acc-j茨城 山岳会日記

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奥多摩・日の出山~三頭山

2020年03月20日 23時24分53秒 | 山行速報(登山・ハイキング)

2020/3/3 日の出山~三頭山


年度末。
年間休日を消化すべく、三連休を取得することになった。
北岳を計画してみたが、二日目以降の天候が思わしくない。
これでは眺めも何もなく「北岳に来ただけ」となりかねない。

山は好天が吉。
頭に浮かんだのは、奥多摩の山景を繋ぐプラン。
日帰りとしては「長め」のトレイルだけど、好天の「眺め」に期待を込めて。


午前四時、青梅市柚木町の無料駐車場を出発。
ほど近いセブンイレブンの明かりが眩しい。
近くには記念館やドラックストアなどもある、ありふれた市街地。

こういう場所は意外と登山道の入り口が判りにくい。
初見でヘッデン頼りだったなら右往左往しただろう。
闇夜に住宅地を徘徊し、そのうえ近所の飼い犬などに吼えられたなら、不審者扱いも免れまい。

通報。職質の上、連行。そして山行中止。

そんなスト-リ-が思い浮かぶ。
だが、ここでお巡りさんの世話になるわけにはいかない。
その事態だけは忌避すべく、事前偵察の甲斐もあり無事山道に入る。

しばらく行くと三室山。
開けた山頂から闇に沈んだ街に灯景が瞬く。
遠くで始発列車が線路を鳴らす。

そして、日の出山。
地平線が焼け、空は水面のよう。
遠く筑波山。爪楊枝ほどに見える東京スカイツリ-。
その傍らからの朝暉。
闇が次第に光で癒されていく。

日の出山から見る、日の出。
これがこの山旅の始まりだ。

しかし、ここで大きなミスを犯していたことを知るのは翌日のこと。
緊急時に光って知らせる黄色いアンテナを持つ”彼”がここにいたならば、あのような事態にはならなかったのだが。
すべては、あとの祭りだ。

そんなことは露ほども思わず先を急ぐ。
向かう御岳山にはいくつもの宿房が見える。
参道では様々な信仰の石碑が連なり、さながら「講」の総本山。

早朝故、誰ひとりいない境内でおいぬ様(狼)にご挨拶。
本坪鈴に隠れハ-トを見つけたり、序盤は「ゆるり山旅」の様相。

ここからは奥多摩らしい山々を繋いでいく。
奥ノ院、鍋割山を経て、大岳山。
道中、陽光に輝く東京湾を見る。
同じ東京とはいえ、奥多摩から東京湾が望めるとは思わなかった。

大岳山からは富士山が大きい。
この眺めは人々を魅了する。
木々の枝葉の膨らみに春を予感する。

鋸山を越え御前山への道中。
「山火事注意」の看板が落ち葉に埋もれていた。
見やすく設置し直そうと拾い上げるが、何となく違和感。

それは、「山火事注意」の看板にもかかわらず、彼が「懸垂下降」している事。
よく見ると、「下山時は滑落事故に注意しましょう」ともある。
なるほど。
しかしながら、懸垂下降とは少し脅かし過ぎなのではないか?

ちなみに、彼は東京消防庁のキャラクタ-「キュ-タくん」。
緊急時には黄色のアンテナが光り危険を察知する能力を持っているらしい。
もう少し前に出会えたならと、山行記録をしたためている今思う。

御前山は意外と遠い。
目前の峰を越えると、その先にまたも峰。
眺望も少ないので淡々と行く。
むしろトレ-ニングには丁度いい。

惣岳山から小河内峠へ向かう途中はヤセ尾根の様相。
反面、小河内峠をすぎると穏やかな尾根が続く。
車やバイクの走行音が聞こえてくると奥多摩周遊道路は近い。

月夜見山は微かに期待していた場所のひとつだった。
月見するに良い穏やかかつ眺望の利く頂を想像していたが、むしろ正反対。
杉が林立し、眺望はない。
その名の由来は知る由もないが、植樹事業によって姿を変えてしまったのかもしれない。
しかし少し目線を変えてみれば、俊立する杉の樹幹から溢れる陽光は美しかった。

山道が車道を縫うように進み、風張峠。
車道と離れ、行き交うエンジン音から解放されると、鞘口峠。
ここから三頭山への登りは、山行のクライマックスでもある。

三頭山は東峰、中央峰、西峰の3つの頂から成る山梨県との国境。
東峰には展望デッキがあり、今日歩いてきた山並みを一望できる。
そしてその先に霞む街並み。

下山はエメラルドグリ-ン色の奥多摩湖面を目指して三頭橋へ。
バス停で1時間半ほど気長に待ち、乗客のない奥多摩駅行きに乗る。
結局、最後まで貸し切り運行となった。

奥多摩駅からは電車で二俣尾駅まで。
公共交通機関を使う山登りはいつ以来だっただろうか。
電車に揺られ、ウトウトしながら線路の継目を通過するジョイント音が心地いい。
今朝、遠くに聞いたあの音だ。
もうすでに車窓は暗闇に包まれていた。

後日談。

どうやら日の出山山頂で「捜索ヘリサ-ビスココヘリ」受信機の入ったポ-チを置き去りにしてしまったらしい。
翌日、運営会社からのメ-ルで事態が発覚した。

事の次第は、こうだ。

私の後に登頂した方が拾得し警察に届出。

ココヘリ捜索専用の電話番号をポ-チに記しておいたことで、警察から運営会社へと連絡が入る。

受信機に記されたIDから私にメ-ルで告知。

ともかく、警察へ届けていただいた方には感謝感謝だ。
もしポ-チに遭難時の連絡先を記していなかったら、何処で失くしたのかさえ分からず迷宮入りするところだった。
山行始めに、お巡りさんの世話になるわけにはいかないと誓ったものの、ここは素直にお世話になるほかあるまい。

数日後、所轄警察署の窓口に伺った時のこと。

遺失届を記入し無事手続きを終えたあと、お巡りさんから辛口コメント。
「これ(ココヘリ)を落としてしまっては、遭難もできないですねぇ」

もちろん、私は真顔でこう答えた。
「そうなんです」

 

sak



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