acc-j茨城 山岳会日記

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谷川岳・一ノ倉沢3ルンゼ(中退)

2012年09月07日 22時27分19秒 | 山行速報(アルパイン)
谷川岳・一ノ倉沢3ルンゼ(中退)



早朝、目覚ましの音。
おもむろに起きだし、パ-トナ-ともども無言で支度を始める。
イチノクラに入る前はなんとなくそんな気分。

寝不足もあろうが、決して陽気にはなれない。
それはやはりイチノクラだからだろう。

ロ-プウェイから歩いて一ノ倉出合。
天気予報では曇りからの下り坂。
正直ダメでもともとと諦め半分であったが予想に反してカラリと晴れている。



今日はイケるかもしれない。
期待が膨らむ。



下部は雪渓が途切れ秋道を行く。
本谷にクライムダウンをしてテ-ルリッジ。
息が上がりながらも中央稜取付き。
誰もいない烏帽子スラブのバンドをトラバ-スして南稜テラス。

少し雲が出てきた

ここはちょっと考え所。
状況によっては南稜への転進も考えていたが、過去何度となくここまでで3ルンゼは退却していた。
今までになく視界はいい。
しかし、天気予報~午後から下り坂~が引っかかっていた。

時計は8時前。
上手く行けば昼には抜けられる、と思った。
反面、頭の片隅にこの「上手く行けば」という期待感ほどアテにならない、ともあった。
結局は、ダメでもともとと本谷バンドを行く。



matくんとは先日も同様に3ルンゼを目指したが、雨で中央稜取付きで退却した。
谷川ル-トの初完登なるか。

本谷F滝は左からとあったが、水流跡ちょっと左を行く。
支点なく、また浮石も多い。
滝上に支点があったが、スル-して右岸側の4ルンゼとリッジで隔したルンゼに入る。
岩のルンゼから草付ルンゼとなり、4ルンゼ側のリッジにビレイ点を見るが、どうやらロ-プがいっぱいらしい。
10m手前のプアな支点をカムで補強しビレイ。



このころから上部のガスが発生しては消え、ポツリポツリと始まった。
matくんを迎え、そのまま10m先のビレイ点まで行ってもらう。

いろいろな事前調査では、このあたりの地形がわかりにくいということであったが、我々も例外ではなかった。
左に草付凹角、右15mほど下に4ルンゼ。
正面リッジを右から回り込めばと思ったが、支点も見えず判然としない。
この先に3ルンゼはあるのだろうがなかなかその姿が確認できないのだ。

ガスは次第に下がってきて雨の間隔も短くなり、また粒も大きくなってくる。
一時、容易そうな左凹角を少し行ってみるが支点はない。

待てよ。この雰囲気は確信が持てない。
上手くいけば抜けられるかもしれないが、山は、はたしてバリエ-ションはそれほど「ウマく」行くものじゃない。

ということで、「撤退します」

matくんには悪いことしたが、「なんとか登りたい」というのと、「安全」は別物。
潔く懸垂下降2回でF滝下に降り立つ。



あわよくば南稜をと考えていたが、南稜テラスにつくなり、物凄い雨。
「これじゃあね」と二人顔を見合わせた。

しかし、ここからが核心。
雨は勢いを増して、さながらイチノクラはあたり一面が滝となる。
見上げれば、3ルンゼも当たり前のように白波打つ流れ。
F滝上を順調に、「上手く」抜けていたなら、この流れに翻弄されたかもしれない。
と、ちょっぴり自分を納得させる。

というより、問題は下降だ。
ただでさえ下降に注意を要する烏帽子奥壁スラブのトラバ-スもナメ滝と化している。
ググッと視線を下げれば、ヒョングリあたりも濁流に見える。

「こりゃ、ゆっくり時間をかけていきましょう」
ということで、しばらく雨宿り。
といっても宿るところはほとんどないので、雨具を着込んで雨に打たれる。

ふと思い立ち、携帯電話を見ると、アンテナマ-ク!
南稜テラスは電波がつながるという、ちょっとした発見。
ふと着信があり、拍子に受けてしまった。
相手は、まさかこちらがこんな場所、シチュエ-ションで電話しているなど露も知らないことだろう。

そうこうしているうちに雨も少し弱まる。
また雨が勢いを増さないうちに下降を始める。
それでも小さい流れが行く筋にも形成され、変チ取付きあたりはまさに「天から降る滝」。もちろん落石注意だ。



中央稜取付き下で靴を履き替え、テ-ルリッジを下る。
中間スラブで振り返れば、もはや雨はなく、視界もすっきりと高曇り。
これから天気が回復するんだろうなあという恨めしい予感の元、下部スラブは懸垂下降。
幸い本谷は難なく渡れ、登り返しでロ-プを引く。


しかし、3ルンゼが遠い。
下部のル-トは下降時にアタリをつけられた。
あとはぐるぐる回る地球のご機嫌だ。地球にやさしい生活でご機嫌を取りましょう。

ということで、一ノ倉出合からの「環境を守る乗合ワゴン(ガソリン車)」に一瞥。
「環境に配慮するなら電気自動車とかエコカ-にすべきじゃねぇ-の」とアンチテ-ゼ。
山ヤたるもの自分の足で歩くのだ。

帰りしな車の中から見る上越方面は黄金色の夕日に山並みのシルエットが一際くっきりと映った。

sak