2023/10/16 尾白川・鞍掛沢~乗越沢~日向山
初めての沢登り
楽しいと思ってくれるほど嬉しいことはない
あわよくば、また行ってみたい! とか
奥只見や奥利根にも行ってみたい! なんて局地的に興味を抱いてくれたら、殊の外嬉しいに違いない
そんな都合のいい奇跡はともかく、何事にも順序というものがあるのが世の理
そこで「はじめての沢登り」というキーワードでWEB検索してみる
見つけた記事にはこう書いてあった
「当たり前のようですが、はじめての沢登りは重要です。ここで失敗すると沢登りにマイナスのイメージを持たれてしまい、2度目のそれはないかもしれません」
「2度目はない」
そう心に刻む、山行前
仕事明けそのままに相方を拾って車を走らせる
今回の相方は初顔合わせのazmさん
「沢登りをやってみたいです」
という言葉に、「これは!もしかして」と胸膨らましながらも冷静を装い、「じゃあ、今度行こうか」と実現した山行だった
前泊の地は「道の駅はくしゅう」
日の出に合わせて矢立石登山口まで
朝陽に森が染まる中、尾白川林道を行く
トンネルをいくつか潜り、径が途切れるところから尾白川へと下る
噂に違わぬ急な下り
足元も悪いので慎重に行く
.
そして尾白川
前日の雨による増水を懸念していたが、遡行には問題なさそうだった
最初に出てくるのが、大きな釜を持った3×4m滝
暑い盛りなら泳ぐのも楽しいだろうが、肌寒い朝には躊躇われ右岸巻き
しばらく遡行すると夫婦滝がなかなかの迫力で迎えてくれる
ここは右岸巻きか滝左のスラブを行くことになる
「ロープ出して行ってみる?」
azmさんに問いかけると「やってみたいです」との応え
傾斜は寝ているものの、足元の滑りもあって慎重にリードする
azmさんもこの「滑り」に苦戦しながらクリアする
登山経験は持ち合わせた彼も、この滑りには閉口気味
表情も曇りがちだった
マズい、極めてマズい
心の裡でそうつぶやく
途中、気分を変えて沢の歩き方や遡行図の見方などレクチャーしながら鞍掛沢に入る
鞍掛沢に入ると明るく開けた渓相と花崗岩のナメ床が美しい
加えて、紅葉の始まりに癒されながら沢を行く
滝はほどほどに出てくるが、滝脇のスラブを登ったり小さく巻いたりして進む
2条5×6滝は左岸巻きもアリだが、2条ある流れの中央突破を試みる
すべすべのナメ滝を細かな岩の弱点を拾っていく
抜け口手前の数歩はフリクション頼みで抜ける
滝上で肩がらみ
azmさんも苦戦しながらなんとか登りきる
「ファイト!一発!」
誰しもそう叫びたくなるような場面こそ記憶に残る
楽しめたかどうかではない
「記憶に残る」
硬派な我々が目指すべきは、そこだ!
そう、そこしかない!
ハング滝6mは手前の滝とともに左岸巻き
右に出合う10m滝
地形図で見ると、これが乗越沢らしく、左岸から巻き上る
この先は水量も格段に少なくなって、滝を登ったり軽く巻いたり、困難はない
しかし、アザミが多いので手元には注意が必要だ
細い流れを淡々と行くと前方にいかにも悪そうなルンゼ
ここは踏み跡に従って右岸の尾根に乗り上げる
小笹の径を行けば鞍掛山のコルに至る
コルで装備を解いて靴を履き替える
前日の低気圧通過、そして冬型の気圧配置で風もやや強く冷たい
ここからは雨具を着こむ
駒岩から日向山へ
下り基調だが、足元が悪い場所もあり慎重に進む
そして日向山
「天空のビーチ」ともいわれる景観と眺望で人気の山
平日でもここを訪れる方は多いみたい
寄せる山波が白砂に沁みる
青い空がどこまでも続く
そして影
まるでファンタジー
この歳になってファンタジーでもなかろうよ、と自嘲もするが自分の気持ちには素直になりたい
美しい記憶を胸に、山を下ればそれぞれの明日が待っている
さて、初めての沢登り
楽しんでいただけましたか?
困難も感動も、挫折も歓喜も
いろんなことが起きるからこそオモシロい
手軽な楽しさより、
労してやり遂げた記憶の方が「本物」
そう、思いませんか?
そういえば、山行前に読んだWEB記事はこう結んであった
「大切なのは、あなたの楽しみ方を知ってもらうだけではなく、その人ならではの楽しみを一緒に見つけてあげること。それは、あなた自身の「山」が広がるチャンスでもあります」
さて、次はどこへ行こうか
「本物」を探しに
硬派な我々が目指すべきは、そこだ!
そうに違いない
否、そう思いたい
sak
↓ 動画も