公達は我慢しきれず、つい笑い出してしまいます。実はそれなりに落ち着いた人々だけを選び出して、酌などをおさせになったのですが、何分風変りな席とて、右大将や民部卿などが、身の程に応じて盃をとられますのを、教官たちは、厳しく欠点を指摘してけなしています。
この時とばかり、教官たちが居丈高にものを言っているのも、真面目なだけに、かえって可笑しく、人々がふき出して笑いますと、「騒々しい、静まりなさい。甚だけしからん。退席なされい」とやかましくののしっています。
源氏までも、
「いとあざれ、かたくななる身にて、けうさうし惑はかされなむ」
――私のような不行儀で、融通のきかない者は、席に出たならば叱り飛ばされるだろう。――
と、御簾の内に御隠れになってご覧になっています。
夜になりますと、灯火の光で儒者たちの顔はかえって道化じみてみすぼらしく、貧相で見苦しいのがはっきりして、確かに異様なことではあります。その夜は漢詩をお作りになるなど、なさったようですが、
「女のえ知らぬことまねぶは、憎きことをと、うたてあれば漏らしつ」
――(作者のことば)女の知りえぬ学問の事を口にしまして、生意気と憎まれますのが厭ですので、ここでは略します。――
もちろん、それぞれに大層な贈り物と酒宴が催されました。
「字」の礼に続いて、大学入学の儀式をおさせになって、そのまま二条の東の院にお部屋を設けさせて、学識の深い師をお付けして、学問をおさせになります。大宮は、夕霧を事の外可愛がっていらっしゃって、学問なさる環境には相応しくないとの源氏のご配慮で、一カ月に三度ほどは、大宮の御邸にご機嫌伺いにと、お許しになるのでした。
ではまた。
【乙女(おとめ)】の巻】 その(4)
若い公達は我慢しきれず、つい笑い出してしまいます。実はそれなりに落ち着いた人々だけを選び出して、酌などをおさせになったのですが、何分風変りな席とて、右大将や民部卿などが、身の程に応じて盃をとられますのを、教官たちは、厳しく欠点を指摘してけなしています。
この時とばかり、教官たちが居丈高にものを言っているのも、真面目なだけに、かえって可笑しく、人々がふき出して笑いますと、「騒々しい、静まりなさい。甚だけしからん。退席なされい」とやかましくののしっています。
源氏までも、
「いとあざれ、かたくななる身にて、けうさうし惑はかされなむ」
――私のような不行儀で、融通のきかない者は、席に出たならば叱り飛ばされるだろう。――
と、御簾の内に御隠れになってご覧になっています。
夜になりますと、灯火の光で儒者たちの顔はかえって道化じみてみすぼらしく、貧相で見苦しいのがはっきりして、確かに異様なことではあります。その夜は漢詩をお作りになるなど、なさったようですが、
「女のえ知らぬことまねぶは、憎きことをと、うたてあれば漏らしつ」
――(作者のことば)女の知りえぬ学問の事を口にしまして、生意気と憎まれますのが厭ですので、ここでは略します。――
もちろん、それぞれに大層な贈り物と酒宴が催されました。
「字」の礼に続いて、大学入学の儀式をおさせになって、そのまま二条の東の院にお部屋を設けさせて、学識の深い師をお付けして、学問をおさせになります。大宮は、夕霧を事の外可愛がっていらっしゃって、学問なさる環境には相応しくないとの源氏のご配慮で、一カ月に三度ほどは、大宮の御邸にご機嫌伺いにと、お許しになるのでした。
ではまた。