エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

ルター誕生

2015-08-29 11:45:45 | アイデンティティの根源

 

 自由自在に生きたいものですね。

 Young Man Luther 『青年ルター』p.221の 下から7行目途中から。

 

 

 

 

 

ルターがロマ書講義の準備ノートで言ってます。そこでルターは大学教授として円熟してきましたし、独断者であることもハッキリしてきました。「内省がよくよくできれば、真に謙遜になれます。真に謙遜になれば、真実が分かります。真実を知れば、スピリチュアルに自ずからなります」。同時にルターが、この激しい怒りの傷を、(怒りの)神の性質を変えることによって、上手く癒すことができます。すなわち、この世の父親のように気分屋で、幼い子どもにとっては理解できない存在ではなくて、神は、ira misericordiae ラテン語で「激しく怒るけど、気前が良い」(本当は気前が良い、激しい怒り)、という性質を手に入れたんですね。このように考えたから、ルターは、神が「父なる神」になることを認めることができましたし、神が私どもを救ってくださることも分かったんですね。

 

 

 

 

 

 

 怒り、それも、激しい怒り、と言ったら、嫌なもの、耐えられなたもの、我慢ならないもの…とルターはずっと思ってたでしょうね。父親はその種の激しい怒りを、来る日も来る日も、朝昼版に関わらず、ルターにぶつけていたんですからね。

 神の激しい怒りも、「うちのおやじと同じだろぉ」と始めは感じてたでしょうね。ところが、思ってもないことだったでしょうけれども、「その激しい怒りが、気前の良さ、温かい気持ちと結びついてたんだぁ」と気付きが与えられた。大声で泣いたでしょうね。もちろん、嬉し泣きですよ。それが、ルター誕生の瞬間であり、ルターが神に出会った瞬間でしたね。

 

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仲間はずれにするのも不幸、仲間はずれにできないのも不幸

2015-08-29 10:17:34 | エリクソンの発達臨床心理

 

 いろんな人との仲良くする。それに異論をはさむ人って少ないんじゃないかしらね。でも、それは「ただで出来るもんじゃぁ、ない」んですね。アイソレーション 「異性や異世代や異なる立場の人とやり取りせず、コントロールしようとしたり、なるくべ関わらずにおこう、とすること」よりも、intimacy インティマシー 「異性や異世代や異なる立場の人たちと、やり取りのある関係ができること」の方を、選択するという主体的な心構えと行動が必要だからです。

 The life cycle completed 『人生の巡り合わせ、完成版』、p71の第2パラグラフから。

 

 

 

 

 

 若者が、intimacy インティマシー 「異性や異世代や異なる立場の人たちと、やり取りのある関係ができる」ようになったり、人と自分を大事にする気持ち、になったりすることを邪魔するお邪魔虫、それが、exclusivity エクスクラッシィヴィティ 「仲間はずれにしたい気持ち」なんですね。このexclusivity エクスクラッシィヴィティ 「仲間はずれにしたい気持ち」は、形の上から言っても、働きの上から言っても、いい大人になってから出てくる  rejectivity リジェクティヴィティ 「大事にする相手の仲間から、仲間はずれにしたい、底意地の悪い気持ち」と深~い関係にあるのも当然です。また、exclusivity エクスクラッシィヴィティ 「仲間はずれにしたい気持ち」の中には、intimacy インティマシー 「異性や異世代や異なる立場の人たちと、やり取りのある関係ができること」になくてはならないものであるのは、rejectivity リジェクティヴィティ 「大事にする相手の仲間から、仲間はずれにしたい気持ち」が、generativity 「次世代の人や事を、自分が損しても、育むこと」になくてはならないのと、同じです。でもね、exclusivity エクスクラッシィヴィティ 「仲間はずれにしたい気持ち」も、rejectivity リジェクティヴィティ 「大事にする相手の仲間から、仲間はずれにしたい、底意地の悪い気持ち」も、非常に破壊的ですし、ましてや、自己破壊的です。というにも、1人も仲間はずれにできず、1人も大事にする相手の仲間から、仲間はずれにできないでいると、過剰に「自分はダメだぁ」と思う結果になるからですね(あるいは、原因になる場合もあります)。それは、1人も仲間はずれにできず、1人も大事にする仲間から仲間はずれにしできなければ、自分自身を許せなくなってしまうのと同じです。

 

 

 

 

 仲間はずれにしたり、大事にしない相手がいることは、不幸です。でもね、仲間はずれにできなかったり、大事にしない相手にできなかったりするのも、別の意味で不幸ですね。いずれも、自己コントロールしていないからですね。無意識の暴力が働いている点では、2つとも全く同じです。前者は、無意識の暴力が他の人に向いている場合です、後者は、無意識の暴力が自分自身に向かっている状態です。

 大事なのは、みんなを仲間にしたい、みんなを大事にする仲間にしたい、と意識でコントロールすることです。たとえそれが完全にも実現しないことであってもね。

 

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昼夜逆転を治そうとしちゃ、ダメだ!! 改訂版

2015-08-29 09:28:09 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
世俗生活=宗教の本質
  制度や法律は、それを創り出した精神が必ずあります。しかし、制度や法律が運用されだすと、運用そのものに自動操縦、オートパイロットの性格がありますから、も...
 

 夜更かしして、朝起きられない。いつまでもゲームをしていて、昼夜逆転している。そんな子どもを前にしたら、どうします? 「何とか生活リズムを整えてもらおう」としませんか? あなたが親や教員や児童施設の職員でしたら、その子が「普通の生活をする方が良いだろう」と思いますでしょ。「それが一番やってはいけないことだ」、「精神医学的には禁忌だ」と言われたとしたら、「そんな馬鹿なぁ!」と言われるかもしれませんね。ですが、「昼夜逆転を治そうとしちゃ、ダメ!

 ビックリしました?

 でも驚かそうとしているんじゃぁないんですね。精神科医でも、分かってないことに、私の方が驚かされているんですね。日本の精神医学は、非常に遅れています。立派な精神科医(たとえば、王子クリニックの石崎朝代先生や京大の山中康裕先生)も具体的に知ってますから、全て精神科医が遅れていると言うよりも、日本の精神科医の平均値が、あまりにも低すぎる、ということですね。

 何のことかと言いますとね、それは愛着障害ですね。愛着障害は、人間の発達の最初で躓いている子どもですし、大人です。その人が、5才でも、15才でも、35才でも、65才(愛着障害が治療されずに、65才になるのは、難しいでしょうけれど、つまりそれまでに死んじゃうケースが多い)でも、心は赤ちゃんだ、ということです。さまざまな困難が予想されます。

 愛着障害の子ども(大人も含むが、以下省略します)は、赤ちゃんの時に母親との関係で身に着けるべき愛着がありません。エリクソンの言葉で言えば、根源的信頼感がない訳ですね。むしろ、根源的不信感の方に大きく傾いている状態です。愛着や信頼がないと子どもはどうなるのか? それはいろんなケースがありますが、日課やルールや片付けが出来ません。時間でも、空間でも、人間関係でも、秩序立てることができないんですね。なぜなら、最も根源的な秩序である愛着関係、根源的信頼感がないからです。

 ですから、時間的秩序、生活習慣、日課の面から言えば、愛着障害の子どもは、時間通りに何かをすることができません。学校生活ばかりではなく、施設での生活など、集団生活には必ずといっていいほどある、日課はできません。「起床時間は6時」、「1時間目は算数」、などと言われても、出来ません。大人が見張っている場合はやる場合がありますけれども、見てなければ、自分からはやりません。

 また、人間関係的秩序である、ルールが守れません。校則、施設の決まり、…。それも守れません。

 空間的秩序、片付けもできません。机の中はゴチャゴチャ。ランドセルの中もごちゃごちゃ。ロッカーの中もごちゃごちゃ…。

 これじゃぁ、周りの大人も困りますから、愛着障害の子どもを前にすると、「時間を守りなさい」、「ルールなんだから、守りなさい」、「片付けなさい」…と言いたくなりませんか? でもそれを言ってはいけないんですね。「正しいこと(日課やルールなど)を愛着障害の子どもに押し付けることは、禁忌」だからです。これは、日本の多くの精神科医でも知らないんですね。日本の精神科医は何やってんですかね。

 「アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)は、『正しいことを押し付けるやり方は、愛着障害には、禁忌 contraindicated である、との臨床的な合意が強力にできてます』との立場を明確に表明しています。」(『愛着セラピーの手引き The attachment therapy companion』, New York : Norton,2012, p.155)

 大事なのは、根源的信頼感・愛着を回復する、陽気で楽しいセラピーです

 

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