永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(304)

2009年02月20日 | Weblog
09.2/20   304回

【行幸(みゆき)の巻】  その(2)

 玉鬘は、行列の中に、

「わが父大臣を人知れず目をつけ奉り給へれど、げにきらきらしう、もの清げに、盛りにはものし給へど、限りありかし」
――わが御父の内大臣を、それとなくお見上げなさいましたが、なるほど輝かしく上品で、男盛りではいらっしゃるものの、臣下となれば限界があるようです――

「いと人にすぐれたるただ人と見えて、御輿の内より外に、目移るべくもあらず」
――(御父の内大臣は)まあ、臣下の中で優れた人というだけで、御輿の中の帝以外には、目移りもしません――

「まして、容貌ありや、をかしやなど、若き御達の消えかへり心うつす中少将、何くれの殿上人やうの人は、何にもあらず消え渡れるは、さらに類なうおはしますなりけり」
――ましてや、お美しいとかご立派とか、若い女房たちが消え入るほどに憧れる、中将や少将、何とかの殿上人など、まったく目に入らぬのは、帝の無比のご立派さゆえなのでした――

「源氏の大臣の御顔ざまは、他ものとも見え給はぬを、思ひなしの今すこしいつくしう、かたじけなく、めでたきなり」
――源氏の御顔は、帝と瓜二つにお見えになりますが、気のせいでしょうか、帝の方が、もう少し威厳がおありで、もったいないほどご立派です――

 玉鬘は、源氏や夕霧などの美しさに見慣れていて、高貴な方は皆美しくて、普通とは違うべきものとばかり思っておりましたが、

「出で消えどもの、かたはなるにやあらむ、同じ目鼻とも見えず、口惜しうぞ圧されたるにや」
――他の人々は帝や源氏の前では、見栄えのしない、醜さであろうか、同じ人間の目鼻とも見えず、口惜しいほど圧倒されてしまったことよ――

ではまた。