永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(463)

2009年08月01日 | Weblog
09.8/1   463回

三十五帖【若菜下(わかな下)の巻】 その(17)


 御琴の音合わせも全部整って、いよいよ合奏してご覧になりますいづれも、優れていらっしゃる中で、

「琵琶はすぐれて上手めき、かみさびたる手づかひ、澄みはてて面白く聞こゆ」
――明石の御方の琵琶は実に堂に入っていて、神の技かと思えるほど、音も澄みきって趣深い――

夕霧は和琴を弾いていらっしゃる紫の上に特に耳を澄ませて聴いていらっしゃる。

「なつかしく愛嬌づきたる御つま音に、かき返したる音のめづらしく今めきて、(……)大和琴にもかかる手ありけり、と、聞きおどろかる」
――やさしく愛嬌のこごれるような御爪音に、爪返しの音がまためづらしく華やかで、(専門の名手達が鳴らすに劣らず)和琴にもこのような弾き方があったのかと、お聞きになって驚いていらっしゃる――

 明石の女御の弾かれる筝の琴は、もともと他の楽器の合間合間に洩れて聞こえるものですので、愛らしくなまめいて聞こえます。女三宮の琴(きん)は、まだ習い立ての最中ですので、それなりに危なげなく他の楽器と響き合っていて「見事に上達なさったものだ」と夕霧はお聞きになっていらっしゃる。

「拍子とりて唱歌し給ふ。院も時々扇うち鳴らして、加へ給ふ御声、昔よりいみじく面白く、すこしふつつかに、ものものしき気添ひて聞ゆ。大将も、声いとすぐれ給へる人にて、夜の静かになりゆくままに、いふ限りなくなつかしき夜の御遊びなり」
――(夕霧は)手拍子で歌を歌われ、源氏も時々扇を鳴らしてご一緒にお歌いになるお声は、昔より一段と味わい深く、少し太くさびがあって重みが加わったようです。夕霧もお声がたいそう良くて、夜の更けて静かになってゆくにつけて、何ともいえない面白い合奏の宴となったのでした――

◆写真:女楽 全景
    左から明石の御方、明石の女御、源氏、女三宮、紫の上
    本来は御簾の中なので、このように開け放されてはいない。

ではまた。


源氏物語を読んできて(女三宮の琴)

2009年08月01日 | Weblog
◆琴(キン)の琴を弾く女三の宮 

 紅梅の匂の表着、桜襲の細長このように、膝に乗せて弾くのだそうです。

「人よりけにちひさくうつくしげにて、ただ御衣のみある心地す。にほひやかなる方は後れて、ただいとあてやかにをかしく、二月の中の十日ばかりの青柳の、わづかにしだりはじめたらむ心地して、鶯の羽風にも乱れぬべく、あえかに見え給ふ」
――普通の方より小さくて、可愛らしく、ご衣裳に埋もれていらっしゃるように見えます。匂いこぼれるような艶やかさはお見えにならず、ただまことに優雅でお美しい。ちょうど二月二十日ごろの青柳の糸のようやく枝垂れ初めたような心地がして、鶯の飛び交う羽風にも乱れてしまいそうな華奢にお見えになる――

 風俗博物館

源氏物語を読んできて(明石の女御の筝)

2009年08月01日 | Weblog
◆筝の琴を弾く明石の女御 

 梅襲の袿  夕霧に絃を調節してもらった箏の琴を担当したのは明石の女御でした。
「よく咲きこぼれたる藤の花の、夏にかかりて、傍らに並ぶ花なき朝ぼらけの、ここちぞ
たまえる」

 風俗博物館