ちょっと間違えましたね。「自分に大甘な気持ち」と昨日翻訳したのは。これは「自分を大事にすること」と訂正いたします。肯定的な意味でフロムはこの言葉を使ったいますから。
p53の第三パラグラフ。
自分を大事にすること
自分を大事にする気持ちを様々な対象にむけることに対しては、異論は起こらないのに、他者を大事にすることは有徳なことだけれども、自分を大事にすることは罪深いことだ、とする信念があります。この考え方は、西洋思想をはるかに遡ります。カルヴァンは、自分を大事にすることは「ペスト』だと言いました。フロイトは、自分を大事にすることを精神病理の言葉で言いましたが、フロイトの価値判断はカルヴァンと同じです。フロイトにとっては、自分を大事にすることは、ナルシズム、すなわち、リビドーを自分に向けることとと同じことです。ナルシズムは、人間の発達の最初の段階でして、後の段階にある人が、ナルシズムの段階に戻れば、それは人を大事にできないことです。極端な場合ですと、狂気です。フロイトは、大事にすることは、リビドーが現れることだと考えますし、リビドーは他者に向かうのか、すなわち、人を大事にするのか、それとも、自分に向かうのか、すなわち、自分を大事にするのか、のいずれかだと考えます。人を大事にすることと自分を大事にすることは、お互いに排他的であるというのは、自分を大事にすればするほど、人を大事にすることはない、という意味です。自分を大事にすることが罪ならば、私がないことが有徳なことなのです。
フロイトやカルヴァンは、自分を大事にすることは自己中心と考えていたのですね、フロムの考えは、彼らとはことなるようですね。