乾燥ワカメと最深欲求
最深欲求2013-08-13 01:27:29 | エリクソンの発達臨床心理 ...
今晩は、ユングの第10夜。とりあえずの最終回。
ユング著作第8巻(Collected Works of C.G. Jung, Volume 8 : The Structure and Dynamics of Psyche)『魂の形と魂の爆発的な力』pp.159-234、On the nature of the Psyche「魂の性質について」から。ただし今回も、東京女子大学の林道義さんの翻訳(紀伊國屋書店)も参照しています。
はじめは、日本人の集団心理の危険性について教えてくれているところです。
「もし一人の意識が、集団心理(世間)の考えや意見を好み、同調すると、集団の無意識は抑圧されることになります。集団の無意識が抑圧されますとね、典型的な結果が生じてきます。抑圧された集団の無意識が持つエネルギーがある程度まで高まって、抑圧するエネルギーまで高まると、抑圧する効果もエネルギーの増加に伴って、高まります。集団の無意識を抑圧すれば抑圧するほど、集団の無意識を抑圧する心構えが狂信的になっちゃって、逆転が生まれ、抑圧しない心構えが逆に生じます。集団心理が強まれば強まるほど、個人の働きが失われてしまいます。個人の自我は、いわば、集団心理(世間)の傾向や好みに吸収されちゃって、その結果、太鼓持ちの同調人間ばかりになって、「世間で良しとされていること」(訳注:「八紘一宇」「会社のためだから」「お前も組織の人間なんだから」など)の餌食になっちゃいます」(前掲書,p.219)
ユングは日本人の行動様式を知って、このように言ったのではないのかな? と思うほど、見事に日本人の思想と行動を言い表していますよね。集団の無意識を最初は抑圧しているのに、いつの間にか、その抑圧が取れて、集団の無意識の圧倒的な力が、暴力的に、個人の運命を弄ぶ形で、発揮されてしまいます。日本軍の暴走然り(日本人だけでも、300万以上が、3年8か月の間に殺された)、御巣鷹山の日航ジャンボが然り(520人が殺された)、フクシマが然り(何人殺されることになるのか、いまだ分からない)。
じゃあ、個人の運命を、暴力的に弄ぶ無意識の暴力から、どうやったら、私どもが救われるのか? それについて明確にユングが述べているところは、ハッキリしません。すくなくとも、そのヒントは語られているように思います。
「元型はいつでも≪いまここ≫にありますし、常に働いてます。元型はそれが存在することを信じてほしいのではなくて、その元型が何を意味しているのか? を直感して貰いたいし、元型に対して賢明な畏れを感じてもらいたいんですね。すなわち、δεισιδαιμονια デイスダイモニア 「神を畏れる気持ち」を忘れないことです。これは元型の大切さを見失わないで、ということです」
これはある意味、根源的信頼感を豊かにしていくことですね。しかも、その時に、個人や組織や時代を超えるもの、アプリオリにあるもの、人間のコントロールが及ばないものを認める心構え + 根源的信頼感の豊かさが、このユングの言わんとするところと近い、と私は見ますね。